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幸せになるために私ができること  作者: gacchi(がっち)


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79.前国王夫妻を招待した夜会

アンペール国の前国王夫妻を招待した夜会の前日、

到着時刻になっても旅団は見えず、遅れているようだった。


夕方になって連絡のために単騎で到着した騎士によると、

前王妃の体調が万全ではないために休憩が多く、

予定よりも進行が遅れているらしい。


前国王から夜会の前にレオンと会談したいという申し出があったが、

その時間も取ることはできず、当日になってしまった。


「夜会に間に合うのかしら」


「夜会には間に合ったとしても、準備はどうだろうな。

 始まってからの参加になるかもしれない。

 こちらとしてはそのために開始を遅らせるのは難しい」


「それはそうよね」


王宮での夜会は地方からの貴族も来ている。

護衛などの配置もあるし、開始を遅らせることは難しい。


私たちも準備する時間になり、それ以上待つことはできない。


ドレスに着替え、もうすぐ準備が終わる頃になって、

ようやく二人が到着したことが知らされる。


これから用意した客室にはいって準備をするから、

大広間にくるのは開始から一時間後くらいかな。


「やっぱり間に合わなかったわね」


「仕方ない。そのうち来るだろう」


準備が終わり、レオンとお兄様と一緒に大広間に向かう。


アルベール公爵家当主としてお兄様が先に入場し、

その後、レオンと私が入場する。


大勢の貴族で騒がしいのはいつも通りだけど、

ペルラン伯爵家のことがあるからか、こそこそと話をしている者も見える。


レオンが開始の宣言をし、二人で貴族たちの挨拶を受ける。

そろそろ挨拶も終わりに近づいた時、前国王夫妻の入場が告げられた。


昔、王太子時代に出席したことはあるらしいけれど、

国王時代には来ていない。


他国の元国王が出席するのがめずらしいからか、

注目を集めていた。


「長旅、大変だっただろう。

 二人とも夜会を楽しんでほしい」


「ああ、招待ありがとう。楽しませてもらうよ」


「体調のほうは?」


「ご心配なく、問題ありませんわ」


二人とも前回アンペール国で会った時よりもやつれて見える。

高齢だからなのか、ジョアン公爵家の問題で疲れているからなのか。


じっと見ていたことに気がつかれたのか、前王妃と目があう。


「……前に会った時は驚いてしまって。

 きちんと顔を見ることもできなかったのよ。

 こうして見るとメリザンドに似ているのねぇ」


「ああ、似ているな」


「……そうなのですか」


懐かしそうに見られているけれど、何て言っていいのかわからない。


母親ではあるけれど、たまにしか会わなかったし、窓もない室内だった。

もう顔はおぼろげで思い出そうとしても難しい。


そういえば、レオンとお兄様に最初に会った頃、

私の顔はペルラン伯爵には似ていないと言っていた。

王家の色だし、母親似なのかもしれない。


「それでは、ゆっくり夜会を楽しんでくれ」


「待ってくれ。話をさせてもらえないか?

 レオンハルト国王と」


「俺とだけか?」


「ああ。少しの時間でかまわない」


私は同席しないほうがいいということなのかな。

レオンを見ると、うなずいている。


「では、私は夜会の会場にいるわね」


「ああ。ガイオ、ジニー、ルシールのそばにいるように」


「「はっ」」


ガイオは夜会に出席したくなさそうだったけれど、

髪色を変え、眼鏡をかけ、変装してそばについている。


今回、前国王夫妻が来ていることもあって、

何か突発的なことがあった時にガイオがいないと厳しいからだ。


その代わり、もし二ヴェール侯爵家が何か言ってきたときには、

全力で守ることを約束している。


「では、少し席を外す」


「ええ」


レオンとお兄様が前国王夫妻を連れて大広間から出ていく。

王族の控室に行って話してくるのだろう。


何を言われるのか、だいたい想像通りだと思うけれど。

素直に引き下がってくれるといいな。


「ルシール様。お飲み物を用意いたしましょうか?」


「ええ、お願いね」


同じようにそばで護衛しているジュリーに飲み物を頼む。

ずっと挨拶を受けていたから喉が渇いてしまった。


受け取った果実水は冷たくておいしい。

王族席で休憩をしている間は貴族たちも話しかけてこないはず。


大広間を見渡すと、踊っている者たちが目に入る。

今回はレオンと踊っている時間はあるかしら。


「姫さん、踊りたいんだろう」


「そうね。時間があれば、だけど。

 今日は難しいかもしれないわ」


「陛下にお願いしておけば、必死で戻ってきたんじゃないのか?」


「うーん……早く戻ってきたいとは思っているはずよ」


前国王夫妻との話し合いなんて面白いわけがない。

さっさと切り上げて戻ってきたいと思っているはず。


お兄様も一緒に行ったのは、レオンを助けるためだろうし、

早く戻ってきてくれるといいな。


飲み終えた杯をジュリーに返した時、

後ろにいたガイオが「うわ、やばい」と小声でつぶやいた。


「どうかした?」


「今、こっち見てた兄貴と目が合った。

 あれは気がついたと思う……こっち来るかも」


「え?二ヴェール侯爵?」


けっこう離れた場所からこちらに向かってくる男性が見えた。

あんなに遠い場所にいたのに目があったの?


「間違いなく気がついたと思う。

 姫さん、置いていくわけにはいかないから、頼んだ」


「……わかったわ。私の後ろにいて」


「了解……」


ガイオが気配を消すのがわかった。

それでも二ヴェール侯爵はこちらにまっすぐに向かってくる。


目の前まで来た二ヴェール侯爵は私に臣下の礼をした。


「二ヴェール侯爵、何か?」


「おくつろぎの最中の妃殿下には申し訳ありませんが、

 後ろにいる弟と話させてもらえませんか?」


「でもね、彼は護衛中なの。わかる?

 私を守るためにここにいるの。邪魔しないでくれる?」


「この場でかまいません。話をさせてください」


一歩も引かない二ヴェール侯爵にどうするか迷う。

これ以上大きな声を出せば目立ってしまう。


この会場には二ヴェール侯爵だけでなく、

夫人や、両親もいるかもしれない。


ガイオを見上げると、小さくため息をついた。


「ここで少しだけなら」


「そう……二ヴェール侯爵、短時間で終わらせてね」


「ありがとうございます」





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