77.ペルラン公爵の処罰
「顔をあげていい。ユリウス、ユウリ、ご苦労だった」
「「はっ」」
「それで、報告してもらおうか。審議の内容を」
「はい」
お兄様ではなく、ユウリが審議の報告をする。
レオンが質問すれば、その答えはお兄様がしている。
アンペール国はやはりペルラン公爵に激しい怒りを持っていた。
犯罪者扱いしようとしたが、それはお兄様が止めた。
一応はこの国の王位継承権を持つ公爵。
そんな扱いをされれば、この国の扱いも軽いものにされる。
審議では隠すことなく隣国の元第三王女との不貞を告白した。
それについては言い争うことなく、ただ元第三王女の不遇な状況を話した。
元第三王女が不貞行為をしたのは夫であるジョアン公爵のせいだと。
そしてジョアン公爵家の嫡子とマリルー様については、
王家の血筋ではないと証言した、と。
やはり審議はペルラン公爵の不貞行為よりも、
ジョアン公爵家の身分詐称の方が問題だとされた。
お兄様が持って行った魔術具で血縁検査を行い、
ジョアン公爵家の子ども二人についても不貞の子だと認められた。
これだけを聞けば、ペルラン公爵の罪は軽かったように聞こえる。
だが、そうではないことを知っている。
「国王と第二王子との話し合いをした結果、
ペルラン公爵への厳罰を求めると言われました。
ただの不貞の処罰ではありません。
国家間の同盟を揺るがす悪行であったと判断いたします」
「なっ!たかが不貞だろう!」
軽い処罰ですむと油断していたペルラン公爵が叫ぶ。
それを無視して、レオンがお兄様から書類を受け取る。
先ほど見せてもらったけれど、アンペールからの厳罰を求む声だった。
「マルク・ペルラン。処罰内容を申し付ける。
ペルラン公爵家は伯爵家に降爵。
貴族順位は二十二位まで下げる」
「は……?」
「領地は三分の二を没収する。
そして、魔力の器を壊すか、子を作れなくするか、どちらかを選べ」
「なっ……なぜ……それは大罪ではないですか。
どうして他国の公爵夫人と不貞したくらいで……」
まだわかっていないのか、ペルラン公爵が声を張り上げた。
「ただの不貞ではない。相手は元第三王女。しかも国王の同腹の妹。
王族の血を汚しただけでなく、王族の血を引く者を勝手に国外に出した。
報告せず、そのまま他国の妃として差し出そうとしている。
アンペール国から見たら、許されることではない」
「で、ですが!」
「お前がこの国の王位継承権を持つ者でなければ、
間違いなく処刑するように求められていただろう!」
「……そんな」
「今回、向こうからは厳罰を求められている。
処刑せず、貴族でいられるだけありがたいと思え」
本当に優しい処罰だと思う。
おそらくジョアン公爵はもっと重い刑になる。
「……陛下、たしかに悪いことはしたのでしょう。
ですが、結果としてルシールが生まれ、この国にとってはいいことばかりです!
そこまで重い刑にすることはないでしょう!
私はルシールの父親なのですよ!
私が不貞しなかったら、ルシールは生まれなかった!」
それを聞いたレオンとお兄様は大きなため息をついた。
救われるかもしれないと思ったのか、
頬がゆるみかけたペルラン公爵にレオンが冷たく言い放つ。
「だからだ。お前がルシールの父でなかったら、とっくの昔に処刑していた」
「は?」
「処刑するような重罪人の子を正妃にすることはできない。
これはルシールを妃にするのに問題ない範囲で、最大限の処罰にしたんだ。
お前がルシールの父でなかったら、こんな遠慮はしない」
「……私が何をしたというのです」
「わかっていないから、元第三王女に手を出したのだろうな。
それで、どちらを選ぶんだ?」
「どちら……」
魔力の器を壊せば、魔力量は激減する。
もう二度とまともな魔術は使えなくなる。
子を作れなくされれば、ペルラン公爵の夢である、
龍人の血を持つ子は作れなくなる。
あれ……そういえば、マノン様の子は産まれたはず。
どうしているんだろう。
「選べなければ、両方の処罰を課す。それでいいのだな?」
「待ってください……そんな……。
…………子を作れなくしてください」
「よし、わかった。ゴーシュ、薬を」
「はい」
ゴーシュがペルラン公爵の前に薬の入った杯を持っていく。
これは魔術薬だ。ペルラン公爵の身体に合わせて処方されている。
「飲み干せ。効果があったのかどうか、見ればわかる」
「……はい」
ペルラン公爵は泣きそうな顔をしていたが、
覚悟を決めたのかぐっと飲みほした。
「よし、では、処罰内容を詳しく書いたものは後で届ける。
領地に関してはこちらが手配する。こいつを屋敷に送り届けろ」
「はっ」
子を作れなくされたのが衝撃だったのか、ペルラン公爵が崩れ落ちた。
それを騎士たちが引きずるように運んでいく。
このまま屋敷まで連れて行くのだろう。
レオンとお兄様、ユウリとゴーシュだけになったのを見計らって、
控室から外に出た。
「聞こえていたか?」
「ええ、全部。ねぇ、マノン様のお子って産まれたの?」
「届け出はまだだ。もうとっくに生まれておかしくないが、
龍人の血を持っているとなると出産が少し遅れる」
「そうなの?じゃあ、マノン様の子はそうなる可能性が高いのね」
「おそらくな。それもあって、子を作れないほうを選んだんだろう。
龍人の血を持つ子が生まれてくる確信があったんだな」
「そっか……」




