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幸せになるために私ができること  作者: gacchi(がっち)


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69.マルティンの覚悟

「あの……お詫びというわけではないのですが。

 父の悪事について、証拠を持ち出してきました。

 これを受け取っていただけますか」


「証拠?」


差し出されたのは、元第三王女とやり取りしていた手紙。

そして、香の売り上げに関する帳簿だった。


「手紙はジョアン公爵夫人との不貞の証拠になると思います。

 帳簿のほうは、違法薬物の取引先や売り上げなどが記載されています。

 ただ……製造した量と売った量が違うので、譲渡した先はわからないのですが」


「いや、十分だ。この証拠は重要なものだ。

 そして、ペルラン公爵家を出たいというマルティンの気持ちもわかった。

 貴族籍を抜けた後でも騎士団に入れるように手配しておく」


「ありがとうございます!!」


それは初めて見たマルティン様の笑顔だった。

ずっと無表情だったのは、ペルラン公爵家を憎んでいたのかもしれない。


「それとは別件なんだが、質問してもいいか?」


「はい。なんでも聞いてください」


「王女と公爵令嬢とはどうなったのかわかるか?」


「……あの後、帰国しようとした二人を引き留めたのは父です。

 このまま帰っても何一つ成果がなく、わざわざ留学した意味がないと。

 せめて魔術を使えるようになってから帰れば、

 嫁ぎ先が選べるだろうと説得していました」


「それはそうかもしれないが」


アンペール国では魔術を使える者が少ない。

だから、使えるようになったら価値が高くなると言いたいのか。


「おそらく、不貞の件で責められたくないのでしょう。

 だから、王族であるカリーヌ様とジョアン公爵の娘のマリルー様に魔術を教え、

 恩を売っておきたいのだと思います」


「たしかに他国の者に魔術を教える者はいないだろうが、

 あの魔力量では覚えられる魔術は大したものではないだろう?」


「それでも、アンペール国では魔術師になれるだけの技術です。

 上級魔術師には程遠いため、誰かに教えることはできないでしょうけど」


あの二人の魔力量なら、初級の魔術を覚えきれるかどうか。

留学してきたのも一年未満だし、どれだけ身につけられたかわからない。


それをアンペール国に持ち帰ったとしても、

そもそも魔術を使えるほどの魔力量を持つ者が少ないし、

あの二人では魔力暴走を止めることができない。

国として評価するほどのものではない。


前線で戦う兵士だったとしたら、魔術を覚えても損ではないけれど、

貴族夫人になるなら使うことはない。

多少、箔はつくかもしれないけれど、そのくらいだ。


結果として、あまり役には立たないのではないかと思う。


「どっちだとしても、役に立ちそうにはないな」


「そうですが、陛下の妃になれなければ嫁ぎ先がないそうです。

 魔術を使えるようになれば、嫁ぎ先が見つかるかもしれないと」


「そういうこともあるのか」


「あとは、一緒にいる時間が長くなれば、

 私の妻になれるかもしれないと期待していたようですが、

 父が魔力量が少ないものを公爵家にいれるわけがないです」


「なるほどな……二人はおとなしく帰りそうか?」


「ええ、帰る予定です。

 どちらにも求婚されましたが、断りましたので」


「それは帰るしかないだろうな」


少し可哀想だけれど、マルティン様は貴族籍から抜けるつもりだ。

あの二人だって、さすがに平民の妻になるつもりはないだろうし、

帰国して嫁げる家を探してもらった方が良いはず。


「ですが、かなり困らせられましたからね。

 二人をただで帰すことはしません」


「ん?どういうことだ?」


「帰国する直前に手紙を渡す予定です。

 大事なことが書いてあるから、帰ったら読んでくれと。

 内容は、ルシール様の父が誰かという話です。

 問題があるようならやめますが」


「……いや、かまわないよ。

 そろそろきちんと話し合おうと思っていたところだ。

 むしろお願いしたいくらいだな」


「わかりました。では、実行いたします」


ジョアン公爵が本当のことを言っていなかったから、

私の本当の父が誰なのか、まだアンペール国には知られていない。


ただ、このままではペルラン公爵を罰することもできない。


「関わりのないマルティンをどうするか問題だったのだが、

 籍を抜けるのであれば遠慮することはなくなった。

 ペルラン公爵のした罪を公にしよう」


「ご配慮くださりありがとうございます」


「いや、騎士団に入った後の活躍を期待している」


「はい。精進いたします」


深く頭を下げ、礼を述べた後、マルティ様は謁見室から出て行った。


「まさか、マルティンが貴族籍を抜けたいとはね」


「夜会の時は何も話さずにいたから、何を考えているのかと思っていたけれど、

 まともな性格をしていたら、あんな家は嫌になるわよ」


「そういうけれど、あんな考えの当主はめずらしくないからな。

 マルティンはルシールと似ているかもしれない」


「まぁ……少なくとも、公爵やマリアンヌ様のような人には見えないわね」


自分の兄だとは思えないけれど、嫌悪感はない。

いつか、もっと話し合って仲良くなれたら、少しは兄だと思えるのだろうか。



そして卒業式が終わり、カリーヌ王女とマリルー様はアンペール国に帰っていった。

マルティン様は籍を抜く申請が認められ、特例で騎士団に入団した。


元公爵令息ではあるが、入団したものは全員同じ訓練を受ける。

かなり厳しいけれど、それを乗り越えたら正式に騎士団の一員として認めてもらえる。


マルティン様が貴族籍を自分の意思で抜け、

嫡子をおりたことを知ったペルラン公爵だが、

特に騒ぐこともなくそのまま認めたらしい。


本当にマルティン様に興味がなかったのか。

マノン様が産む子がいればいいと考えているからなのか。


それを聞いて、情けをかける必要はないなと再認識した。



そして、二人が帰国して二週間。

アンペール王家から書簡が届いた。





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