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幸せになるために私ができること  作者: gacchi(がっち)


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66.夜会の挨拶

いつもながら何を考えているかわからない笑顔の公爵が、

満面の笑みのカリーヌ王女をエスコートしている。


その後ろには不安そうな顔をしたマリルー様、

無表情にしか見えない令息。


初めて見るけれど、この人がマルティン様。

公爵と同じ黒髪に青目。私の異母兄。

綺麗な顔立ちまで父親に似たらしい。


公爵の挨拶が終わると、王女が前に出る。

久しぶりにレオンに会えたからだろうか、とてもうれしそうだ。


「お久しぶりです、レオンハルト様」


「ああ、真面目に学園に通っていると報告を受けている。

 どうして今日はペルラン公爵家と一緒に来ているんだ?」


「実は、ペルラン公爵に魔術を教えてもらっているのです!」


「は?……魔術を?」


「ええ。令息のマルティン様と教室が同じで、

 その縁で魔術を教えてもらうことになりました」


「同じ教室……」


そういえば、二つ上の学年にはマルティン様がいたのを忘れていた。

学園に入学してからは社交を禁じられていないはずなのに、

マルティン様は夜会にも出席していなかった。


私に関わろうともしてこなかったし、

一度も会う事もなかった。


だから気にしていなかったのだが、王女たちと同じ教室だったとは。


「つい最近まで暇でしたので、王女たちのお役に立てるならと。

 息子を通じてお誘いしてみたのですよ」


「公爵から連絡をしたというのか?」


「ええ。魔術を教えることは社交ではないでしょう」


「それだけで済むというのならな」


カリーヌ王女とマリルー様に魔術を教えるということは、

関係を築くという事にもなる。

それは社交ではないのだろうか。


「実際に教え始めたのは最近で、謹慎が解けてからです。

 それなら問題はないのでは?」


「今後も二人に魔術を教えるつもりなのか?」


「ええ。お二人とも陛下に嫁ぐのですからね。

 臣下としてはお手伝いするのは当然でしょう」


「俺が娶る予定はない」


はっきり言うと、王女の笑顔が消えた。

何度も言われているのに、あきらめられないらしい。


「では、どうするおつもりなのですか?

 王女と公爵令嬢が留学してきて、魔術まで覚えようとしている。

 縁談を断って終わりにするのは同盟国の王としてどうなのでしょう?」


「何が言いたい」


「私は何がなんでも陛下に嫁ぐべきだとは申しておりません。

 妃にしないのなら、アルベール公爵やデュクロ公爵に嫁がせてもいいのでは?」


「なんだと?」


「陛下が娶らないのなら、側近の妻にしてもいいかと。

 王女と公爵令嬢ですよ?公爵夫人にするのに申し分ないでしょう」


「ペルラン公爵!?私はそんなこと頼んでないわよ!?」


相談なしでレオンに話したのか、王女が否定し始めた。


「私はレオンハルト様の正妃になるために来ました。

 マリルーは側妃になる予定で連れてきたのです。

 側近の妻になるつもりはありません!」


「王女が否定しなくても、俺は側近の妻に認める気はない」


「!!」


「学園はあと半年で卒業になる。

 そうしたらアンペール国に戻るように」


レオンの妃にするつもりもなく、お兄様やニクラス様の妻にする気もない。

完全否定されたからか、怒りで王女の顔が真っ赤になる。


「どうしてですの!?そこの偽公爵令嬢を妃にするくらいなら、

 私やマリルーのほうがよっぽど妃にふさわしいはずなのに!」


「何をもってふさわしいと言っているのかわからないな。

 はっきり言って、ルシールにかなう者はどこにもいない」


「ふふふ。ありがとう、レオン」


わざわざ私の方を向いて言うレオンにお礼を言う。

きっとわざとそうしたのだろうと思い、にっこり笑ってみせた。


「……どこなの!どこが負けていると言うの!?

 私はアンペール国唯一の王女です。

 公爵家にも認められていない者に負けるはずがないわ!」


「いいのか?」


「え?」


「ここで、俺の妃にも、側近の妻にもなれない欠点を言っても。

 ノヴェル国で嫁ぎ先を探せなくなるぞ?」


「欠点?そんなものありませんわ!」


レオンがはったりで言ったと思っているのか、

王女は胸を張っている。


ペルラン公爵は気づいているのか、顔色が悪くなっている。


「では、ここではっきりと言おう。

 カリーヌ王女とジョアン公爵令嬢は、

 この国の令嬢たちと比べて魔力が少ない」


「はぁ?そんなわけないわ!

 ちゃんと魔力検査は受けたもの!」


「それはアンペール国で受けたものだよな?

 向こうで魔力が多いと言われたとしても、

 この国では多いとは言えないはずだ。

 そもそも、その検査は疑わしいと思っている」


「検査結果が嘘だとでも!?」


「一時的に何かをして魔力をあげて検査をしたのか、

 検査結果を水増ししているかのどちらかだろう。

 魔力量が多いか少ないかくらいは、俺は相手を見ればすぐにわかる」


「そんなわけは……」


見ればわかると告げられたことで、

王女の口調が弱まっていく。


「魔力量に差がありすぎると子ができない。

 だから、俺の妃や高位貴族の妻にはなれない。

 これはどうすることもできない欠点だ」


「そんな……嘘よ……。

 だって、ペルラン公爵だって、私が妃になるのがふさわしいって……」


「そう言って煽てて、俺にけしかけるつもりだったんだろう。

 俺の妃にできなくても、ユリウスやニクラスに押しつけられれば、

 公爵家の子が生まれなければいいと」


そういうことなのか。

どうしてお兄様やニクラス様の妻にしようとしたのか。


跡継ぎが生まれなければ、爵位を維持できない。

嫌がらせのつもりだったのかもしれない。


レオンがはっきりと断ったからいいものの、

国からの縁談にされてしまったら、断るのが大変になる。


「そういうわけで、この国で王女と公爵令嬢が嫁げる家は、

 下位貴族がやっとというところだ。

 だが、アンペール王家がそれは認めないだろう。

 だから、嫁げる家はどこにもない。そういうことだ」


真っ青な顔になった王女とマリルー様。

公爵も望んでいなかった展開なのか、眉間にしわがよっている。


ただ一人、マルティン様だけが何もなかったかのように、

表情一つ変えずにいた。


この人、いったい何を考えているんだろう。



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