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幸せになるために私ができること  作者: gacchi(がっち)


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65.社交の時期

カリーヌ様が学園に香を持ち込み、

ガイオを部屋に連れ込んだ件、令息の体調を損ねた件、

繰り返し王宮から注意を受けている件は、

正式にアンペール国に苦情が入れられることになった。


さすがにまずいと思ったのか、

アンペール王家からは正式な謝罪を受けた。


それからカリーヌ王女とマリルー様はおとなしくしているようだった。


学園にはきちんと通っていても、

私やガイオに関わることななくなっていた。


何事もなかったような穏やかな日々の中、私は十六歳になった。


レオンやお兄様、側近や護衛のみんなに囲まれ、

十六歳になったことを祝ってもらう。


その夜、レオンと二人きりになった時、

もう一度お祝いの言葉を受け取る。


「おめでとう、ルシール。

 今、ここに、ルシールがいてくれることが何よりもうれしい」


「ええ、私もよ。生きてレオンの隣にいることが何よりもうれしいわ」


十二歳で死んでしまったリアーヌが、

ルシールとして十六年も生きて来られた。


それだけでもうれしくて、涙が止まらなくなる。


「うれしいのはわかるが、泣くな」


「うん……」


こぼれた涙をレオンが唇でぬぐい取る。


「何があっても、ルシールは俺が守る。

 だから、ずっとずっと一緒だ」


両頬に手をそえられたら、そっと唇が重なった。


「……いいの?」


「十六歳になったんだ。口づけは認めさせた」


「ふふっ。お兄様が認めたならいいわね」


今度はゆっくりと唇が重なる。

もう離れたくなくて、長い間ふれたまま。

息が苦しくなって、ようやく離れる。


「息が苦しくならないなら、ずっと口づけしていられるのに」


「……そんな可愛いこと言ったら、二度と離せなくなるだろう?」


「離れたくないから言ってるのに」


「あぁ、もう。口を閉じて」


「んっ」


ずっとふれていたら、境界線がわからなくなってしまう。

何度口づけをしても満足することなんてない。

本当にこのまま離れずにいられたらいいのに。




誕生日を過ぎてすぐ、今年の社交の時期が来た。

各貴族家でお茶会や小規模の夜会が開かれ、

最後に王宮での夜会が行われる。


「二か月後には夜会があるんだが……」


「王女とマリルー様を呼ばないわけにはいかないわよね」


「それもあるんだが、ペルラン公爵家の謹慎が解ける」


「え?……もうそんな時期なのね」


ペルラン公爵家出身のマリアンヌ様の件で、

ペルラン公爵家は令息のマルティン様をのぞいて謹慎になっていた。


その期間が終わり、次の王宮での夜会には出席することができる。


二度の謹慎処分を受けたなら、

恥ずかしくて顔を出せないと思う者もいるだろうけど、

おそらくペルラン公爵は気にせずに出席するはずだ。


関わりたくはないけれど、実の父親であることに変わりはない。

何か言ってくる可能性が高かった。


「王女たちだけでも頭が痛いのにな。

 何か対策はするのか?」


「ルシールに近寄らせないようにするしかないな。

 ガイオ、ジュリーはルシールから離れないように」


「俺もか……」


「ああ、そうか。できれば出席したくないのか」


そういえば、ガイオの父や兄も夜会に出席する。

戻ってきていることを知られたくないガイオは出たくないはず。


「こっそり護衛するくらいならいいけど。

 貴族として出席して隣にいるのは無理だな」


「ガイオはそれでいい。

 ジュリーは貴族令嬢として出席し、近くにいるように」


「わかりました」


レオンとお兄様がそばにいてくれるのが一番いいのだけど、

国王と宰相に挨拶したい者は多い。

場合によっては私が聞いてはいけない話もあるかもしれない。


ほんの少し心配ではあるけれど、

夜会に出席しないわけにもいかない。




夜会の日、準備を終えて待機していると、

ゴーシュが控室に慌てた様子で入ってきた。


「陛下、大変です」


「どうした?」


「王女とジョアン公爵令嬢が来たのですがっ」


「それは招待状を送っていただろう?」


招待状を送っているのだから来るのは当然なのに。


「それがっ。ペルラン公爵と令息と一緒に来ているんです!」


「は?」


「公爵が王女を、令息がジョアン公爵令嬢をエスコートしていて……。

 すごく親しげなんです!」


「どういうことだ?交流があったのか?」


つい最近まで社交を禁じられていた公爵がなぜ、

王女やマリルー様と知り合えたのか。


それよりも、エスコートしているのはどうしてなのか。


通常、エスコートをするのは親族か婚約者だ。

ペルラン公爵家は隣国と血のつながりはない。

マリルー様がマルティン様と婚約したという話は聞かない。


「……挨拶を受ける時に聞くしかないな」


「ちゃんと答えるかしら」


「それでも聞くしかないな」


「そうね……」


不安な気持ちのまま、レオンにエスコートされて大広間に入場する。

最初の夜会の時とは違い、妃として受け入れられているのを感じる。


最初の挨拶はアルベール公爵家。

お父様とお母様、お兄様が挨拶に来る。


一週間と空けずにお父様とお母様とは会っているし、

お兄様には毎日会っている。

それでもやっぱり会えるとほっとする。


問題が起きたのは、貴族順位三位。

ニヴェール侯爵家の挨拶だった。


前侯爵夫妻と現侯爵夫妻。

挨拶を問題なく終えたかと思ったが、

現侯爵デジレが前に出た。


薄茶色の髪に緑目。

眼鏡をかけた真面目そうな侯爵だった。


「最近、王宮内で弟のガイオが働いていると聞いたのですが、

 陛下はご存じでしょうか?」


「……」


「何やら、ルシール様の護衛をしているとも聞いたのですが」


しまった。

ジュリーの姉二人のどちらかから漏れたのかもしれない。

逆に怪しまれても困ると思い、口止めしていなかったせいだ。


「ニヴェール侯爵家の者かどうか知らんが、

 ガイオという名の護衛騎士は雇っている」


「!!やはり……会わせていただけませんでしょうか?」


「……本人がそれを望めば」


「お願いいたします、会わせてください!

 ガイオはニヴェール侯爵になるはずだったのです。

 ちょっとした行き違いで出奔してしまったのですが、

 今からでも侯爵位を弟に渡したいのです」


「聞いてはみるが、期待しないでくれ。

 おそらくガイオは受け入れないと思う。

 すでに俺の側近として侯爵位は持っているしな」


「そんな……直接話させてください!」


「今は返答できない。

 あとで連絡させよう」


「どうか、よろしくお願いいたします」


四人に深々と頭を下げられたけれど、

ガイオが会うと言うとは思えない。


レオンもそう思っているのか、浮かない顔のままだった。


そして、貴族順位十五位。

ペルラン公爵家の順番が来た。







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