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幸せになるために私ができること  作者: gacchi(がっち)


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61.無茶なお願い

「では、やはり王宮で教えてもらうことはできませんか?」


「王宮で?」


「ええ。レオンハルト様がお忙しいのはわかっていますが、

 ほんの少しでも見ていただければ」


さすがに言わないだろうと思っていたのに、

カリーヌ王女はほんのり頬を染めてレオンにお願いをした。


まず聞こえたのは大きなため息だった。


「王女は国王の仕事を何だと思っているんだ?

 魔術の教師ができるほど暇だと思っていると?」


「いえ!お忙しいのはわかっています。

 私も王太子であるお兄様のお手伝いをしていましたから」


「この国は王太子がいない。

 だから、余計に忙しいんだという事わかってもらえるだろうか?

 二人の面倒を見ている時間はない」


「で、ですので、その代わり私がお手伝いします!」


「は?」


レオンは完全にあきれているのか、

何を言い出すんだこの王女はという表情を隠しもしない。


「私とマリルーが執務室でお手伝いします。

 王太子の仕事なら多少はわかっていますから役に立てます!

 その代わりに、ほんの少しでいいので魔術を教えてもらえませんか?」


おそらく本当に王太子の仕事を手伝っているんだろう。

だから、こんなことを言いだしたんだと思う。

王女は名案だと言わんばかりの笑顔だが……。


「話にならないな」


「え?」


「他国の人間に王政の手伝いをさせられると思っているのか?」


「ですがっ……」


なぜかカリーヌ王女は私を見た。


「そちらの方は王政を手伝っていると」


「ルシールが王妃の仕事をしていることと、

 カリーヌ王女に手伝わせることは同じではないだろうに。

 何が言いたいんだ?」


「その方もアンペール国の者なのでしょう?

 だったら、私がお手伝いしてかまわないはずです」


「違う。大違いだ」


「なぜですの!?」


どうやら同じアンペール国の王家の血を引く者だと考えているようだ。

まぁ、血筋だけなら似たようなものなんだけど。


「カリーヌ王女、私はノヴェル国の貴族です。

 他国の者ではないのですよ?」


「っ!メリザンド様の血を引くって、やっぱり嘘なのでしょう!」


「いいえ、嘘ではありませんよ」


「だって、それならマリルーの妹ってことになるじゃない。

 少しも似てないじゃない!公爵にも似てないし!」


それはそうだ。

マリルー様とも公爵様とも血のつながりはないのだから。

だけど、ここでそれを言うことはできない。


「でも、前国王夫妻は私を孫だと認めてくれましたよ?」


「お祖父様とお祖母様が……?」


「前回、そちらの国に行ったのは、血縁関係があるか検査をするためでしたから。

 前国王夫妻と血のつながりがあるか検査を受けて、

 私はきちんと王家の血を引く者だと認めてもらえましたよ」


「そんな……」


皆に知らされているのかと思ったけれど、そうではなかったみたい。

あの場にいた者だけの秘密にされているのかもしれない。


できるなら、私を否定したいのでしょうから。


「じゃあ、やっぱり、アンペール国の者じゃない。

 私だって、レオンハルト様のお手伝いしてもいいはずよ」


「ですから、私はこの国のアルベール公爵家の娘になっているんです。

 血筋はどうあれ、この国の貴族として妃の仕事を任されています」


「だから、私だって正妃候補なのだから!

 将来的にはこの国の者になるのだから問題ないでしょう!」


「それは認めていないぞ」


「え?」


ようやく正妃候補の言葉が出た。

これまでアンペール国は何も言ってこなかったから。


「そちらの国で勝手に正妃候補だと言っているだけだ。

 我が国の妃を決める権利は我が国にだけある。

 そちらで何を言っていようが無意味だ」


「無意味だなんてっ。これはアンペール国の王家が決めたことで」


「ここはノヴェル国だ。アンペール国は関係がない」


「そんな……そんなことって」


「それに、俺の仕事を手伝えるのは俺が選んだ側近のみだ。

 カリーヌ王女とマリルー嬢に手伝わせることはない。

 他国だからという理由だけじゃなく、俺が信頼していないからだ」


「それは一緒にいるうちに……」


「今後、王宮に上がる許可は出さない。

 留学の挨拶はわかった。下がるように」


「待ってください!まだお話が」


今にも縋りつきそうなカリーヌ王女と無言で震えているマリルー様を、

近衛騎士たちが囲んで謁見室から出す。

このまま馬車まで送る予定なのだろう。


扉が完全にしまってから、お兄様が呆れたように笑った。


「それにしてもすごいこと言ったな。

 ルシールができるなら自分も?レオンの手伝いをするから魔術を教えろ?

 とんでもない王女だな」


「一番下の子で唯一の王女だから甘やかされているらしい。

 そんなに可愛がっているのなら自国から出さなきゃいいだろうに」


「マリルー様はしゃべらなかったわね。

 いつもあんな感じなのかしら」


「あれだけうるさい王女とずっと一緒にいたら、

 しゃべる必要もなくなるんじゃないか?」


「王女がうるさいから黙るしかないというのはありそうかも」


一応は身分差あるでしょうし。

王女がしゃべっていたら、口を挟みにくいわよね。


「今後は王宮に立ち入る許可は出さない。

 挨拶は受けたからな。あとはここに来る用事はない」


「用事を作り出しそうだけどね」


「その時は断るだけだ」






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