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幸せになるために私ができること  作者: gacchi(がっち)


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58.紹介された正妃候補たち

王族や高位貴族たちに紹介される間も、

レオンとお兄様は私をそばから離さなかった。


私をレオンから離したい王族女性たちに、

女性だけでお話しましょうと誘われたけれど、

それもレオンがあっさりと断ってしまった。


これだけはっきり態度で示せばあきらめるかと思っていたら、

ジョアン公爵にまで命じていたらしい。


「……レオンハルト国王、娘と話したいのですが」


「娘と?」


「ええ。他国に行った娘を心配してもおかしくないでしょう。

 ルシール、少し話そう。こちらに来なさい」


無理やり言わされているのだろうな。

ジョアン公爵の目は一度も私の目を見なかった。


「悪いけど、レオンがいない場所で話すことなんてないわ」


「レオンハルト国王、娘を洗脳しているのではないですよね?

 父親と話すこともできないなんて」


「それは逆にこちらも言いたいな。

 二人で話したいなんて、洗脳でもする気か?

 俺がいても話せばいいだろうに」


「不満があっても言えないかもしれないでしょう」


「いいえ。不満なんてないわ。

 だから、ジョアン公爵が心配することなんてないのよ?」


ジョアン公爵は戸籍上の父親だっただけで、本当の父親ではない。

会うのも三回目。けっして親しい関係ではない。


「……父親をそのように呼ぶとは」


「ジョアン公爵、私は警告しているのよ?

 私を連れ出すように指示してきた方には、

 無理でしたと素直に報告したほうがジョアン公爵のためだわ。

 私に言われては困ること、たくさんあるでしょう?」


「っ!!」


「あの時、ペルラン公爵と話していたこと、

 私、ちゃんと理解しているんだから」


「……まさか」


別邸から連れ出された日。

がりがりに細く、成長不足で幼く見えていただろうけれど、

あの時の会話は全部聞こえていたし、覚えている。


私がちゃんと理解していることを知った、

ジョアン公爵の顔色がはっきりと悪くなっていく。


「……わかった。無理だったと報告しよう」


「ええ、そうしたほうがお互いのためよ」


高位貴族としての誇りは残っているのか、

公爵は慌てることなく去っていった。


「そろそろ帰るか」


「そうね。挨拶もすんだようだし」


もういいだろうと席を立とうとしたら、

慌てたように王太子がこちらに向かってくるのが見えた。


もしかして、ジョアン公爵をけしかけたのって、王太子?


「ど、どうしたのですか?レオンハルト国王」


「王族との挨拶もすんだし、部屋に戻るところだ」


「ま、待ってください。まだ挨拶をすませていない王族がいるんです」


「……王族?」


「ええ、すぐに連れてきますから」


前国王夫妻と国王、王妃と側妃、王弟夫妻、

王太子、アンリ第二王子、ユーグ第三王子と挨拶している。

……そういえば王女に会っていない。


王太子が連れてきたのは私よりも少し年上の令嬢二人だった。


「妹のカリーヌと従妹のマリルーです」


「第一王女のカリーヌですわ」


「マリルー・ジョアンと申します」


カリーヌ王女は側妃の子なはず。

金色の髪に青目、王女らしく堂々とした雰囲気だった。

にっこりとレオンに笑いかけているけれど、私の方は見ない。


そして、ジョアン公爵の長女、マリルー。

戸籍上では私の姉になるのだが、実際には血のつながりはない。

薄茶色の髪に緑目。綺麗な顔立ちをしている。

王家の色ではないんだなと思ったけれど、母親に似たのかもしれない。


小柄でほっそりとして、カリーヌ王女を頼りにするように隣に立っている。

気が強い高位貴族ばかり見てきたからか、公爵令嬢には見えない。


「二人とも十七歳でルシール嬢と年も近い。

 少し一緒に話させてはいかがですか?」


「悪いが、昼の検査のせいで疲れているようだ。

 早く休ませたいので、退席させてもらう」


「では、ルシール嬢だけ退席させれば……」


「俺は自分の妃が何よりも大事なんだ」


断られた王太子は一瞬だけ眉をひそめたが、おとなしく私たちを見送った。

だが、隣ではカリーヌ王女がものすごい形相で私をにらんでいた。


「見なくていい」


「はい、お兄様」


目が離せなくなりそうだったけれど、お兄様が視界をふさいでくれた。

レオンとお兄様に両側を守られるようにして大広間から出る。


外で待っていたジニーとガイオがすぐに護衛につく。


「部屋に戻るぞ」


「ずいぶんと早かったな~喧嘩でもしたのか?」


「お前と違ってそんなことはしない」


「え~俺だってそんな面倒なことになる前に逃げるよ」


「それもそうか」


面倒を嫌うガイオが貴族と喧嘩するわけがない。

求婚されて逃げてくるくらいだし。


「そういえば、ガイオは平気なの?

 求婚された令嬢に見つかったらまずいんじゃない?」


「護衛やってた時とは髪色と髪型が違うから大丈夫」


「それならいいけど」


意外とちゃんと対策していたようだ。


「それに、陛下やユリウス様と一緒にいれば、

 令嬢たちはみんなそっちを見てくれるから平気だよ」


「ふふふ。それもそうね」


それはその通りかもしれない。

ガイオが高位貴族だと最初から知っているのならともかく、

国王や公爵についている護衛のほうに目を向ける者はいないだろう。


部屋について、ようやくゆっくりと息を吐いた。


「疲れただろう」


「ええ、そうね。王族は血のつながりがあっても初めて会う人ばかりだし。

 戸籍上の父親や姉に関しては、もう二度と関わりたくないわね」


「ノヴェルに帰れば、もう関わることはない。

 俺がこの国に来ることもめったにない。

 ルシールがこの国に来ることもしばらくはないだろう」


「それならいいけれど」


翌日には帰国すると王宮側に連絡させると、

アンリ王子が引き留めに来たけれど、それらはお兄様が断っていた。


馬車が王宮を出る時、見送りの王太子の隣には、

カリーヌ王女とマリルー様もいた。


だが、レオンは二人には声をかけることなく馬車に乗った。

馬車が動き始めると、悔しそうなカリーヌ王女と、

悲しそうなマリルー様の顔が遠ざかっていく。


「正妃候補よね、あの二人」


「年齢や身分を考えるとそうだと思う。

 はっきり言ってくれば、はっきり断るのだが。

 それをわかっているから、何も言わなかったんだろうな」


「あきらめてくれるかしら」


「どうだろうな」


その不安の答えを知ったのは、帰国してすぐのことだった。

アンペール国国王から書簡が届いた。


それは、カリーヌ王女とマリルー様を留学させたいという申し出だった。



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