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幸せになるために私ができること  作者: gacchi(がっち)


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57.血縁の確認

「これはどういう魔術具なのだろうか。初めて見るな」


「開発したばかりで流通させていない。

 こちらの二つの印のところに検査したい二人の血を垂らす。

 血縁関係にあれば、血はお互いの魔力に反応して引き寄せられる」


「なるほど……反応しなかったら血のつながりはないと?」


「そうだ。まだ開発したばかりで精度はそれほど強くはない。

 直系の祖父母、親、同母の兄弟姉妹なら確実に反応する」


小さな針を渡され、指の先を少しだけ刺す。

血は一滴でいい。それを印の上に垂らした。


その魔術具がナディア様の前に運ばれ、

同じように血を一滴垂らしてもらう。


「魔術具を起動させよ」


魔術具が反応するとすぐに血がゆるりと動いた。

お互いに引き寄せられるように中央に集まり、一つの塊になる。


「血縁者だと証明されたようだ。

 では、アロイス前国王ともやってみよう」


少しだけ緊張した雰囲気の中、アロイス様とも同じように検査される。

結果は、同じように血は引き寄せられた。


「間違いなく、ルシールはお二人の孫のようだな」


「まぁ……本当にメリザンドの娘なのね」


「もう一人孫がいたとは……」


感動しているような二人とは違って、王太子は冷静だった。


「お待ちください、お祖父様。この魔道具が本当かどうかわかりません」


「我々が嘘をついていると?」


「失礼なのはわかっていますが、確信が持てません」


「まぁ、そうでしょうね。ジニー、お前で試せ」


「はっ」


わかりやすい他人の例として私とジニーで検査をするらしい。

同じように血を一滴垂らす。

ジニーも同じように血を垂らし、起動させたが血は動かなかった。


「……これだけでは」


「アルマン王子とアンリ王子でやってみればいい」


「では……」


今度は第一王子と第二王子で検査をしている。

二人は王妃から生まれた兄弟だ。何も問題なく血は動き、一つになる。


「これで細工していないというのがわかったと思うが」


「そのようだ。息子が失礼なことを言った。詫びよう」


「いや、疑問に思うのは当然だ。問題はない」


「だが、ルシール嬢は本当にジョアン公爵家の令嬢だったのか。

 アンリから親権移籍届けの話は聞いていたが、なぜそのようなことを」


「それについては俺にもわからない。

 俺がルシールに出会った時にはペルラン公爵家の令嬢になっていた。

 ああ、今は後見でもあるアルベール公爵家の養女になっているが」


「筆頭侯爵家が後見についた、ということか」


その重要性をわかっているからだろう。

アンペール国王がうなるような声を出した。


「とにかく、ルシールがこの国の王家の血を引くと証明できればそれでいい。

 正式な結婚はルシールが学園を卒業した後になる。招待状は送る予定だ」


「……そうか。わかった。

 この後、歓迎の夜会を準備している。参加していってくれ」


「そうか。では、お披露目としよう」


このまま帰ってもいいのだけど、揉めたいわけではない。

レオンが受け入れたことで、周りがほっとしたのを感じた。


部屋に戻り、夜会の準備を始める。

急なことではあるが、予想はしてあった。


ノヴェル国から持ってきた夜会用のドレスは青色。

レースを幾重にも重ねた可愛らしいものを選んだのは、

まだ十五歳の私が大人びたものを着ても似合わないからだ。


若さで侮られるのなら、それはそれでかまわない。

私はレオンやお兄様が喜んでくれるのなら、それでいいのだから。


ドレスに着替え、髪も結い上げてもらう。

化粧をした後、宝石がついた銀細工のイヤリングとネックレスをつけて、

準備が終えるともう時間になっていた。


「今日のドレスもよく似合っている。すごく可愛いな。

 本当はよけいな男たちに見せたくはないんだが。

 仕方ない。さぁ、戦場に行くか」


「戦場って」


「ルシールを蹴散らそうと令嬢たちがやってくるのだろう」


「その場合、戦うのは私じゃないの?」


「ルシールを矢面に立たせるわけないだろう。

 俺とユリウスが倒すに決まっている」


「その通りだな」


「もう、過保護なんだから」


この夜会でおそらくレオンの正妃候補を紹介されるだろう。

それについては警戒するつもりではいたけれど、

その前に好戦的すぎるレオンに笑ってしまいそうになる。


これでは私が嫉妬する暇もないわ。


「よし、行こう」


「ええ」


レオンにエスコートされ、反対側はお兄様が騎士のように守ってくれる。

廊下を出ると、王宮の使用人たちが頭を下げて私たちが通るのを待つ。


何人もの女性たちが頬を染めて、ちらちらと二人を見ているのがわかる。

見惚れるのも仕方ないわよね。


外見だけでも見惚れるほど顔立ちが整っている二人。

その上、権力も財力も持っている。


ノヴェル国での夜会では騎士たちが目を光らせているから、

そこまで不敬なものは現れないけれど。


ここはアンペール国の王宮。

ジニーやガイオは夜会に出席できない。

何かあれば自分たちで対応するしかない。


大広間に到着すると、中ではもう夜会が始まっていた。

この国の貴族ではない私たちは、

夜会の途中でアンペール国王から紹介されることになっている。


入場の合図がされ、大きな扉が開けられた。

レオンのエスコートで中に入ると、大広間中の貴族から視線が集まる。


もう何度も夜会に出ているから慣れているけれど。

レオンやお兄様に向けられる熱い視線や女性の悲鳴のような声に驚く。


うんざりしたような表情の二人に、少しだけ同情する。

ずっとこんな風に騒がれていたら、女性嫌いになってしまいそう。


「ノヴェル国国王のレオンハルトだ。

 同盟国であるアンペール国と会合のために来たが、

 妃のルシールと宰相のユリウスと共に、少しだけ顔を出させてもらう」


「レオンハルト国王、そう言わずに、ゆっくり楽しんでいってくれ」


長居はしないというレオンに、アンペール国の王族たちは引きつったような笑顔になった。


「それでは、ノヴェル国とアンペール国の同盟に乾杯しよう!」


慌てたようにグラスを渡され、大広間中に乾杯の掛け声が響く。

これ以上レオンによけいなことを言われては困るようだ。


正式に私を正妃と認めたと思われたくはないのだろうから。


「では、レオンハルト国王、こちらで話し合おうではないか」


「ああ」



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