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幸せになるために私ができること  作者: gacchi(がっち)


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55.アンペール国の出迎え

「出迎えご苦労」


「女官長のミレンと申します」


「ああ」


「ノヴェル国王陛下と宰相閣下、令息の方々はこちらの者が案内いたします。

 ご令嬢は別の者が案内いたしますので」


「……ちょっと待て。ルシールをどこに連れて行く気だ」


私だけ引き離そうとされ、レオンが咎める。

と、同時にジニーとガイオが私を守ろうと前に立った。


「え……?あの、そちらの令嬢はジョアン公爵家の令嬢だと聞いておりましたので、

 ジョアン公爵家が用意する部屋にお連れしようと」


「ああ、そういうことか。連絡不足のようだな。

 ルシールはジョアン公爵家出身ではあるが、

 今は我が国のアルベール公爵家の養女になっている」


「……それは、申し訳ございません」


「いや、気にしなくていい。

 ルシールは俺と同じ部屋に滞在するから、

 新しい部屋は用意しなくていい」


「…………かしこまりました」


たとえ婚約者だとしても、十五歳になったばかりの私が、

国王と同じ部屋に滞在するのはどういうことだと思うだろう。


それでも一介の女官にそれを咎めることは許されない。


黙ったまま案内の者についていき、レオンに用意された部屋に入る。


「あの……ご令嬢の世話役として女官をお付けいたしましょうか」


「本国から専属侍女を全員連れてきている。

 世話役をつける必要はない。気にしないでくれ」


「かしこまりました……」


アンペールの者が全員いなくなって、ようやく息を吐いた。


「あれは引き離してどうするつもりだったのだろうな」


「問い詰めて調査するつもりだったんだろう。

 もし、本当なら脅すくらいはしたかもしれないが」


あのまま私だけ離されなくてよかった。

もっとも、レオンとお兄様がそんな真似はさせないだろうけど。


部屋で湯あみをして旅の汚れを落とし、くつろいていると、

レオンに来客が知らされる。


誰かと思ったら、アンリ第二王子だった。


以前会ったことがあるとはいえ、今は人前に出る格好はしていない。

どうするのかと思っていたら、レオンが面会を断っていた。


「湯あみをしたばかりで面会できるような姿ではない。

 何か話があるのなら、三時間後にまた来てほしい」


「かしこまりました」


少しはねばるかとおもったけれどアンリ王子は素直に引き下がった。


そして、こちらの準備が整った三時間後、

再びアンリ王子は部屋を訪ねてきた。


「ようこそおいでくださいました」


「ああ、久しぶりだな」


「レオンハルト国王を歓迎する行事の打ち合わせに来ました。

 歓迎行事の予定はこちらになっています」


夜会だけではなく、歓迎する行事が行われるらしい。

アンリ王子の部下と思われる文官が冊子を配っているけれど、

それは私には渡されなかった。


「ルシール。一緒に確認しよう」


「ええ」


それに気がついたレオンが膝の上に乗せてくれる。

だが、予定を確認すると、私の名は出席者にはなかった。


「この予定にはルシールの名がないようだが?」


「そちらの令嬢の検査は十日後になっています。

 身分が定まらないうちは公式行事に招待するのは難しいですからね」


仕方ないと笑うアンリ王子に、レオンとお兄様が冊子を投げ捨てた。


「ルシールがこちらの国の血をひいているかどうかは関係なく、

 俺の妃だと認められている。それをわかっていないのか?」


「ルシールは筆頭公爵家で宰相である私の妹だということを忘れているのか?」


「「ルシールが出ないのなら、こちらは誰も出席しない!」」


レオンとお兄様が同時に出席を拒否した。

それに慌てたのはアンリ王子よりも、隣にいた文官だった。


「そんな!ノヴェル国王陛下が来てくださったということで、

 この国の者たちは楽しみにしているのですよ!!」


「だからなんだというんだ。

 ルシールは我が国では、もうすでに妃として仕事をしている。

 それをこの国ではないがしろにしてもいいというのか?」


「陛下、それなら我が国も同じことをしましょうか。

 今後、アンペールの王族が来たとしても、妃は夜会に出席させないということで。

 公式行事であっても、いない者として扱いましょう」


「ちょっと待ってください!どうしてそのようなことに!?」


「この冊子に書かれている予定はそういうことだ。

 俺の妃がいないものとして扱われている。

 同じように扱われても文句は言えないはずだが?」


言われるまでわかっていなかったのか、文官たちが真っ青になっている。

アンリ王子は表情を変えていないけれど、言われるのを予想していたのだろうか。


「とにかく、ルシールを我が妃として扱わないのであれば、

 俺は公式行事に出席することはしない。検査だけして帰ろう」


「そうですね、陛下。そうしましょう」


冊子を配られた全員が投げ捨てるように文官に返す。

文官たちは今にも倒れそうだけどどうするんだろう。


「わかりました。父上に確認してきましょう」


「確認など、別に必要ない。俺は夜会に来たわけじゃない。

 ルシールの検査に来たんだ。他の行事なんていらない」


「アンリ王子、レオンハルト陛下が言っていることを駆け引きだと思わないほうがいい。

 こちらは特にルシールの検査を必要だと思っていない。

 このまま国に帰っても誰も困らないんだから」


「……それは言い過ぎでは?

 そちらの令嬢が認められなかったら、困るのでしょう?」


「いや、困らないよ」


さすがに予想外だったのか、余裕そうな顔をしていたアンリ王子の表情が崩れた。


「なにか誤解しているのかもしれないが、

 アンペール国には俺の正妃選びに口出す権利は一切ない。

 条約には王家の血を引くもの、としか書かれていないんだ。

 そちらが王家の血を引くと認める必要はない」


「ですが、ではどうやって血を引く者だと」


「条約した時の契約書には魔術がかかっている。

 俺がルシールと結婚して契約書に異常がなければ、それで問題ない。

 こちらはルシールが王家の血をひいていると確信がある。

 だから、検査をして認めてもらう必要なんかないんだ」


「そんな……」


もしかしたら勘違いしているかもしれないと思っていた。

アンペール国が認める者を正妃にする、という条件と、

アンペール国の王家の血を引く者を正妃にする、という条件では大違いだ。


「俺の妃を誰にするか、アンペール国には口を出す権利はない。

 それを理解していないようなら、今すぐに帰らせてもらう」


「わ、わかりました。父上に報告して、行事を取り消してきます」


「そうか。では、新しい予定が決まったら報告に来てくれ」


「……はい」


アンリ王子はレオンの家臣ではない。

それでも力の差を感じ取ったのか、深く頭を下げて部屋から出て行った。





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