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幸せになるために私ができること  作者: gacchi(がっち)


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54.アンペール国からの連絡

隣国アンペールから連絡が来たのは、

私が学園に入学して一か月のことだった。


時期から見て、私が準成人になるのを待っていたのだろう。


「何て言ってきたの?」


「まず、魔術具は完成しているのかという問い合わせ。

 で、完成しているのなら確認のために王族を派遣したいと」


「どうするの?完成していること言うの?」


魔術具はとっくの昔に完成している。

王族の派遣を認めるのだろうか。


「そうだな。魔術具のことはもう言っていいだろう。

 検査もかまわない。だけど、相手を指定しようと思う」


「ただの王族じゃだめってこと?」


「ああ。元第三王女の母親、元王妃に指定する」


「元王妃?私のお祖母様ってこと?」


「そうだ」


現在のアンペール国は元第三王女の長兄が国王となっている。

以前に使者としてきた第二王子はその息子になる。


今回の派遣も第二王子を寄こすつもりだったのかもしれない。

引退している元王妃を他国に呼ぶことなんて可能なんだろうか。


直系の親族と検査したほうが確実なのはわかるけれど、

高貴な人を呼びつけるような行為は失礼だと思われるかもしれない。


考えているとお兄様がクツクツと笑い出した。


「それって嫌味なのか?」


「いや、絶対に間違えないようにだ」


「嫌味って、どういうこと?」


「元国王ではなく、現国王でも、王弟でもない。

 検査するのはルシールの祖母に限るということは、

 第三王女の父親が国王かどうかわからないと言っているようなものだ」


「えっ」


それは……そうかもしれない。

お祖父様である元国王と検査して、もし違ったとしたら、

それは元王妃が不貞した証拠になってしまうかもしれない?


だから、父親ではなくて母親を派遣しろと。

最初から疑っていると思われても仕方ない要望だ。


「しかも、ルシールの父親は夫のジョアン公爵ではない。

 母親に限定した意味を向こうがわかればいいがな」


「向こうに気づかせるために?」


「そういう意味にとられても仕方ないとは思った。

 だが、確実にルシールの血縁者とでなければ意味がないと思っただけだ。

 他の王族と検査して、血縁者ではないと出てしまったら、

 ルシールが正妃になる権利はなくなってしまうからな」


「そっか……そうよね」


この検査で私がアンペール国の王族の血を引くと認めてもらえなかったら、

レオンの正妃になることはできない。


その場合、アンペール国が認める王家の血筋の令嬢を正妃にしなければいけなくなる。

この国としても、レオンと私にしても、そんなことは認められない。


「だけど、元王妃は身体が弱っていると聞いている。

 この国まで来てくれるかはわからないな」


「ダメだったら、どうなるのかしら」


「まあ、送ってみるしかないだろう」


向こうがどう反応するのか心配しながらも書簡を送ってみると、

返事はかなり待たされることになった。


やはり失礼だったのか、元王妃の派遣はむずかしかったのか。

どちらにせよ、無理を言ってしまったに違いない。


返事が来たのは二か月後のことだった。


「元王妃の派遣は体力的に難しいそうだ。

 他の王族の派遣では検査できないのであれば、

 四か月後の夜会に招待するので、その前に検査してはどうかと」


「ルシールを夜会に招待?他国の王宮に?」


「俺と一緒にということだ。

 夜会の前に検査して王族の血を引くと分かれば俺の婚約者として。

 違うのなら、夜会で俺に正妃候補を紹介しようということだろう」


レオンの正妃候補……いるのはわかっているけれど。


「ルシール、心配しなくていい。

 たとえ、アンペール国の血を引くと認められなかったとしても、

 お前以外を娶る気はない」


「でも……」


「ルシール、筆頭公爵家の権力にかけて、レオンにそんな真似はさせない」


「ほらな、後見がこう言っているんだ。

 国一番の貴族家が反対するようなことなんてできるわけがない。

 怖くて他の令嬢なんて娶れないよ」


「もう……ありがとう」


ふざけて笑うレオンとお兄様に、お礼を言う。

きっとどんな無理なことだって、この二人ならやってしまうのだろう。


だけど、それはこの国のためにはならない。

問題なく、私が認められたらいいのだけど。


レオンが了承の旨を書いて送り、アンペールからは正式な招待状が届いた。




四か月後、私はレオンとお兄様、

ガイオ、ジニーとアンペール国に向かうことになった。


専属の侍女たちは全員連れてきているが、

他の側近にはレオンたちがいない間の王政を任せている。


レオンと宰相でもあるお兄様が同時に国を出るのは初めてだそうだけど、

いない間はニクラス様に宰相代理を任せることにしたらしい。


馬車で揺られ、アンペールの王宮へと入る。

アンペール生まれではあるけれど、王都を見るのは初めてだ。

王宮に入るのも初めてで、見るものがすべてめずらしい。


「ルシール、珍しいものが見られると言われてもついていってはダメだよ」


「珍しいお菓子につられてもダメだぞ」


「ひどいわ。そんな子供じゃないんだから」


「そんなに落ち着きないんだから言われても仕方ないだろう」


「……そんなに?」


二人に力強くうなずかれ、ふくれていると馬車が止まる。

レオンの手を借りて馬車から降りるとたくさんの女官が待ち構えていた。


そのうちの一人、女官長らしき高齢の女性が先頭に立っている。


「出迎えご苦労」


「女官長のミレンと申します」


「ああ」


「ノヴェル国王陛下と宰相閣下、令息の方々はこちらの者が案内いたします。

 ご令嬢は別の者が案内いたしますので」


「……ちょっと待て。ルシールをどこに連れて行く気だ」




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