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幸せになるために私ができること  作者: gacchi(がっち)


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53.学園の入学

後宮にいる側妃候補がティナ様だけになってからは、

レオンの負担もぐっと減り、あまり苦でもなくなったようだ。


あいかわらず直接話すことはしないそうで、

一時間休憩しに行っているような感じだとか。


レオンの側近も増え、仕事の負担も減ってきている。

どちらかと言えばのんびりと過ごしていると、

あっという間に時間は過ぎていく。


気がつけば、来月には私の学園入学が迫っていた。


「入学の準備は終わっているのだろう?」


「ええ。お母様がはりきって準備してくれたの」


「そうか。夫人が用意したのか。喜んでいただろう」


「ものすごく」


リアーヌは学園に入学できずに死んでしまった。

お母様は娘のために何もできなかったことを悔やんでいた。


だから、ルシールが十五歳になって、

学園に通えることをとても喜んでいた。


学園に入学するということは、準成人になるということ。

レオンの婚約者として特例で夜会には出ているけれど、

本当は公の場に出られるのは十五歳から。


学園に入学し、準成人になった後の夜会では、

ようやくレオンと踊ることが許される。


「だが、準成人したとなれば、アンペール国が何か言ってくるかもしれない」


「隣国が?レオンの婚約者として認めないとか?」


以前に隣国から第二王子とジョアン公爵が来た時、

婚約者として黙認すると言っていた。


認めるとは言っていない。

いつ抗議が来てもおかしくなかった。


「ルシールが本当に王族の血を引いているのか調べろと言ってくるだろう」


「そういえばそうね。魔術具で調べるって言ってたものね。

 何か言ってくるかしら」


「まぁ、何かしら言ってくるだろうな。

 面倒なことになるのは覚悟しておこう」


「はぁい」


あまり面倒なことは避けたいけれど、十八歳になった時に婚姻するためには、

どこかで隣国と話し合いをしなければいけない。


どうせ揉めるのなら、早いうちに決着をつけたい。




学園の入学する日、護衛としてジニーとガイオ、

そして侍女と一緒に馬車で向かう。

侍女は交代で二人ずつ連れていくことになっているが、

この日はレナとユーリだった。


記念すべき日なので、他の侍女に譲らなかったらしい。

制服姿を見た二人は感激したのか、涙をハンカチで拭いている。


「ルシール様、制服姿が本当に素晴らしいですわ」


「ええ、とってもお似合いです」


「本当?似合ってるならうれしい。ありがとう」


ドレスとは違い、身体の線がわかりやすい制服は、

それなりに身長がないと着こなせない。


十歳まで部屋に閉じ込められて育ったせいか、この国に来た時は身体が小さかった。

だけど、十分な栄養と魔術の訓練のおかげか、すくすくと成長し、

今では年相応の身長と身体つきになっている。


レナとユーリに褒められて喜んでいる隣では、

興味なさそうにガイオがあくびをした。


「ガイオ。学園ではあまり口を開かないほうがいいと思うわ」


「……俺だって会話しなくて済むならそのほうがいいんだが」


「しゃべらないといけないような状況になるの?

 何かあればジニーに話させればいいじゃない」


「用事がある時はそうするが、俺に令嬢が寄ってきた場合は知らないぞ」


「あら。そういうこと……。

 私の護衛に勝手に話しかけるような無礼な真似をする者がいれば、

 それなりに処罰を受けると思うけれど」


護衛や使用人は貴族の持ち物として扱われる。

主人以外が勝手に話しかけたり、用事を言いつけることは失礼になる。


レオンの婚約者である私の護衛に、

いくら好みの男性だからと言って話しかけたりするだろうか。


「俺のことを知っている者がいないとは限らないからな」


「そっちの関係者の心配なのね。

 でも、それも護衛だからと断っていいと思うけれど」


「何かあれば守ってくれよな、姫さん」


「守るのはガイオの役目でしょうに。

 まぁ、わかったわ。何かあれば守るから」


「頼りにしている」


学園には十五歳から十八歳までの貴族令息と令嬢が通う。


それだけではなく、教員や研究者たちも学園にはいる。

昔のガイオを知っている者がいるかもしれない。


まぁ、その時はその時で対処しましょうと思っていると、

馬車は学園の敷地内に入ったようだ。


王族用の馬車置き場で降り、教室へ向かう。


教室は身分によって分けられているそうだ。

これは高位貴族のためというよりは、下位貴族のためにそうしているのだろう。


貴族家は学園に入学するまで家庭教師をつけるが、

高位貴族と下位貴族では雇える家庭教師の質が違う。

学ぶ範囲も違っているのだから、同じ授業ができるわけがない。


私は筆頭公爵家の養女として、一番上の教室になる。

指定された教室に入ると、中にいた令息令嬢が一斉に頭を下げた。


「ああ、学園内では礼をしなくていいわ。

 これから毎日一緒に学ぶことになるのだし、よろしくね」


その言葉に教室内の雰囲気が柔らかくなる。


レオンの婚約者として、すでに王妃の仕事もこなしている。

私に不敬だと言われたら、貴族ではいられなくなるかもしれない。

周りが緊張してしまうのも当然のことだった。


ふと見れば、お母様のお茶会で見知った令嬢たちがいる。

話していると担任の教師が入ってきて、すぐに授業が始められた。


王妃教育も終えているため、授業で知らないことはない。

それでも、同じ年齢の子たちと一緒に学べるというのは案外楽しい。


集中していたからか、その日の授業は短く感じられた。


仲良くなった令嬢たちに挨拶をして別れ、王宮に戻る。

馬車から降りたら、そこにはレオンとお兄様が待っていた。


「え?どうしたの?」


「ルシールが帰ってくるのを待ってたんだ」


「そうなの?ありがとう」


わざわざ私が帰ってくるのを待ってくれていたらしい。

それほど忙しくなくなったといっても、暇というわけでもないだろうに。


「陛下はルシールがいじめられてないかって、心配で落ち着かなかったんだよ」


「それはお前のことだろう、ユリウス」


「いや、陛下もだろう。もう帰ってくる頃かって十分おきに聞いてくるし」


どうやらレオンとお兄様には心配されていたらしい。


「ふふっ。大丈夫よ。令嬢たちとも仲良くなったし、楽しかったわ」


「そうか、それならよかった」




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