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幸せになるために私ができること  作者: gacchi(がっち)


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50.マノン様の指示通りに

いつもよりも大幅に遅れて戻ってきたレオンたちが、

執務室に入ってくるなり、力尽きたようにソファに沈み込む。


「だ、大丈夫?」


「あ、ああ。これでようやく終わったよ」


後宮でマノン様が起こした騒ぎの報告を受け、

その内容に私も驚いてしまった。


「まさか、マノン様が私の真似をするなんて」


「どこからそれを知ったのか、問い詰めればよかったな」


あの時、護衛や女官がいたのか全く覚えていない。

そこから話が漏れてしまったのだろうか。

レオンも私を助けるためにすぐさま移動したと言っていた。


「あの時はレオンも焦っていたんだものね」


「そうだな。だが、あとからでもその場にいた者たちを集め、

 口外しないようにすればよかった」


「でも、治るまで私のそばから離れなかったわよね」


「そうだったな……それから命じたとしても遅いな」


「それにしても。首を切ったからレオンの妃になれたわけじゃないのに。

 本当に死んでしまったらどうするつもりだったのかしら」


もしかして、私が首を切ると言ってレオンに迫って、

正妃になることを約束させたという噂になっていたりするの?


死のうとして首を切ったことが知られるのも恥ずかしいけれど、

間違った噂が信じられているのだとしたら、それも嫌だな。


「ちょっと傷がついただけで剣を落としていたよ。

 本気で首を切る気はなかっただろうな。

 俺が慌てて止めるとでも思ってたんだろう」


「死ぬな、妃にするから!って?レオンが?

 そんなことありえないわ」


「だよな。俺もそう思う。

 マノン嬢は俺のこと優しいとでも勘違いしてるのか」


「うーん。そうかもね」


レオンはリアーヌには優しかった。

そして、今は私に優しくしている。


だから、自分にも優しくしてもらえると期待してしまったのかも。


気に入らない相手なら見殺しにするくらい冷徹な面もあるのだけど。

国王は優しいだけでは務まらないのだから。


ぐったりしているレオンの髪を撫でていたわっていると、

執務室にアミーナが入ってきた。


後宮の報告に来たのだろう。


「俺が出て行った後、どうだった?」


「陛下がいなくなってからはおとなしく騎士の指示に従っていました。

 あきらめたのかと思っていたのですが……」


「どうかしたのか?」


「賄賂を受け取った見返りが欲しいと。

 マノン様から指示がありました」


「なんだと?」


最近、マノン様がアミーナとルミエに賄賂を渡していたのは報告されていた。

だが、これまで何も指示されていないと聞いていた。


どんな指示がされたのか報告を受け、

レオンとお兄様がため息をついた。


「まったく……愚かだな」


「ああ。こんな作戦うまくいくと思っているんだろうか」


「どうせなら、途中までうまくいっていると思わせよう」


「そうだな」





その日の夜は早めに就寝することになった。

いつもよりも厚い生地の夜着を着て、レオンと寝台に入る。


たわいもないことを話していると眠くなってきて、

ついウトウトとしてしまう。


まだかなと思っていたら、ドアの外でざわついているのがわかる。


「……来たな」


「やっと来たのね」


眠たい目をこすりながら、ドアが開けられるのを待つ。


少しして、ドアが開けられて、うす暗い部屋の中を誰かが入ってくる。


「……レオンハルト様……どちらにいらっしゃいますの?」


その誰かが寝室に入ってこようとした時、パッと灯りがついた。


「え?」


それと同時にヒュルヒュルという風のような音と、

女性の悲鳴が聞こえた。


「捕まえたか?」


「ああ、捕まえたぞーこいつだろう?」


ガイオからの報告が聞こえて、レオンは隣の部屋に行った。

私は行かないようにと言われているけれど、どうなったのか気になってしまう。

寝室との境の壁に身体を隠すようにしてこっそりと覗く。


そこには縄でぐるぐるに縛られて倒れているマノン様がいた。


「れ、レオンハルト様、どういうことですか?」


「いや、どういうことというか、なんでここにいるんだ?

 マノン嬢が王宮にいるのも、俺の部屋に入ってくるのもおかしいだろう」


「私は……最後にどうしてもレオンハルト様のおそばにいたくて」


「お前の気持ちなんてどうでもいい。これは不法侵入だ。

 護衛の騎士たちをわざわざ遠ざけてまで入ってきている。

 罪に問われるのは間違いない」


「そんなっ……私はただお会いしたくてっ」


マノン様が忍び込んでくるとわかって、

気配で気がつかれないように、ガイオだけ部屋の中で護衛させていた。


ガイオなら一人でもマノン様を余裕で捕まえられる。

お兄様も参加したがっていたけれど、捕まえた後に忙しくなることを見越して、

先に休んでおくようにと言われていた。


「ガイオ、外にいる騎士に引き渡してくれ」


「ほーい。貴族牢に入れておけばいい?」


「ああ」


「っ!!いや、レオンハルト様!誤解です!

 私はっ!いやよ、放して!!

 レオンハルト様!誤解なんです!話を聞いてください!!」


抵抗して叫んでいたけれど、ガイオは魔術でマノン様の身体を浮かせ、

右手だけで軽々と持ち上げるようにして部屋から出て行った。


「ここまで来て、誤解はないだろう。

 しかし、本気でこんなことするとはな」


「忍び込んだらうまくいくと思っていたのかしら」


「既成事実でも作るつもりだったんじゃないか?」


「既成事実ねぇ……?」


強力な媚薬を飲ませたりしないかぎり、

レオンがマノン様に手を出すようなことはないだろうに。


賄賂を渡したアミーナとルミエに出された指示は、

後宮を出て王宮に入れること、レオンの部屋まで案内すること、

そして部屋の前にいる護衛騎士の気をそらして立ち退かせること。


いくら賄賂を渡したとしても、

こんなこと誰が引き受けると思っているんだろう。


アミーナとルミエは指示に従うように命じられていたけれど。

本来、こんなことは成功するわけがない。


「とりあえず、寝よう。

 あとは明日、モーリア侯爵を呼んでからだな」


「はーい」


一度起きてしまったら眠れないかも。

そう思ったけれど、作戦が終わってほっとしたからか、

いつの間にか寝てしまったようだ。







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