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幸せになるために私ができること  作者: gacchi(がっち)


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44.騒動の後始末

マリアンヌ様の夫ニクラス様がレオンに謁見したのを聞いて、

リリアナ様の噂が広まっていたことを初めて知った。


「そんなに噂は広まっているの?」


「ああ。ほとんどの貴族は知っているんじゃないか?」


「本当!?」


「後宮はそれだけ注目されているからな。

 少しでもおかしなことをすればすぐに噂になる。

 後宮を出たゴーシュの妹のこともまだ噂が収まらないしな」


レオンとお兄様は知っていたようで驚く様子はない。


「ルリアナ様まで噂されているのね。

 リリアナ様は知っているのかしら」


「どうだろうな。本人は知らないかもしれない。

 レオン、ニクラス殿は香の話を聞いて、どうするって言ってたんだ?」


「ニクラスは香のことは知らなかった。

 もともとマリアンヌとは離縁したかったそうだ。

 この騒動のことを理由に離縁したいと言っていた。

 それが決定するまでリリアナ嬢には言わないかもしれない」


「離縁……貴族順位二位の次期当主が離縁するなんて。

 それこそ大変な騒ぎになるでしょうね」


「そうだろうな。俺としてはおとなしく後宮にいてもらいたかったが、

 気が変わった。離縁するなら手伝ってやろうと思う」


そういうと、レオンは隣の部屋にいたラルフを呼んだ。


「急いで報告書を作成してほしい。

 マリアンヌの香で被害を受けた近衛騎士たちの解析を頼む」


「ああ、ある程度は調べてありますが、何に使うんですか?

 それによって報告書の書き方も変わりますが」


「デュクロ公爵家の次期当主がマリアンヌと離縁したいらしい。

 マリアンヌが香を使って近衛騎士に損害を与えたことを証明してほしい」


「へぇ、面白そうですね。わかりました。

 あの香には俺とユウリも嫌な思いさせられましたからね。

 恨みを晴らさせてもらいます」


「おう、好きにしていいぞ」


あの香のせいで三日間寝込むことになったのを恨んでいるらしく、

ラルフはにやりと笑って部屋から出て行った。



その四日後、提出された報告書には、

香によってもたらされた被害が詳細に書かれ、

異動になった近衛騎士からの訴えまで添付されていた。


「出世の道を閉ざされたんですからね。

 相当恨まれているようですよ」


「だろうな。あの香の影響が強く出る者がいるというのは本当か?」


「はい。魔力の多いレオン様にはほとんど効果ありませんでしたよね?

 ですが、俺とユウリは寝込むほど体力を削られました。

 そして、近衛騎士で異常行動を起こしたやつらには共通点があったんです」


「共通点?貴族で体力がある?」


「貴族でも下位貴族で、もともとの魔力が少ない者たちです。

 魔力がまったくないものには効果がないのですが、ほんの少しでもあれば違います。

 少ないものほど効果は大きく出るんです」


「それはやっかいな性質だな」


たしか子爵家出身の二人でも魔力が倍くらいになると言っていた。

それよりも下位貴族の者だったら、自分が持つ以上の魔力を増やされることになる。


「急に力が増した感じがして、自分が無敵の存在のように感じられたそうです」


「だから俺の命令に従わなかったのか」


「だと思います」


「それは危険だな……王宮内でたかれていたら、

 騎士たちが役にたたなかったかもしれない」


「危険なのはそれだけではありません。

 改めて隣国の状況を調べたんです。

 死亡事故が三件確認できました」


死亡事故!?

予想外の報告に、その場にいた誰もが驚いた。


「本当なのか?身体に害はないはずだろう」


「体質によっては害になるようです。

 もっとも、どういう理由でそうなるのか判明していませんが、

 香の匂いをかぐと体調が悪くなると生前に話していたそうで。

 状況から香のせいで亡くなったと判定されていました」


「そうか……それほどまでに危険なものを王宮内に持ち込み、

 王族に使用したのだから牢にいれてもいいほどの罪になるな」


「ええ。ただ、香が原因だとはっきりした証拠はありません。

 死亡するかもしれない危険があるものと思っていたとは認めないでしょう」


その場にはマリアンヌ様もリリアナ様もいた。

おそらくマリアンヌ様は危険だとは思っていなかったはず。


それでも罪に問うことは可能だけど、

レオンはそこまでする気はないようだった。


ニクラス様を再度呼び出し、その報告書を手渡した。

報告書を読んで香の危険性を知ったニクラス様は青ざめていたそうだ。


最悪の場合、デュクロ公爵家そのものがなくなる。

そう思ったそうだけど、レオンはそうしないことを約束した。


この報告書を使い、マリアンヌに離縁を告げればいいと。


ニクラス様は泣くほど喜んでいたそうだ。

その際、レオンに忠誠を誓っていたそうなので、

優秀な側近が増えてくれるかもしれない。




後日、マリアンヌ様は離縁され、ペルラン公爵家に帰された。


と、同時に不名誉な噂が流れていることを理由に、

リリアナ様が側妃候補を辞退することになった。


後宮を出されることになった日、

噂を知らなかったリリアナ様は泣いて嫌がったけれど、

理由を聞いて、マリアンヌ様を口汚く罵っていたらしい。


今まで自分に逆らうことがなかった義妹から罵られ、

かっとなったマリアンヌ様も応戦し、つかみ合いの喧嘩にまで発展した。


最後にはデュクロ公爵家の使用人たちが無理やり抱えて帰ることになったそうだ。


こうして後宮に残ったのは、十九歳のマノン様と十五歳のティナ様。


あと一年もしないうちにマノン様も後宮を出ることになる。

それまでおとなしく過ごしてくれるのだろうか。





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