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幸せになるために私ができること  作者: gacchi(がっち)


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42.異常行動(レオンハルト)

リリアナ嬢の部屋でたかれる香が問題になったのは、

ラルフが成分を解析してから半年ほどたったころだった。


何度も護衛で後宮入りしていた近衛騎士の様子がおかしくなった。

報告しにきた騎士団長も困った顔をしている。


「護衛につきたい者たちが争って殴り合いになったようです」


「殴り合い?どういうことだ?」


「陛下につける護衛は順番でつけることになっていたのですが、

 やけに行きたがる近衛騎士がいて……。

 護衛の枠を奪い合っていたようです」


「後宮に行きたくて殴りあいになったのか。

 人気があるとは聞いていたが、どうしてそこまで行きたがるんだ?」


後宮の中にいるのは三時間ほど。

その間ずっと俺の後ろに控えているだけだし、何が面白いんだ?


「考えられるのは側妃候補の誰かに惚れたとかでしょうか」


「聞いてみたのか?」


「一応は陛下のために集められている側妃候補ですからね。

 横恋慕しているなんて言えるわけないでしょう」


「それもそうか。

 だが、理由がわからないことには連れて行くわけにもいかない。

 殴り合っていた者たちは今後後宮へは連れて行かない。

 処罰に納得しなかった場合、王宮以外の場所へ異動させろ」


「わかりました」


近衛騎士同士で殴り合いをするなんて前代未聞だ。


どの騎士も貴族出身でしっかりと訓練をつんでいる騎士ばかり。

それが後宮に行きたいという欲求に逆らえないとは。


結局、その近衛騎士たちは離宮に異動にさせられていた。





これで落ち着くかと思っていたが、

それから三か月後にまた問題は起きた。


月に一度の面会。

リリアナ嬢の区画に行くと、嗅ぎなれてしまった香の匂いがした。


俺には効果がないとわかっていても、なんだか気持ち悪く感じる。

仕方なく部屋に入り、ソファに座ると、

いつもどおりリリアナ嬢とマリアンヌが向かい側に座る。


後宮が始まって、もうすぐ二年近くになる。

それでもまだ成人になっていないリリアナ嬢は焦っていないようだ。


後宮にいるせいか、外の情報があまり入ってこないのだろう。

社交界や夜会の話を聞きたがるため、後ろに立つ近衛騎士にも話をさせる。


今日の近衛騎士の二人は何度か来たことがあるからか、

リリアナ嬢と楽しそうに話をしている。


俺としてはリリアナ嬢と話さなくて済むから楽ではあるけれど。

俺の存在を忘れたかのような二人に、

次第にリリアナ嬢も口数が少なくなっていく。


だが、近衛騎士たちはリリアナ嬢の変化などお構いなしに話しかける。


そうこうしているうちに一時間になろうとしていた。


「時間だな。次の部屋に行くぞ」


「陛下、もう少しこの部屋にいてもらえませんか!」


「そうですよ!

 リリアナ様が陛下にお会いできるのは月に一度だけなんですよ!

 もう少しゆっくりしてもいいと思います!」


「何を言っているんだ。月に一度なのは全員がそうだ。

 まだ他の部屋にも行かなくてはならないんだ。行くぞ」


「どうかお願いです、もう一時間だけいてもらえませんか?」


「側妃候補が一人減ったのですから、もう一時間余裕がありますよね?」


こいつらは何を言っているんだ?

見れば、目が普通ではなかった。


俺を見ているようで見ていない。


護衛騎士を連れずに次の部屋に行くのはあやうい。

いくらアミーナとルミエを連れているといっても、

男手がない状態で行くのは危険だ。


一度、王宮に戻るか……。


「では、お前たちはここにいればいい。

 俺は一度王宮に戻り、別の護衛を連れていく」


「はい!」


「ありがとうございます!」


さすがに冷静になるかと思ったのに、二人は満面の笑みで了承した。


これに焦ったのはマリアンヌの方だった。

それはそうだろう。

俺が帰ったのに近衛騎士だけ残すというのは意味がわからない。


他に知られたら不貞行為をしようとしているようなものだ。


「あなたたち、陛下の護衛でしょう!

 この部屋に残ってどうするつもりなの!」


「え?私たちはリリアナ様をお慰めしようと」


「ええ、マリアンヌ様もお寂しいでしょう。

 我々で慰められるのであればと思いまして」


「けっこうよ!出ていってちょうだい!」


「そんな……私たちはお二人を思って」


「そうですよ。遠慮なさらなくても……」


「いらないと言っているでしょう!」


理性をなくしている近衛騎士には何を言っても無駄なようだ。


「なぁ、マリアンヌ。

 こいつらがこんな状態なのは、この香のせいじゃないのか?」


「っ!」


「これが隣国で流行っている惚れ薬なのは知っている。

 だが、俺には効かない。

 もめごとを起こすようなら後宮から出て行かせる」


「……申し訳ございません。

 これほど効果があるとは思っていませんでした。

 今後は使用いたしません」


「わかった。近衛騎士はすぐに回収させる」


「はい」


青褪めた顔で頭を下げるマリアンヌを見て、リリアナ嬢が驚いた顔をしている。

もしかして、香のことを教えていなかったのかもしれない。


とりあえず動こうとしない近衛騎士二人はそのままに、一度王宮に戻る。

今まで後宮に行ったことがない近衛騎士に二人の回収を命じる。


リリアナ嬢の部屋に行かないのなら問題ないと、

ユウリとラルフを連れてまた後宮に戻った。


残り二人の面会を終え、執務室に帰る。

ラルフには問題を起こした近衛騎士二人の様子を見に行くように命じた。





三日後、近衛騎士の様子を見に行っていたラルフから報告を受ける。


「今は落ち着いているようです。

 なぜレオンハルト様に逆らったのかわからないと言っています」


「軽い惚れ薬でどうしてそんな状態になるんだ?」


「あの者たちは後宮の護衛勤務に七回行っていました。

 近衛騎士の中でも回数が多かった者たちです」


「回数を重ねると効果があがるのか?」


「わかりません、レオンハルト様はそんなことないですよね?」


「ああ。少し魔力が揺れるが、そのくらいだ。

 わかっていれば、どうってことはない」


近衛騎士ならば、ある程度の魔力は持っている。

その上、体力もあるのだから、耐性もあると思っていた。


「……もしかしたら、精神的な依存性があるのかもしれません」


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