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幸せになるために私ができること  作者: gacchi(がっち)


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30.異母姉妹

「マリアンヌ夫人、ルシールに何か用でも?」


「ええ、大事な話がありますの。少し二人にさせていただいても?」


「ルシールに用があるのなら、ここで話せばいい」


「いえ、ユリウス様は遠慮してくださる?ペルラン公爵家のことですので」


「っ!」


もうすでにデュクロ公爵家に嫁いだというのに、

ペルラン公爵家の者としてここに来たらしい。


リリアナ様のこともある、何を考えているのか知りたい。


私からマリアンヌ様を遠ざけようとするお兄様の服を引っ張った。


「お兄様、少し話してみるわ」


「だが……二人きりにさせるわけには」


「じゃあ、あそこで話すから見ていて」


すぐ近くのテラスを示して、会話の聞こえない距離で見守ってほしいとお願いする。

嫌そうな顔をしていたけれど、私がそうしたいというのがわかったのか、

納得はしてくれたようだ。


「何かあれば俺の方を向け。すぐに助けに入る」


「わかったわ」


小声でやりとりしたあと、マリアンヌ様の前に立つ。

薄茶色の髪に青い目。

ペルラン公爵夫人にそっくりの容姿。


公爵夫人に殴られたり手をふまれたことは忘れていない。

だけど、マリアンヌ様を見て怯えたりはしない。


「ペルラン公爵家の休憩室にご案内いたしますわ」


「いえ、その必要はないわ。そこで話しましょう」


私が素直についていかないとわかったからか、

マリアンヌ様のこめかみがぴくりとした。


「大事な話なので、個室でお話ししたいのですが」


「でもね、私は国王の婚約者なの。

 護衛の目の届かない場所に行くことは許されないわ。

 それでも個室に連れて行きたいというのなら、レオンの許可を得てからにして」


「……わかりました」


さすがにレオンに言えば許可されないとわかるのか、

おとなしくテラスへと向かう。


ここならお兄様のいる場所から見えるし、

呼べばすぐに駆け付けられる場所に近衛騎士もいる。


さて、何を言いたいのだろうかと待っていると、

マリアンヌ様の表情ががらりと変わるのがわかった。


夜会の会場からは見えない位置。

この辺はリリアナ様とは違うといったところか。


「私のことはお父様から聞いているわよね?」


「何を?」


「私があなたの異母姉だということよ」


異母姉妹だというのは知っているけれど、特にペルラン公爵から言われたことはない。


「いえ、何も聞いていないわ」


「お父様が言い忘れていたのかしら」


「まぁ、聞いていたとしても興味はないけれど」


「……あなたにはいろいろと言いたいことがあるのよ。

 どうしてアルベール公爵家の養女になっているのよ。

 あなたはペルラン公爵家の娘でしょう!」


「もう私はペルラン公爵家とは関りはないわよ」


「そんなわけないでしょう!お父様の娘なのだから!」


血のつながりだけはなかったことにはできないけれど、

ペルラン公爵家のことならもう関わりたくない。

黙っていたら、マリアンヌ様がため息をついた。


「ねぇ、ペルラン公爵家が謹慎になったのはわかっているの?」


「ええ。三年間の謹慎なのでしょう?」


「わかっているのなら、レオンハルト様にお願いしなさい。

 ペルラン公爵家の謹慎を解くようにと」


「……なぜ、私がそんなお願いをしなくちゃいけないの?」


呆れたのが声に出てしまったら、マリアンヌ様にキッとにらみつけられる。


「愛人の娘なのにペルラン公爵家の娘として認めてあげているのよ!?

 本来なら正妻の娘である私と対等に話すこと自体おかしいのに!

 拾ってあげた恩を返すためにも、ちゃんと役に立ちなさい!」


「拾ってあげた?ふうん。そういう風に思ってたんだ」


「違うというの?どうせ親に捨てられたのでしょう?」


親に捨てられたか……そうかもしれないけれど。

ジョアン公爵は私の存在を知らなかったのだし、

突然現れた血のつながっていない私を娘だとは思えなくて当然だ。


「親に捨てられたというか、ペルラン公爵が責任を取らされただけでしょう?

 元王女を寝取っただなんて、公に知られたらどうなることか」


「っ!!」


「謹慎処分だけで済むと思っている方が間違っているわ。

 アンペール国にまだ知られていないから謹慎で済んでいるのよ。

 私とレオンの婚姻が近づけば、黙っていることはできないわね」


「……そんなのはあなたが何とかしなさい!」


「私が?どうして?」


「お父様の娘でしょう!?」


「会ったこともないのに、薬を使われてまで、

 むりやり隣国から連れ去られて来たのに?」


「それが何だというのよ。どうせあなたに行き場なんてなかったでしょう。

 愛人の娘なのに引き取ったお母様に感謝するべきだわ!」


「ふうん」


たしかに行き場はなかった。戸籍上の父親にも拒絶されたようだし。

私がただの愛人の娘なら感謝したのかもしれないけれど。


「私はアンペール国王の姪なのよ?

 黙って他国に連れてきていいと思っているの?」


「それは……」


「いずれ、問題になるでしょうね。

 その時、ペルラン公爵家がどうなったとしても、私は庇う気はないわ。

 あなたの母親に殴られたりしたもの。助ける理由はないわね」


「っく!!」


ようやく自分の思い違いがわかってきたのか、マリアンヌ様が青褪めていく。

それでも私を見下したい気持ちは変わらないのか、にらみつける目は緩めない。


「……ペルラン公爵家の娘として動くのであれば、

 このまま正妃でいることも許してあげるつもりだったけれど、

 もうあなたのことは敵だと思うことにするわ」


「ペルラン公爵家の娘だと思わなくていいわ。私も思えないもの」


「……リリアナが側妃になったあかつきには、

 あなたを形だけの正妃にしてみせるわ。

 その時に後悔しても遅いわよ」


「そう。楽しみにしているわね」


憎々しげに言うマリアンヌ様ににっこり笑いかける。

レオンがリリアナ様を側妃にする妃なんて来るわけがない。


その自信があるからか、マリアンヌ様が何を言っても不安はなかった。


何を言っても怯まない私にマリアンヌ様がイライラしているようだけれど、

これ以上話す気はないようだった。

マリアンヌ様はくるりと背を向けて行ってしまう。


話が終わったのを見たお兄様がすぐに駆け寄ってくる。


「大丈夫だったのか?」


「ええ。問題ないわ。話の内容はあとでレオンがいる時に一緒に聞かせるわね」


「ああ」



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