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幸せになるために私ができること  作者: gacchi(がっち)


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29.話したくない相手

公爵夫妻の後ろには次期当主とその妻のマリアンヌ様。

そして白いドレスを着たリリアナ様。


そういえばリリアナ様は十五歳だった。

これが夜会デビューになるらしい。


先日側妃候補のお茶会の時にも思ったけれど、

リリアナ様は勝気な性格のようだ。


レオンに見惚れていたようだけど、

私と視線が合った瞬間、顔が歪んだのがわかった。


負けないわ、と言いたいのが丸わかりな顔に、

見た目よりも精神が幼いのかしらと思う。


こんな誰が見ているかわからない場所で、

そのような顔を見せるなんて。


案の定、レオンとお兄様はそれに気がついたようで、

不快だという気配が漂ってきている。


公爵は焦ったようにリリアナ様を連れ、目の前から去っていった。


「大丈夫か、ルシール。嫌な思いしただろう」


「いえ、あれくらい平気よ。

 リリアナ様は十五歳のわりに幼い感じがするのね」


「嫡子が生まれた後、しばらく次の子が生まれなかったせいで、

 令嬢のほうは甘やかして育ててしまったらしい」


「そう……大変そうね」


たしか次期当主であるニクラス様は二十五歳。

十歳離れた末子が可愛いというのはわからないでもないけれど。


貴族順位二位の公爵家の令嬢なのに、

あれでは婚約者を探すのは難しいかもしれない。


身分として一番合うのは筆頭公爵家のお兄様だろうけど、

今まで見合いの話にならなかったのだろうか。


「側妃候補になるということは、他と見合いの話はなかったのかしら?」


「ユリウスに断られて憤慨していたというのは聞いた。

 あとは、年齢の近い高位貴族令息というと、ペルラン公爵家になるが、

 もうすでに婚姻関係にある家だしな。

 これ以上つながる理由がないと判断したのだろう」


「なるほど……」


ペルラン公爵家の嫡子マルティンは異母兄だが会ったことはない。

ただ年齢が十二歳だというのは知っている。

リリアナ様より三歳年下というのは相手として難しい。


ついでに私の件でペルラン公爵家は貴族順位が下がってしまっている。

マリアンヌ様のことがなくても、嫁ぎ先としては認められないのかもしれない。


その後は順調に挨拶が進むけれど、

私のことを正妃として認められない者も多いようだ。


レオンには挨拶しているが、私の存在は無視している。

すぐにレオンに気がつかれて警告されるけれど、不満そうなのがわかる。


「レオン、あまり強く注意しなくていいわ。

 すぐに認めてもらえるとは思っていないから」


「注意しないわけにはいかないぞ」


「それはわかっているけれど、口頭の注意にとどめてね」


「……わかった」


渋々といった感じだけど、一応は納得してくれたらしい。


初めて会う十歳の他国の令嬢を、

自国の王妃候補として認めろというのは無理があるのだから。


レオンをなだめながら挨拶を受けていたけれど、

次に現れた者たちを見て気を引き締める。


来たのはモーリア侯爵家だった。

侯爵と夫人、そして嫡男とマノン様。


マノン様は水色のふわりとしたドレスを着ていた。

フリルの多い可愛らしいドレスがとてもよく似合っている。


侯爵の挨拶が終わったところで、マノン様が許可なくレオンに話しかけた。


令嬢としては少しはしたない行為ではあるが、

マノン様がレオンに話しかけるのはめずらしくないのか、

周りの貴族たちは特に反応しない。


「貴族たちの挨拶が終わったら、またお話ししてくださいね」


「いや、マノン嬢と話す時間はない」


「え……?」


マノン様は断られると思っていなかったのか、満面の笑みのまま固まる。


これまでの夜会では後で話すこともあったんだろうな。

きっとリアーヌの思い出とか話していたんだと思う。


信じられないという顔をするマノン様に、

レオンがもう一度はっきりと断る。


「わざわざマノン嬢と話す時間をとる必要はないだろう。

 次の者が待っている。早く動いてくれ」


「……マノン、行こう」


先日のこともあるからか、侯爵はマノン様の腕をひいて連れていく。

ここでマノン様がリアーヌの名を出せば処罰されかねない。


どうしてと言いながらマノン様は去っていった。


「あきらめると思うか?」


「いや、無理でしょうね」


「そうか。護衛の者を多くするか」


レオンとお兄様が対応を話し合っている。


可哀想かもしれないけれど、これ以上はマノン様のためにならない。

近づけないようにするのが一番だと私も思う。


それからは側妃候補の家に質問されることはあったけれど、

特に問題になるようなことはなく挨拶が終わる。


ここで、本当ならレオンと踊るべきなのだけど、

残念ながら十五歳になるまで踊らないことになっている。

本当に残念だけど、身長差がありすぎるからだ。


レオンが他国の外交官と仕事の話をしている間、

お兄様と王族用に用意された席で話しながら待つ。


さっきから令嬢たちがこちらをちらちらと見ているけれど、

お兄様にその気はないようだ。


「お兄様は婚約者を探さなくていいの?」


「今のところは無理に探す気はないな。

 ルシールが落ち着かないとそれどころじゃない」


「そんなことを言ったら、あと八年は探せないじゃない」


「そのつもりだよ。

 陛下の子と年齢を合わせたほうがいいしな。

 他の貴族もそれを狙って今すぐに婚姻は避けると思う」


「あ……それはそうね」


レオンの子と年齢を合わせるのは、生まれたのが令息なら側近に、

令嬢なら次の妃に選ばれる可能性があるからだ。


年齢差があれば、どちらにもなれない。

高位貴族ならなおさら、レオンの子に年齢を合わせようとするはず。


となると、不利なのはデュクロ公爵家だ。

二十四歳のマリアンヌ様ともうすでに結婚してしまっている。


次の妃を狙えないこともあって、リリアナ様を側妃にしたいのかもしれない。


貴族家はそれぞれに思惑があって動いている。

それを見極めるためにも夜会での交流が必要になる。


やはり、お兄様が私のそばにずっといるというのはまずいのでは?


「お兄様も他の当主たちと話してこなきゃいけないのでは?」


「もう少しすればレオンが戻ってくるだろう。

 そうしたら話してくるよ」


レオンが戻るまで私から離れるわけにはいかないらしい。

仕方ないとあきらめ、レナが用意してくれた飲み物を口にする。


「ルシール様のお時間を少しいただけるかしら?」


その声に振り返ったら、マリアンヌ様がにっこり笑っていた。

話しかけられたのは私ではなく、お兄様にだった。


「マリアンヌ夫人、ルシールに何か用でも?」


「ええ、大事な話がありますの。少し二人にさせていただいても?」


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