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幸せになるために私ができること  作者: gacchi(がっち)


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3.閉ざされた部屋

物心がついた時には一人で部屋にいた。


もっと幼い頃は泣くこともあったのかもしれないけれど、

泣いても意味がないことに慣れすぎていた。


一日三回乳母のヘレンが来て、週に二度ほど家庭教師のマリアンに教わる。

そして、たまに顔を見せる真っ赤な髪のお母様。


それが当たり前だと思っていたけれど、

マリアンに文字を習い、いろんな本を読んでいくうちにおかしいと気がついた。


この部屋には窓がない。

そして、私はこの部屋から外に出たことがない。


「ねぇ、マリアン。どうしてこの部屋には窓がないの?」


「どうしてでしょう……」


「ねぇ、この部屋の外に出たいわ」


「それは……ヘレンに言ってください。私にはその権限がありません」


「ふうん」


いつもなら何を聞いても答えてくれるマリアンが、

その時は何も教えてくれなかった。


マリアンが帰るとヘレンが食事を運んでくる。


一日三回、食事の時間は決まっていた。

食事を運んできたヘレンと一緒に食べる。


ヘレンは乳母であり、侍女であり、礼儀作法の先生でもあった。

だから、食事はマナーの勉強でもある。


夕食が終わって湯あみを手伝ってもらいながらヘレンに問いかける。


「ねぇ、ヘレン。この部屋を出てみたいのだけど」


「……申し訳ありません、ルシール様。

 それだけは言うことを聞くわけにはまいりません」


「どうして?」


「メリザンド様の許可がおりません」


私がこの部屋に閉じ込められているのは母親のせいらしい。


「じゃあ、お母様に聞いて!今すぐ!」


「……お伝えしますが、すぐには無理でしょう」


「どうしてよ」


「本日は夜会のため王宮にいらっしゃいます」


「……王宮?」


その時、初めて母親が公爵夫人という身分なのを知った。

そして、元王女だということも。


一度知ってしまえば疑問だらけだった。

公爵家の娘がどうしてこのような育てられ方をしているのか。


本の中の公爵令嬢は幼いころから王族や他の令嬢と交流をしている。

お茶会というもので社交をすると書かれているのに。


私は誰とも交流せず、令嬢教育だけを受けている。

これは誰の指示でこうなっているのだろうか。


お母様なのか、お父様なのか。それとも王家?


マリアンやヘレンは口止めされているらしく、何も教えてくれない。




八歳になったころ、あまりにも行動を制限されることに腹を立て、

マリアンと口論になってしまった。


「ああ、もう嫌よ!

 外にも出られないのに、他国の言葉なんて覚えてどうなるの!!」


「いずれ必要になりますから……」


「その理由すら教えてくれないのに!!」


あまりに腹がたったのか、目の前が真っ赤になった。


「ルシール様!!落ち着いてください!!」


「うるさいっ!」


落ち着いた時にはマリアンがやけどを負っていた。

興奮した私は魔力暴走を起こして、家具などを燃やしてしまったらしい。


「……ごめんなさい、マリアン」


「いえ……ルシール様が悪いのではありません。

 メリザンド様が火属性なのですから、ルシール様も火属性かもしれないと、

 こちらが気をつけておかなければならなかったのですよ」


治療を終えて戻ってきたマリアンに謝ると、そんな風にため息をつかれた。


「火属性って、何?」


「これからは魔力についても教えますね。

 ルシール様は興奮しても魔力を暴走しないように制御を覚えなくてはなりません」


「そうすれば、あんなことはなくなる?」


「ええ、大丈夫です。一緒に訓練しましょう」


そう言って微笑んでくれたマリアンだったけれど、

それから何度も魔力を暴走させる私に嫌気がさしたのか、

三か月が過ぎた頃から来なくなってしまった。


「私のせいだよね」


「ルシール様のせいではありません。マリアンは結婚が決まったのです。

 そのためにこちらに来ることができなくなったそうです」


「結婚?」


「ええ、そうです」


「結婚って好きな者同士がするのでしょう?」


「……ええ、そうですね」


本の中では王子様が他国の王女様に一目ぼれしていた。

いつか私にもそんな相手が見つかるんだろうか。


この部屋を出て、誰かと。


新しい家庭教師は見つからないのか、誰も来なくなってしまったけれど、

私は一人で本を読んで勉強していた。


マリアンがいなくなって、反省して嫌だった他国の言葉も覚えるようになった。

それに、いつか出会う相手がこの国の人じゃないかもしれないからと。


そんな風に十歳になるまで過ごしていたら、急にヘレンが顔を出さなくなった。

朝食を持ってこなかったことに気づいたのは、昼近くになってからだった。


ヘレンが来なかったから、部屋が暗いまま。

自分で灯りをつけて、昼食が来るのを待った。


だけど、昼食にも来ない。

ヘレンに何かあったのかもしれない。


不安に思っていたら、夕食が過ぎた頃になってヘレンが来た。


「ヘレン!」


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