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幸せになるために私ができること  作者: gacchi(がっち)


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23.自分の中の欲望

最近、どうにもレオンの様子があやしい。

これは何かあるなと思いながらも、聞いていいものなのか悩む。


ただ、何かあるのなら、聞かされる前に知っておきたい。


「お兄様、最近レオンの様子がおかしいの。何か知ってる?」


「……そのうち本人が言うと思うぞ」


「でも、その前に知っておきたいの。

 嫌なことだった場合、困らせたくないから」


「もしかして、予想できているのか?」


顔色を変えたお兄様を見て、やはりそうかと思う。


「側妃の話が出たのね?」


「出たというか。複数の貴族家から嘆願書が来たらしい。

 早急に側妃を娶ってほしいと」


「そう……」


「私はルシールの後見になっているから話し合いから外された。

 だから、レオンがそれをどうするつもりなのかは知らない」


「そういうことなのね」


どうりでお兄様だけが私室にいる時間が増えたわけだ。

今、この時にレオンは側近たちと側妃のことを話し合っている。


「そのうち決定したら話すつもりなんだと思う。

 決まってもいないのに話して心配させたくないんだ」


「それはわかっているわ」


わかっている。

けれど、側妃を娶ることが仕方ないことだとしても、

急にレオンから言われたら動揺してしまうかもしれない。


正妃になるのだから、堂々としていなければいけないのに。

側妃なんて娶らないでと泣いてしまいそうで……怖い。


お兄様が私室から出て行った後、一人にしてもらう。

ほんの少しだけでも、一人で考えたかった。


「あと八年……長いわ」


私がレオンの妃になるのは学園を卒業した後。

十八歳になるまでレオンが誰も娶らないでいることはできない。


身体が弱くて子を望めなかったリアーヌの時と同じ。

これはレオンと私にはどうしようもないことなのだから。


レオンが他の女性を妃として愛するのを認めなくてはいけない。

生まれ変わって、またレオンのそばに来られただけでも幸せだと思わなきゃ。


お父様にもお母様にもお兄様にも会えた。

今度は死ぬことを心配しなくていい。


もう、これ以上ないほど幸せでしょう?


「どれだけわがままなのかしら……

 どんどん欲しいものが出てきてしまうなんて」


本当はレオンを独り占めしたい。

ルシールだけだと言ってほしい。

あの笑顔を、抱きしめてくれる腕を、好きだと言ってくれる唇を。

誰にも渡したくない。


心の奥底にしまうべき欲望をうまく隠さなくてはいけない。

だって、見せてしまったら、傷つくのはレオンだから。


私を愛しているレオンなら申し訳ないと思うだろう。

この国の王として、私を一人だけ大事にすることはできない、

そんなことは当たり前なのに。


ただのレオンでいてほしい、なんて。

この思いは死ぬまで言うわけにはいかない。


ため息をついたら、レオンが私室に戻ってくると知らせが入る。

それを知ったレナとユーリが急いで私の身支度を整えてくれる。


「ただいま。あー疲れた」


「おかえりなさい」


迎え入れると、くたびれた顔してレオンが私に抱きついてくる。

私を抱きしめると癒されるらしい。


ひょいと抱きかかえられたまま、ソファに座る。


「今日は早かったのね。夕食まで時間があるわ」


「ああ、今日はもうやる気がなくなって。

 少しルシールとのんびりしようかなと思ってさ」


「そう」


もしかして、今日話すつもりなのかしら。

複雑な思いを見せないように、レオンに抱きしめられていた。




夜になり、夕食と湯あみを終えると、レナとユーリ、護衛のジニーは下がる。

部屋の外には近衛騎士が警備しているのが、部屋の中は完全に二人きりになる。


「何か言いたいことでもあるの?」


「……ああ。側妃のことだ」


「娶らなくてはいけないのね?」


「そうだ」


レオンは隠す気がないのか馬鹿正直に言う。

私は、平気そうに見えただろうか。


「王宮の敷地内に後宮を作る」


「は?後宮?」


「側妃になりたいと言う者は全員そこに入れる」


「はぁ!?」


全員!?一人か二人なら耐えようと思ったけれど、

レオンがそんなに女好きだったなんて知らなかった。


「……私も後宮に入れ、そう言いたいの?」


「そんなわけないだろう。俺の妃はルシールだけだ」


「でも後宮を作るのでしょう!?」


「形だけだ!通うことはない!!」


「…………え?」


今、何て言ったの?通うことはない?

側妃を娶るのに、どういうこと?


「すべての貴族家に側妃候補の条件を送った。


 1、希望者は全員受け入れる。

 2、後宮に入った令嬢の身分は側妃候補とする。

 3、側妃候補だとしても夜に通うかどうかは国王が決める。

 4、側妃候補側からは国王を呼ぶことはできない。

 5、子を身ごもった者だけ正式な側妃とする。

 6、側妃候補は許可なく後宮からでることはできない。

 7、後宮に入った者は夜会の出席を認めない。

 8、後宮に入れるのは側妃候補と使用人十人まで。

 9、国王との決められた面会は月に一度。昼のみとする。


 この条件を守れるものだけ、全員受け入れる予定だ」


「……そんな側妃の条件、聞いたことないわ」


「そうだろうな。俺と側近で考えた結果だ。

 側妃候補が後宮に入った後、月に一度のお茶以外で通う気はない」


「そうなったら、そのお茶会で気に入られようとするでしょうね」


レオンが気に入らなければ閨を共にすることはできない。

側妃から呼ぶことができなければ、会う機会は月に一度だけ。

そこが勝負だと側妃候補は考えるだろう。


「わざと月に一度顔を出すと決めたんだ」


「わざと?」


「身ごもらなければ側妃になれない。

 そうなれば、いろんな手を使ってくるだろう。

 媚薬を俺に使おうとした者はその場で捕縛。

 俺以外の異性と通じて子をなして俺の子だと言い張った場合、

 その貴族家ごと没落させてやる」


「没落させたい家があるの?」


「こんな条件で側妃候補を出す家なんてまともなわけないだろう。

 俺は側妃なんて必要としていないとはっきり言うつもりだ。

 貴族家がうるさいから、仕方なく後宮に入れるのだと。

 それなのに来るのなら、冷遇されるのを覚悟して来ればいい」


にやりと笑うレオンに力が抜けていく。

……側妃を覚悟して気持ちを押し殺そうとした私の意味は。


「俺はルシールだけだ。

 リアーヌだった時は仕方ないとあきらめていたが、

 今はあきらめる理由がない。そうだろう?」


「レオン……でも、八年よ?そんな長い間待たせてしまうのよ?」


「お前がいなかった十一年に比べたら、あっという間だ」


「……ありがとう」


私を見つめるレオンに嘘はない。

うれしさで耐えきれなくて涙がこぼれ落ちる。

それをレオンは唇ですくうようにして涙をぬぐった。


「……くすぐったい」


「子どもだから閨はできないけれど、それ以外はしてもいいだろう」


「そうね……お兄様が許すなら」


「……そのうち話し合っておくよ」





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