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幸せになるために私ができること  作者: gacchi(がっち)


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20.戸籍上の父親

「来た使者というのが、ジョアン公爵なんだ」


「戸籍上の私のお父様ね。会えばいいの?」


ジョアン公爵とは一度しか会っていない。

ペルラン公爵が私を引き取りに来た時だ。


私の存在は知っているはずだけど、わざわざ確認しに来たの?


「……向こうが何を考えているのかわからないが、

 ルシールの存在を認めさせないと正妃にできないからな……。

 仕方ない、会わせるか」


「レオンハルト様、私も同席しましょう」


お兄様も心配なのか同席すると言い出した。


「よし、ジョアン公爵は応接室に待たせている。行こう」


大ごとにしたくないのか、謁見室ではなく応接室で会うようだ。


向こうの出方がわからないし、下手に他の貴族に聞かれて、

私が偽物の貴族令嬢だなんていわれても困るかららしい。


「まぁ、素直に認めるとは思ってなかったけどな」


「そりゃあ、向こうは王家の意向のまま動く令嬢を嫁がせる予定だろうし、

 もうすでに準備は始められているだろうからね」


「それをわかってて受け入れるわけはないがな」


アンペール国としては、王家の言うとおりに動く妃を送り込みたいわけで、

王族が知らない私なんかが正妃になられたら困るんだろう。


だからといって、あきらめる気はないけど。

レオンの妃になるのは私なのだから。


三人で応接室に入ると、ジョアン公爵ともう一人若い令息もいた。

部下でも連れてきたのかと思ったら、違った。


「待たせてすまない、アンリ第二王子、ジョアン公爵」


「いえ、そちらの令嬢が?」


レオンに返答したのは若い令息のほうだった。

アンリ第二王子と言った?では、この人は私の従兄弟になる?


アンペール王家らしく金髪で青目。

二十代前半くらいに見えるけれど、しっかりと鍛えられた身体。

王子というよりは護衛騎士に見える。


レオンに背中を軽く押され、前に出て礼をする。

公爵令嬢だとしても、相手は王族。しっかりと頭を下げて待つ。


「顔をあげていい。君の名前は?」


「お初にお目にかかります。ルシールと申します。

 母メリザンドから生まれましたが、父とは一度しか顔を会わせておらず、

 その時にペルラン公爵家に養子に出されました。

 現在はアルベール公爵家に後見されております」


「叔母上にもう一人娘がいるとは聞いていないし、

 ジョアン公爵は君のことを知らないと言っている。

 本当はどこの生まれなんだ?」


「そう言われましても、私はジョアン公爵家の別邸で生まれ育ちました。

 お母様とはずっと一緒の屋敷にいましたので、

 その辺の事情はお父様が知っているはずです。

 ねぇ、お父様。ああ、ジョアン公爵と呼んだ方がよろしいでしょうか?」


「……私は君のような娘は知らない」


苦虫を嚙み潰したような顔でジョアン公爵は言うけれど、

それならどうしてペルラン公爵に私を引き渡したのだろう。

隠したいのなら、あのまま別邸で過ごさせておけばよかったものを。


もしかして、ただ単純に娘として引き取っただけだと思っていたのかしら。

よく考えれば、元王女を寝取ったと言っているようなものだもの。

公表するとは思わなかったのでしょうね。


私とジョアン公爵との話し合いでは埒が明かないと思ったのか、

口をはさんだのはお兄様だった。


「まぁまぁ、ジョアン公爵。こちらは契約書を持っていましてね。

 ジョアン公爵とペルラン公爵の署名入りです。

 ルシール嬢を引き渡す、という親権移籍届け、覚えていますよね?」


「……」


「その書類を見せてもらえるだろうか?」


「ええ、どうぞ」


お兄様が書類を渡すと第二王子が確認してうなずいた。


「これは間違いないな。公爵の署名は見たことがある。

 ……娘だとどうして認めなかったんだ」


「……」


どうしても経緯を話したくないのか公爵は黙ったまま。

第二王子もどうしていいか困っているように見える。


「どういう経緯で次女を引き渡すことにしたのかはわかりませんが、

 複雑な事情があるのでしょう。認めたくないのも致し方ありません。

 ですので、こちらの国では魔術具を開発させているところです。

 魔力で血縁者かどうか鑑定できるものを」


「え?そんなものができるのか?」


「魔力鑑定できるのですから、できないことはないでしょう。

 今、血縁者の鑑定ができるように精度をあげているところです。

 あと三年もあればできあがります。

 ルシール嬢が成人するまでには間違いなく完成するでしょう」


「おお、それなら!」


第二王子は魔術具に興味を持ったようだけど、

やはりジョアン公爵は認めたくないようだった。


「だが、妻はもう亡くなっている!鑑定するのは無理でしょう!」


「いや、ジョアン公爵夫人が亡くなっていても問題ない。

 同盟での条件は王家の血をひく、ということだ。

 王族の誰かと鑑定すれば問題ない。

 たとえ夫人の子でなくても、王家の血をひくかどうかわかればいいのだから」


「……そうですか」 


私が王家の血をひくかどうかだけを調べるのなら、

父親が誰かは調べられないと思ったのか、ジョアン公爵がほっとしたのがわかった。


「それでは、その鑑定結果が出るまでは我が国としては認めない。

 それでかまわないでしょうか?」


「ああ、それでもいい。

 どちらにせよ、アンペール王家の血を引くもの以外を正妃にした場合、

 同盟の契約書にかけられた魔術が発動することになる。

 そうなれば我が国が違約金を払わなくてはならない。

 危険性をわかった上で偽物を婚約者にするとはそちらだって思っていないだろう?」


「それは……まぁ、そうですね。

 わかりました。正式には認められませんが、黙認しましょう。

 正式な婚約は鑑定した後にする、ということで」


「それでかまわない。ありがとう」


レオンと第二王子はにこやかに握手を交わすけれど、

ジョアン公爵は笑顔を見せることはなかった。


ここで第二王子が納得したとしても、

アンペール国の王家が納得するとは思えないけれど。





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