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幸せになるために私ができること  作者: gacchi(がっち)


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16.新しい護衛

正式に正妃候補として公表されたことで、

私に妃教育の教師がつけられることになった。


リアーヌだった時に基本的なことは習っているので、

再度習う必要はない。


そのため、ルシールはアンペール国で王族教育を受けてきたということにし、

妃教育については習得度を確認してから足りない分を補うという形になった。


「手配はしたが、早くても開始は二週間後になる」


「二週間後ね、わかったわ」


その間はすることがないけれど仕方がない。

レオンとお兄様は仕事があるので長時間一緒にいることもできない。


私室の中で本を読むのも楽しいけれど、二週間は長いかもしれない。


「あぁ、そうだ。その前に公爵領に行ったジニーが帰ってくるはずだ。

 そうしたらルシールの護衛につかせる」


「え?いいの?」


ジニーはお兄様の一番信頼されている侍従だ。

それなのに私につかせていいのかな。


「ユリウスがルシールを王宮にいさせることを心配している。

 自分が信頼している者をそばに置いておきたいんだろう。

 ありがたく受け取っておけばいい」


「そうなのね……わかったわ。

 お兄様にお礼を言わなくちゃ」


「休憩時間になればここに来るだろう」


お兄様も王宮内に部屋を用意してもらうと言っていたけれど、

手続きには時間がかかるらしい。


そのため、夜遅くまで王宮に残り、早朝にやってくる。

朝、昼、お茶の時間、帰る前の四回は必ず会いに来てくれる。


「いくら後見だからといっても来すぎじゃないかしら?

 おかしな目で見られていないといいけれど」


「大丈夫だ。それもあって、俺がいる時しか来ていないだろう」


「そういえば」


一応はお兄様も気にしていたらしい。

陛下の婚約者と不貞しているなんて噂になったら困るものね。


「そうだ。妃教育が始まる前に何かしたいことはないか?」


「したいこと?」


「ああ。時間はあるし、身体も丈夫なんだ。

 やりたかったこと、ないのか?」


「そういうこと……」


リアーヌの時はほとんど外出はできなかった。

何度か王宮に来たことがあるくらいで、お茶会も公爵家でしかしたことがない。


できなかったこと、行けなかった場所……。


「王都の街を見てみたいわ」


「街か。行ったことなかったな」


「ええ。ルシールも行っていないの。

 一度でいいから、お買い物やお店でお茶を飲んでみたいわ」


お茶会で令嬢たちが楽しそうに話していた。

おそろいでリボンを買った、カフェでお茶を楽しんだ、焼き菓子の美味しいお店は、

聞くたびに自由に出かけられるのがうらやましかった。


「よし、行こう。だが、自由には歩けないかもしれない。

 俺とユリウスも一緒となると、貸し切りにしなければならない。

 あらかじめ行く場所を決めなくてはならなくなる。それでもいいか?」


「ええ、いいわ!どんな場所なのかわからないんだもの。

 決められたところでかまわないわ」


初めてのお出かけにうれしくて飛びはねたくなる。

そんなことはしてはいけないとわかっているから抑えるけれど、

きっとこの衝動はルシールのもの。


私はリアーヌであって、ルシールでもあるのだと、

最近よく感じるようになった。


思い出した時はリアーヌだった記憶が強かったけれど、

今はどちらでもなく、どちらも自分だと思える。


レオンとお兄様もそれには気づいているはずだけど、

何も言うつもりはないようだった。



三日後、お兄様からジニーが戻ってきたことを聞く。

ジニーは無事にお父様とお母様と話をしてきたらしい。


「ジニーから話を聞いた母上は泣いて喜んでいたそうだ」


「お母様……」


「父上も喜んで、母上に早く身体を治して王都に行こうと言ったらしい。

 母上もリアーヌに会う前に死ねないと言って、生きる気力を取り戻した。

 ただ、ずっと寝込んでいたわけだから、すぐには戻らない。

 ある程度回復したら戻ってくるそうだよ」


「よかった……」


王都に戻れないほど体調が悪いと聞いて心配していた。

とりあえず心だけでも元気になってくれてよかった。


あとはゆっくりでも回復してくれたらいい。


「父上には公爵家の養子の件も伝えてある。

 戻ってきたら、ルシールをアルベールの籍に入れよう」


「はい、お兄様」




次の日、レオンとお兄様がジニーを連れてきた。

背の小さいジニーは子どものようにも見えるけれど成人している。

あまり背が高くならない一族出身だからと聞いている。


十一年ぶりに会うジニーはそれほど変わったようには見えない。

私のことは聞いているはずだと思い、以前のように声をかけてみる。


「ジニー、久しぶりね。リンは元気?」


「……お嬢様……本当にお嬢様なのですね」


みるみるうちに茶色い目が涙でいっぱいになる。


「泣かないで。また会えてうれしいわ」


「はい……私もうれしいです。リンは嫁ぎました。

 三年前に子どもも産んでいます」


「そうなの!?それはおめでとう!」


リンというのはジニーの妹だ。

私の遊び相手として屋敷に連れて来られていた。

私の二つ上だったから、二十五歳。結婚して子どもがいてもおかしくない。


「あぁ、本当によかったです。

 ユリウス様が急に元のようになられたので、何があったのかと思っていましたが、

 こんな素晴らしいことが起きるなんて……神に感謝しなければ」


「ジニー。これからはルシールの護衛として頼むな」


「はっ!陛下、お嬢様の護衛役、拝命いたします」


「ルシールの護衛は他に適任がいないか探している。

 さすがにジニー一人では無理だからな。

 あと、侍女も増やす予定だ。

 それまではこの三人でルシールを守ってくれ」


「かしこまりました」


たしかに侍女二人と護衛一人では足りないのかもしれない。

だけど、基本的に王宮にいるし、部屋の外に出る時はレオンかお兄様もいる。

急いで人を増やす必要はなさそうだ。





レオンと約束した街に出る日。

待ちきれなくて出かける三時間前から準備を始める。


「出るのは三時間後だから、まだ慌てなくてもいいんだぞ?」


「わかっているの。でも、じっとしていられなくて」


「そんなに楽しみなのか。まぁ、ユリウスが来たら早く出てもいいかな」


「予定は決まっているのでしょう?そんなことしていいの?」


「早目に街に行って、馬車で回ってみるくらいならいいだろう」


「ありがとう!」




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