↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
そんなバカな(仮)  作者: 作為の肴
彩枝星
PR
6/8

病院にて

市役所から病院へ行ってから3日が経った。それはそれは怒涛の日だった。

入院した直後、私は病院という単語から連想する様々な検査を行った。X線検査に採血、胃にカメラも入れたし、鼻に綿棒をぐりぐりされた。検査開始から5時間、担当医になったという吉田先生と対面した。吉田先生はすらっとしたエリート中年のような感じの人だった。仕事のできる係長のような見た目で背は高く、175センチはあると思う。理智的な顔つきで、今も私のカルテだろうか、真剣にパソコンを眺めている。

「これでやっと検査は終わりでいいんですよね。大変だったぁ〜。」

私がそう言うと、吉田先生は白々しく、驚いた顔でこちらに体を向けた。

「何を言っているのですか増田賢二さん。今日はキリがいいので一時休憩としますが、まだまだ検査出来る項目はたくさんありますから。人類史上初の若返った人間ですよ?研究のためにいくらでも資料が必要です。」

「私の事をモルモットか何かだと思ってません?」

私は疑惑の視線をくれてやった。

「もちろん、これは任意ですよ。誰であれ、人を縛り付けける事はできませんから。ですが、実際問題、こんな事、前例が無いのですよ。貴方がどういったプロセスでそうなったのか。そもそもどういった状態なのかを知るために私たちは検査しているのです。貴方もそれを知りたいからわざわざ市役所を通してまでこの病院に来たのでしょう?」

ぐうの音もでない。しかし、それは少なくともこの人にとっては建前でしかないだろう。一見、平然としているようにも見えるが先ほどカルテを見ていた目は興奮で血走っていたし、何なら今も私の事を興味深い実験物を見るような目で見ている。この人の本質は生粋の研究者と私は見た。

このS病院は最近にあった、国立の理系大学三校による大合併によって出来た場所だ。近くにキャンパスもある。この病院は大学と大規模な連携をしていて、医学部の学生を受け入れていたり、患者の病症の研究なども任意だが行われている。住みやすいが都心と地方都市との間に出来た空白地帯と言えば良いだろうか、田舎らしさも残るベッドタウン。それがこのS市だった。そんなこの場所に突如出来たこの建物はS市の発展の象徴としてニュースなどでも多く取り沙汰されていた事を覚えている。多分、この先生は大学よりの人なんじゃないかと思う。そんな人がいるかは分からないが、医者が本業と言うより、人の体を知るために医者の免許を持っている感じ。多分、『実地で学べる事のほうが多い!』とか言ってたんじゃ無いだろうか。

「いろいろ予定のあった技師や看護師を動員してますからね。大半の関係者が貴方と同じ事を思ってますよ。」吉田先生は苦笑いして言った。

「それは悪いことをしてしまったかな。」

「まぁ、若返り云々の話が嘘だったとしたらみんな激怒するでしょうが、本当なら一大事ですからね。みんな分かってやってますよ。嘘だったとしても検査代は最初に確認した通り払って貰いますし。健康な二十代男性のデータをここまで精密に取れる機会はなかなか無いのでそれでも私的には嬉しいですが。」

「「わっはははっ」」

2人で仲良く笑いあった。


次の日は体力テストを行った。この病院にはリハビリステーションというものがあって、それがある運動館と言う所に行けば、器具は一通りあるという。本館と運動館を繋ぐ渡廊下を通って、関係者以外立ち入り禁止と書かれている扉を抜けると、そこは本当にリハビリに使うとは思えないダンベルや、一階にはプールなどと施設がたくさんあった。ここは大学と市と病院の共同でお金を出して管理しているらしい。幾つか外部組織に貸し出しも行っているとか。ダンベル持ったおじいさんとかリハビリ何て要らないだろ…とも思っていたので、納得した。多分予約をした外部の人なのだろう。リハビリステーションは病棟から1番近い通路の近くから行くらしく、ここからは行けないと言う。

「ここは公共施設も兼ねていますが、実験場という側面もあるんです。アスリートを呼んで何か測定する時などにはここを使い、それ以外は市民の運動場としてるんです。」と吉田先生は教えてくれた。

体育館のような場所を広々と使った体力測定では、信じられない結果を出した。若い時どころか、スポーツマンを超えた結果を叩き出した。前屈や180°開脚が余裕で出来た時は、驚き過ぎて変な声がでてしまった。そして1番異常だったのは、朝から昨日と同じく夜5時くらいまで激しい運動を行ったはずなのに、ほとんど疲れを感じなかった事だ。確かに、疲れるのだ。長距離を走る時には披露で足の感覚がなくなってくるし、頭もぼうっとして来るのだが、まだいけると思えば思うほどいくらでも動けるのだ。実際3時間走り続けた(50キロを超えた辺りで止められた。)。我慢する事は慣れている。続けると疲れを忘れ快感に変わって行くし、何より少し休めば、先程まであった疲労が嘘のように消えていくのだ。吉田先生含め、大学から計測機を持ってぞろぞろとやって来た集団が時間を追うごとに驚愕と興奮で目がキマっていた様子は少し、いやかなり面白かった。

今日も検査をするらしい。早くも血液をもう一度採取したいのだとか。さて、いつ帰れるのやら。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。