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そんなバカな(仮)  作者: 作為の肴
彩枝星
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5/8

市役所へご相談

話の流れは出来ているので後は言葉にするだけです。結構長く書けると思います。書き出していくのが手間なのですが。

園田さんが受付の方へ行ってからしばらく経った。待っている間、私はずっと周りの会話に聞き耳を立てていた。そこで分かった事に拠れば余り園田さんの予想は当たっていなかったようだ。

主に市役所に来た人たちはあの星天の事件(巷ではそう言われているらしい。多分SNSの影響だろう。)以降、溜まっていた不安が光の穴の出現により爆発した。市での対応はどうなっているのか、自分達に危険は無いのかそういう事を相談しに来たらしい。職員の方でも何度も質問されて慣れていたのか終始落ち着いた様子ではっきりと受け答えしていたので一時的だが、不安も収まったようだ。何か保証や具体的な対策をもう取れているのだろうか。些か対応が早いような気がする。実際問題、この地域だけで今相談に来た二十人程の家全てに光の穴が出現した場合、全国ではどれほどあるのかという話でもある。そこまで多ければ、もっと早く情報が届いただろうし、私も知っていただろう。そうで無いのなら、まだ情報が広まり出した段階だがやはり園田さんの家は本当に希少なものだったのでは無いだろうか。

他にもマイナンバーカードを作りたいと言った、普通に市役所を利用しに来た人たちも幾人かいた。今やらなくても良いだろうとも思うが。

そうこうしている内に、私の整理券番号が呼ばれたので受付カウンターの方へ向かった。カウンターはここまで人が来る事を考えていなかったのであろう、余り多くはなく、隣のカウンターの方の会話も少し聞こえて来るぐらいにはプライバシーというのに配慮していなかった。私はここで悩む。ここで私の若返りの事を赤裸々に果たして語っても良いのかと。ここで私の出した情報がインターネットで広まり、私の住所が特定されてしまう。ということもあるかも知れない。インターネットに疎い私は人一倍それを恐れている。幸い、受付の女性は私が来てから呆っとしていて、考える余裕はある。考えをまとめていると、女性がはっとして、緊張しているのか少しぎこちない笑顔で私に話しかけた。

「どうもこんにちは。S市役所相談カウンターです。本日はどの様な御用でしょうか。」

「こんにちは。」

笑顔で挨拶を返す。今更ながら電話での相談の方がよかったと若干後悔しているが、どうにかして個室での相談とできれば上役の人とも交えて相談したい。

「実はあの星天の事件の後、皆さんはすぐに目覚めたみたいですが私は先ほど目覚めまして。そこで奇妙な事が起きたので相談をしたいのです。出来れば個室で、周りの人には聞かれない様に。」

失礼が無いようにだが、切実さを訴えるように真剣に話す。

「分かりました。上の者に聞いてきますので、少々お待ちください。」

私の出す雰囲気が只事ではないと感じたのか、彼女はちゃんと対応してくれた。門前払いや、ここで言わなくてはいけない事になる事も考えていたが、どうにかいけたらしい。

数分程待つと、担当してくれた受付の方に個室へ案内された。一度連絡通路に出て、関係者以外立ち入り禁止と書いてある扉を抜け、幾つかある会議室のようなところに案内された。

「ここでお待ちください。」

そう言われ、待っていると彼女は部屋を出ていき、少しすると変わりに初老の男性が入ってきた。

「どうもここの職員をしている松田です。よろしくお願いします。早速ですが周りには聞かれたくない相談事というのはどういったものでしょうか。」

松田さんに今私の抱える問題を正直に伝えた。松田さんは疲れたように目頭を揉むと、

「ちなみにですがそれを証明できますか。」

と私に聞いてきた。

「これぐらいですが。」

そういいながら、そうした質問がされた時のために用意しておいた、保険証(若返り前)、証明写真(十年前の偶々残っていたもの)、アルバム(あまり無いが30代頃の数年分)を鞄の中から取り出した。二十代頃の写真は今兄貴の息子達が住んでる実家の方へ行かないとないと思うが、私の顔の変遷というのは理解出来ると思う。また、私はこうも言った。

「多分、遺伝子検査?みたいなものをやれば、若くなっただけですから、証明できるのでは無いかなとも思います。それと、この体が一体どうなってしまったのかも含めて、大きな病院で検査をしてもらいたいのです。そこの取り次ぎなども市役所さんの方でお願いできませんか。」

そう。情報を早く伝えるべきだと思ったのもそうだが、このややこしい事態を政府組織に共有する事で、いち早く検査出来ないかという思いもあった。この若返りがどの様な原理で起きているのか。それが分からなくとも、若返るために何か代償、例えば数少ない命の残り火を費やしていたりしていないのかを知りたいのだ。小説にはあるかも知れないがこんなうまい話が現実世界にある訳がないという思いがある。そういった考えを伝えると、会議するので待って欲しいと松田さんはおっしゃって、部屋を出ていった。その後、先ほど受付してくれた人とは別の男性の職員が来て、お茶を入れてくれた。受付対応やその他の忙しくなってきた業務をサボれたと言ったいい性格をしている彼と楽しく談笑していると、松田さんが大急ぎで戻って来た。

「増田さん、今から車を出しますので、国立S総合病院へ向かってください。先方も準備を始めてくれているそうです。」

S病院はこの辺で最も大きな病院だ。最近建てられたばかりの綺麗な建物と、最新の医療施設がある。中庭広い土地を使った、運動場もあるらしい。何でこんなところにと思ったが、首都圏で中枢にほどほど近く、広い土地を購入出来たのがここぐらいだったらしい。

あっ、因みに私の名前は増田賢二(65)です。

年齢は変えるかも知れません。

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