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そんなバカな(仮)  作者: 作為の肴
彩枝星
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光の穴

家から十分程歩いて最寄り駅のS駅に向かい、電車に乗る。駅はよくある都市部から都市部までの繋ぎの駅といった感じで、そこまで大きくもなく、鳩でも住んでいるのか鳥の糞や羽根が落ちている。車は5年ぐらい前に売った。自身の運転を信用できなくなったからだ。幸い、駅もスーパーも歩いて十分程の近くにある。少しキツイがスーパーの買い物だって荷車を持って行けばいい。そもそも独り身だから余り食料品を買い込まなくてもよかったのもあった。何か予定があるとしても隣駅のK駅から行く市の中心部で大抵事足りるのもある。図書館や市役所、後100均や専門店に買い物にそこそこの頻度で行くので、S駅からK駅までの定期券は買ってある。電車に乗り込むと、優先席に乗ってもよいか少し悩んだ。若返る前は普通に譲ってもらっていたのだが、これからは譲る側になるのかもしれない。若返りに少し現実感がついた気がする。今日は電車が空いていたので空いている席に座った。私はぼうっと景色を眺める。今日は休日なので平日よりも人がいる。廊下を挟んで前の席に座っている若い女性は2人で盛り上がっている。窓に何か見えるのか、こちら側をチラチラ見ているようにも思える。K駅はK市の経済的、政治的中心部に建てられた駅でここら一帯の駅の中では1番大きく綺麗である。電車から降りて、階段を登り、改札を抜けるとそばには複合商業施設スペシャル田中がある。経営する企業はこの施設の運営を中心に、細々と市内でサービスを展開しているらしい。地域密着型というやつで、特別(スペシャル)な田中などこの地域に住んで居なかったら一生覚えのない名前だろう。階段を降りて、脇道を通って公共施設関連のある方へと向かう。駅の区画は商業施設、公共施設はアクセスしやすい駅と、市内全域を通る国道が大体重なる所にある。そうして車は通れそうもない細い道を行って5分程。市役所が見えてきた。市役所は5階建てくらいのそこそこ大きな場所で、市の史料館や部屋の貸し出しなんかもやっている。近くにはスポーツセンターや図書館があり、暇な老人御用達の場所だ。自動ドアを通って建物の中に入る。今日はいつも大体2〜5人前後、多くても10人程しか基本的に人がおらず、職員は静かに仕事をしているはずの市役所がなんだか忙しなかった。珍しく満員の相談カウンターを見て、一応導入したが、殆ど役目のない整理券の発券器のボタンを押し、椅子で待つことにする。手持ち無沙汰だったので、情報収集も兼ねて同じく手持ち無沙汰そうな五十代ぐらいの男性に話しかけてみる。

「こんにちは。役所は珍しく忙しそうですね。」

男性は一瞬自分に話しかけられたのか分からず戸惑っていたが、私が笑顔で見つめていると快く言葉を返してくれた。

「そりゃ兄ちゃん、SNSとか見てないのかい?大体1時間くらい前によぉ、いろんな場所に洞穴みたいな穴が空いてたんだよ。さっきもテレビの速報で流れてたぜ。」

ずいぶんと気さくに話してくれた。これも若返りの効果だろうか。1時間前。私が目覚めたぐらいの時間だ。ちょうど私がニュースを見終わった後に速報があったらしい。残念ながらSNSはよく分からないのだ。後で使えるようになろうと強く思った。

「それで、どうして市役所に?情報を集めるならテレビを観ている方が確実だと思うんですが。」

こんな状態の役所にいても手続きできるまでどれくらいかかるのかも分からないというのに。

「昼間でも金色に光ってるから簡単に見つかるんだが、昨日の星空もあるだろう?国も県も大慌てでよ。市の方にも情報提供を求められてるみたいだぜ。さっき俺の家の庭でテレビ見てたら庭の方が光ってよ、見てみたら庭の真ん中におっきな穴があったんだよ!

どうしたもんかと思ってたらニュースの速報で自治体に連絡しろって話だったんで、市役所に近いから家内と話し合って、俺が市役所に連絡と相談をすることにしたんだよ。家内も一緒に行こうって言ったんだが、何も起きてないから大丈夫だって言うんだよ。」

男性はうんざりした様子で言う。だが彼も余りその穴に危機感はなさそうだ。私もそうだが、なぜだか金色の木をみてから金に親近感というか安心感というのを覚えつつある。それを自覚して少し危機感を覚えた。

この気持ちを内心に留めて笑顔のまま相槌を打つ。

「なるほど自宅の庭ですか。ここにいる人達は皆同じ事情なんですかね。」

「多分そうだと思うな。みんな大体同じくらいか俺の後ぐらいに来た人たちだし。光る穴のことも知らないし、逆に兄ちゃんはどうしてここに来たんだい?」

この質問は適当に誤魔化した。いま光る穴でもてんやわんやなのに、私の若返りの情報が追加されたらどうなるか分からない。あと余りにも非現実的である。星空や穴とは違い、実際に若返りをみたというわけでもない。その後は取り留めのない話をした。話の途中で名前も教えてもらった。園田さんと言うらしい。案外話は盛り上がったのだが受付の方に番号が呼ばれると、園田さんは立ち上がった。

「楽しく時間を過ごせたよ。有難う。また会ったら話をしよう。」

そう言って園田さんは受付の方へ行った。

コミュ強かよ

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