↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
そんなバカな(仮)  作者: 作為の肴
彩枝星
PR
3/9

星天の日

気持ちが変わりました。先にこっちの話をします。主人公目線長めでスローペースかも知れません。少しづつファンタジーが進行して行きます。

無限に広がる世界の、その殻。その内のある一片の話。

2025年9月17日、日本時間夜10時34分。

地球は上下左右すべてに満ちる星空で満ちた。いや、星空なわけがないのだが、これが当時の私とこの現象をその目で見た全ての人の素直な感想だろう。この景色の発生源はグアム諸島の近く、マリアナ海溝。1万メートルの深海からポップコーンが弾けるように加速度的に拡大し、全てを飲み込んでいった。その時、部屋の書斎でちょうど宇宙飛行士のドキュメンタリービデオを観ていた私は、いきなり宇宙に放り出されたと感じた。昼も夜も関係なく満天の夜空は世界中に広がり、全てを塗りつぶしていった。星空は最終的に地球全体をを飲み込むまでに拡大した。生きとし生けるもの達みな、神に祈ることも、まして逃げ出すまもなく飲み込まれた。もちろん誰もが混乱した。星空に飲み込まれたものは一切動くことはできず、プラネタリウムのようにゆっくりと移ろい続ける景色を只じっと見つめることしか出来なかった。定点カメラになったような気分で景色が真夜中から明け方、昼を超えて黄昏時。そして、また夜の満天の星空へと移り変わる様を皆同じく眺め続けた。しばらくすると皆のレンズは一斉に同じ場所に視線を向けた。それは位置で言えば地球の中心。星空に飲まれなければ立っていたであろう地面の、その奥底。本来なら地球の核があったであろうその場所には、大きな魚がいた。生憎視界に入るのは星空のみで、具体的にどのくらいの大きさとは言えない。だが、地球の全ての者がはっきり見ることができるぐらいには大きかったということは分かった。星を食べて暮らしていると言われても何ら不思議ではないその大きな魚は極彩色に輝き、星空の中を遊泳していた。私が見た限り、鯉のような形をしていたその魚は、天敵など想像もできない程の大きさにも関わらず、何かから藻掻いて逃げ出そうとしているようにも感じた。しかし、魚の周りは球状の透明なガラスみたいなもので塞がれているようで、魚がその窮屈な水槽から抜け出そうとしても抜け出せない様子だった。そうして数分或は数時間は経っていたのかもしれない。星空に飲まれてから肉体の感覚と共に時間感覚も失っていたので正確なことは分からない。何度も壁(・)にぶつかっていた魚が電気が走ったように一度ビクッと震えると、固まった。そして魚の胴体に亀裂が走り始め、中から金色の木が生えてきた。木は魚の胴体を中心に四方八方に枝(根かもしれない。私には余り区別がつかなかった)を伸ばし、やがて魚の体当たりを泰然と防いでいた透明な球ですら膜を破るように突き抜けて、私たちの方へ向かってきた。この時私は始めて危機感を覚えた。星空には恐怖する間もなくのみ込まれたし、プラネタリウムも呆然としている間に過ぎてしまった。そんな今まで何処か他人事だった私を、現実に引き戻すほどの偉(・)大(・)さ(・)または神(・)聖(・)さ(・)がその金色の木にはあった。極彩色の魚を中心に風船が膨らむようにその木は成長を続け、大体私の足元ぐらいのところで拡大を止めた。遠くから見れば金色の木が生い茂るタンブルウィードに見えただろう。そさて最後に、目線が元の位置に戻ると、下から金の糸のようなものが無数に溢れ出してが視界全てを覆い尽くした。どうしたのかと思ったところで、視界がテレビの電源を消すようにフッとブラックアウトした。


気が付くと、私は机の上で眠っていた。辺りを見回せば、点いたままのテレビと、寝たときに落としたのか、机の上に置いていた幾つかの本が床に散乱していた。壁にかかっている時計はまだ朝の9時をまわっていないぐらい。あれから10時間かはたまたもう一日以上経っているのかは分からない。まだだるさが残っているが本をこのままにしてしまうのはいけないだろう。私が本を拾うために立ち上がろうとすると、違和感を感じた。いつも立ち上がる時に感じていた膝と腰の痛みが無いのだ。変だと思いながら歩いて本に手を伸ばして、止まった。視界に写った手の甲に皺一つなく、まるで私の手ではないようなのだ。私は本を拾うのも忘れて一目散に洗面所へ向かった。向かいながら、やはり違和感を感じる。果たして幾つまで私はこんなに速く走れただろうか。そもそも、走ろうと思ってすぐに走れるたのか。ここ数年、まともに走ったのは定年間際の時に参加した欠員のために急遽参加した地域運動会ぐらいだ。昨日まで走れるかも分からなかったし、走りたいとも思えなかったのに。そう考えているうちに、洗面台が見えてきた。備え付けの鏡を見ると、そこには少し身綺麗だが、二十代の頃の自分の顔が写っていた。驚きというよりやはりそうなのかと納得の感情の方が強かった。


その後は大変だった。まずは現状の把握。あの時の星空は果たして私だけが見たものなのか。その答えはあの後、連日ニュースになっていたようで、すぐに確認できた。どうやらあれは私がおかしくなってしまったという訳ではらしい。何なら、防犯カメラなどにもはっきりと映像が残っていたという。動物園では動物達がしきりに地面を確認する様子が確認できる。結果、何も分かっていないと言う事が分かった。番組によってはよくわからない宗教の司祭だとか言う人物にインタビューをしていたりと、何処か迷走しているようにも思えた。また、御年65歳の身体から20代のピチピチボディになったことに関して、現時点で私と同じか、または似た状態の人は報道されていないみたいだった。これは皆基本的に星空に飲まれてすぐの時間に意識が戻っていたが、私は10時間以上意識が戻らなかった事にも関わりがあるのではないかと思う。肉体を四十年も若返らせるのだ。10時間程度で済んで有難いと思うべきだろう。

確認が終わったら次に各方面への連絡だ。人類八十億人他の生き物を含めたらもっといるのだ。私のような例は他にもいるに違いない。未だに情報が出ていないのは、私のように今さっき意識が戻ったか、情報が留められているか、すごく希少な例なのか。思いつくのはこれぐらいで、真相は分からないが、私が情報を押し留めていても意味がない。戸籍や年金の話もしなくてはいけないだろう。早速とばかりに役所へ向かいながら一応、この件に対応できそうな友人にも、今は忙しいと思うから家の方へ留守電をかけておいた。正直、病院にもいきたいが、若返ったせいか活力に溢れている。世界が輝いて見えるし、日の光が心地よい。心は熱く、頭は酷く冷静だ。終活は終えているし、こんな景色が最後に見れたなら、若返りの反動で死んだとしても満足して逝けるだろう。市役所でどれほど時間を食うかも分からないから予定を組むのは帰ってからだろう。さて、どうなってしまうのやら。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。