写真
「じゃあ、次に行こうか。と言っても、もう僕は何もしないけどね」
えっ、と思った。僕一人では、この謎は解明出来ないことに焦りを感じた。
「まあ、そうせっぱ詰まった顔しないでよ。何もヒントが無いとは言っていないだろう? 助言はするが、行動には移さないだけさ」
彼の言葉に安心している自分がいる。未だに彼を信用しきっていないというのに。
彼は再び窓に寄りかかると、此方に切れ上がった目を向けた。
「君は過去の記憶が全くない。だが、思い出して貰わないと、この先話が進まない。君の周りを見てみるといい。何か過去に関する手掛かりがあるはずだ」
彼は、僕を指さし、そう言った。
僕の周り……それは、部屋を指しているのではないのだろう。となると、僕の身につけているもの……リュックサックのことか?
僕は、背中を反らしてリュックサックを床に下ろした。そこまで重くなかったから、中にそんな大したものは入っていないはずだ。
チャックの音が、部屋全体に響き渡る。中を見て最初に目に飛び込んできたのは、よく先生が大事な書類を入れるのに使う茶封筒だった。
それを手に取ってみる。少し開けるか躊躇したが、青年が目で促すので封を開いた。
そこには、一枚の写真が入っていた。これは……。
「学校の……屋上?」
「そう。君が通っていた高校の屋上だ」
そういえば、と思った。何処か懐かしい気がする。
その時、急に思い出した。それと同時に、この写真に疑問を持つ。
僕の学校の屋上は、生徒の立ち入りを禁止している。こんなところの写真なんて、撮れるはずがない。校則違反になってしまう。大体、こんなところの写真を撮って、なんの意味があるのだろう?
……いや、そもそも僕は、何故屋上の写真を見て、これが僕の学校の写真だと気付いたのだろう?行ったこともない筈なのに、何故か自信を持って答えることが出来る。一体、何故……?
「何か思い出したかい?」
余程僕は考え込んでいたのだろうか?気が付くと、青年が上体を屈ませて首だけを上げて、此方を見ていた。
しかし、僕はその問いに答えることが出来なかった。もやもやしたものが、頭に残る程度だからだ。
「まだ駄目かい?結構この写真、重要なんだけどなぁ」
「そう……なの?」
「うん。なんてったって、君が……あ、いけない」
彼は、はっとして口をつぐんだ。君が……に続く言葉は聞けなかったが、今ので僕が屋上で何かをしたのは明白だった。
写真だけでは無理があるのか……。僕は諦めて、次の証拠を探すべくリュックの中を漁った。




