タイトル未定2026/06/17 06:09
早朝の寒空の下、フード付きの黒いコートに、ジーパンにスニーカーを履いた流花が駅の構内から出てきた。
流花は立ち止まって、青空を見上げた。
薄水色の青空に、寒さが余計に増して、流花は思わず首をすぼめた。
「おはよう!」
その声に流花が振り向くと、まるで寒さを吹き飛ばすような、爽やかな笑顔の野田がいた。
濡れたような大きな瞳に、自然に口角が上がった唇は本当にアイドルのようだった。
「おはよう。野田さん、元気だね」
流花が言うと、野田は流花の側に駆け寄り、二人は肩を並べて歩きだした。
「白田さん、好きな食べ物って何?」
「好きな食べ物?私食べるの好きだから、何でもイケるよ」
「そうなんだ。休みの日に、何か食べにいかない?」
「休みの日は……それに、二人きりで行くっていうのも……」
言いにくそうに言う流花に、野田は嫌な顔一つせず明るく言った。
「そっか。あっ、俺の独断だけど……」
野田はお勧めの飲食店を、いくつか紹介した。
話を聞くと野田は、B級グルメが好きだということがわかった。
野田が紹介する店に、流花が以前から気になっていた店があった。
「あっ、その店。前から、気になっていた」
「おっ、さすが。この店は味も値段も良いよ。店員の接客も凄く気持ちが良いし。店内が、凄く落ち着くんだ」
「そこまで、見ているんだ」
「やっぱ、気に入るとついね」
その後、野田は言いにくそうに切り出した。
「……彼氏と、行ってみたら」
「えっ?」
「昨日白田さんの手を引いて、歩いて行った目付きが鋭い男。白田さんの彼氏でしょ?」
「あっ、あぁ。田中君?」
「なんか、凄い怒っていたみたいだったけど、あの後大丈夫だった?喧嘩にならなかった?」
「田中君は、彼氏じゃないよ。友達だよ」
「白田さん、田中君といつも一緒にいて、昨日の田中君の態度で、田中君が白田さんの彼氏だと思ったよ」
「田中君は強面で、ちょっと強引な所があるから誤解をされやすいけど、根は優しいよ」
大学に着くと流花は、製図室に向かった。
野田もそれについてきた。
初めて見る製図室に、野田は驚きの声を上げた。
「ここが、製図室かぁ」
製図室は、いろんな接着剤の匂いが溢れていて、慣れていない野田の顔が歪んだ。
流花は黙ったまま、卒業課題の製図の続きを始めた。
側で野田は、黙ったまま流花を見つめていた。
三十分程で、流花は切り上げた。
「付き合わせちゃって、ごめんね。どうしても、気になっていた所があって」
「勝手についてきただけだから、気にしないで。それにしても、大作を作っているんだ。凄いよ」
「私なんて、まだまだ。とにかく、卒業の課題をクリアしないと」
「明日もまた、駅で白田さんを待っていても良い?」
思いがけない野田の言葉に、流花は目を見開いた後、苦笑をした。




