タイトル未定2026/06/17 06:12
流花は、翌朝いつもの駅で電車を降りた。
駅構内を出ると、野田が流花を待っていた。
すっかりお馴染みの光景だった。
「おはよう」
流花見つけた野田は、流花の側へ駆け寄った。
「おはよう」
流花は、野田と肩を並べて、バス停に向かって歩いた。
「昨日、封筒が届いていたんだ」「なんの封筒?」
「就職内定の手紙が入っていた」
「就職内定?やったじゃん!今夜、終わったら夕飯おごらせてよ」
「そんな、いいよ」
「嬉しいんだよ!課題の製作が終わるまで、待ってるから」
診療所の受付の中で、診療前の申し送りが終わり、職員はそれぞれの持ち場に行った。
マスターが受付の裏側から診察室に行こうとすると、緑がマスターを呼び止めた。
「先生」
マスターは緑と一緒に受付を出て、待合室に向かった。
人気が無い待合室で、緑は懺悔をするようにマスターに言った。
「先生と話をしている時、園田さんと久保さんに聞こえるように、流花ちゃんの名前を出しました」
突然の緑の言葉に、マスターの思考がついていけず、マスターは固まった状態でいた。
「先生は、気づいていないと思うけど」
やっと理解が出来たマスターは、
緑に言った。
「なんでまた、そんなことを……」
「なかなか進展しない先生と流花ちゃんに、ちょっとしたいたずら」
マスターは、大きなため息をついた。
「……言いたくないけど、ハッキリ言います。大きなお世話です」
「すみません」
緑は、素直に謝った。
「周りから見たら歯がゆいかもしれませんが、ボクたちはゆっくりながらもうまくいっています。昨日白田さんから、就職内定のラインが届きました」
「就職内定……流花ちゃん、就職が決まったんだ!」
「はい」
「流花ちゃん、四月から晴れて新社会人なんだ。お祝いするの?」
「無事に卒業ができるまでは、そんな気分になれないそうです」
「流花ちゃんらしい」
緑は笑い、笑いを収めると声を潜めて言った。
「何処で仕入れたかわからないけど、園田さんたち朝倉さんの娘さんの存在に気がついているわよ。朝倉さんの娘さんって、先生がお見合いをした相手だったわよね」
「無理矢理の、お見合いでしたけどね」
「心当たりがない?」
「朝倉さんの娘さんに会うことをおやじに話していた時、おやじの側に久保さんがいました」
「それで彼女達、朝倉さんの娘さんのことを知ったのね。面白がっていたわ」
「好きに、させときます」
「先生、流花ちゃんに内緒で朝倉さんの娘さんに会っていたんでしょ。気をつけてよ。同じ過ちを繰り返さないでよ」
そう言った緑はマスターから離れ、マスターは診察室に向かった。
……同じ過ち……か。
マスターは当時、同棲をしていた女性がいたにも関わらず、元カノのもとに行き、それが原因で同棲をしていた女性は、マスターの前からいなくなった。
……あんな辛い想いを、二度としたくない。
診療室に入ったマスターは、机の椅子に座り、業務を始めた。




