第8話 元天才の過去②
「そこで見つけたのが、『野生の魔術』だった」
「そういえば冒険者ギルドでも言ってましたね。それ。どんな本なんです?」
「『隠れ陸』を渡った魔術文化学者、シャノン=ストレックスの記録だよ。俺たちの国の宗教…『根源教』だと、精霊は『エレメンタル』だよな」
「はい。火、水、風、土。世界の現象の『そのもの』っていう」
エレメンタルはこの世を構成する『根源素』と呼ばれ、属性魔術は、そのエレメンタルの『影』を具象する技術といわれている。
「面白いことに、隠れ陸の方だと精霊は『トーテム』っていう」
「トーテム?」
「…イクス、お前、俺に声かけてきたとき『隠れ陸』に興味あるとかいってなかったっけ?」
イクスがぎくりとした。
「…すみません、結構不純な動機でした」
「いいよべつに。で、『トーテム』っていうのは『命をめぐるもの』っていう、獣な形で象徴される動的なものなんだ」
「なんか生々しいですね、エレメンタルと比べて」
「そう。で、手に負えないとかそういうもの」
レオンの周りで、光は踊る。
「そこで俺はトーテムっていうのを知った。で、そのトーテムとエレメンタルの中間の付与術が存在するってことを知ってさ。それが精霊統辞法」
「それ結構初耳なんですが」
「あんまり知ってる人いないからね」
レオンは肩をすくめた。
「精霊統辞法は、大陸側が隠れ陸を『啓蒙』しようとしたときに、猛反対した『精霊哲学派』の学者が作り出したものなんだ」
「なんで啓蒙する必要があったんですか」
イクスが首を傾げた。
ちょっとレオンは驚いた。
(術じゃなくて経緯の方に興味持ってくれるんだ)
「大陸の体系付与術はさ。トーテム文化からヒントを得て生まれたんだよ。元は神官とか根源教に仕える者しか使えなかった神官魔法。それは呪いを解いたり土地を浄化したりする『加護』だった。一方で、トーテムは身体をめぐる力。その『体をめぐる』ってとこにヒントを得て、付与術が生まれるきっかけになった最初の術、『身体を強くする魔術』がー今の付与術の原型が作られたんだ」
「え、『身体を強くする魔術』って隠れ陸の要素から生まれたんですか!?」
「うん。秘密にされてはいないけど、知ってる人はあんまいないし、付与術の本にそれが書いてあるものもないだろ」
イクスが顎に手を当てて少し考え、納得したように、うなずいた。
「そりゃ『啓蒙』したくなりますね。隠れ陸って原始的とか未開ってイメージが強いし・・・そんなとこからヒント持ってきた、なんて知られたら嫌なんでしょう。そもそも神官魔法が神聖なモノ扱いだったのが、付与術っていう形での技術体系化でも嫌がられてたのに、更にそれが未開なイメージのところから来たものなんて大体的には知られたくない」
「そう。根源教は付与術とか神官魔法に対する冒涜じゃとかいいながら、プライドもあるので、隠れ陸を啓蒙しようと思いました。ってかんじ」




