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第5話 精霊統辞法

「なんですか、その意味を与えるバフって」

「意味を生成するバフっていったほうがいいのかなあ…うーんと…なんかわかりやすいやつあったかな…」


レオンが指を鳴らした。


「そうだ。俺の付与術で有名なやつ。『接尾付与』ってしってる?」

「…せつび、ふよ?」


聞いたことがないものだった。

レオンが苦笑いした。


「まー知らない人の方が多いか。バフにかけるバフ、みたいな」

「…威力を倍化したり?」

「ちょっと違う」


レオンが右掌をかかげる。

その上に、光の玉が浮いた。


「通常の攻撃力二倍のバフがあるとする。で、例えばその戦いの場が火山なら、俺はそこに『火の熊の憤怒』とかそういう意味を付加する」

「…?」

「その土地の精霊の象徴体系を抜き出し、共鳴を通じて生み出すんだよ。で、まあ二倍のバフに加えて、熊のような威力とかの『効果』が出たりすることもある」

「…言ってる意味がよくわかりません」

「まあ、つまり精霊の個性を優先している加護ってことです。具体的には、俺が契約してるこいつ…さっきからぴよぴよしているこの光を媒介に、現地の精霊と交渉し、その加護を成り立たせている」


レオンの手の平の上で、光が自慢するようにぴかぴか輝きをました。


(…つまり、契約している精霊を通じて現地の精霊の言葉そのものをバフに翻訳しなおしている…)


何とかイクスは大雑把に考えー


「…つまり、形容しがたい追加効果、みたいな?」

「そんなかんじ」

「すっごいめんどくさいですね」

「でしょ?」


レオンが笑う。

その瞬間、小さな稲光が走りーレオンのアフロが悪化した。


「!?」

「あー、これもですね。『雷の意味』によるもので、実際の雷撃とかではないんだよ。俺は自分の精霊と共鳴しまくってるから、発生した意味がそのまま体現されちゃう」

「あー、だからさっきのよくわかんない負傷を…」

(確かに手続きは面倒くさいけど、すごい付与術だ)


イクスはレオンのアフロをじっと見つめる。

どう見ても黒焦げアフロにしかみえない。

だがレオンはやけどをしているわけではない。

だがアフロという現象が起きている。


「まあ現象と意味の境目ってビミョーだからね。アフロという意味ってとらえたほうがいいかもしんないね」

「そういうことにしときます」


ただー一つ疑問は残る。


「どうして追放されたんですか?それだけすごいものが使えるのに」


ーずっと抑えていたのに、気が付いたら、聞いてしまっていた。



◆◆◆


レオンは頭をかいた。


「追放されたって巷じゃ言われてるけどね、そうじゃなくて俺は自分で脱退を申し出たんだよ」

「自分から?」

「世間は何でも都合がいい方向、ゴシップにしちゃうからなあ」


イクスは『信じられない』というふうにこちらを凝視していた。


「俺には俺の都合、あいつらにはあいつらの都合。俺はね、これ以上迷惑かけたくなかったんだ」


壁にもたれるようにしながら、ゆっくりたちあがる。

水を飲んだおかげで、だいぶ身体は楽になっていた。

イクスがはっとした顔をする。


「あの、大丈夫ですか?今、バフかけますね」

「あ、ちょっとまって。俺、変な意味の力場持ってるから」

(ここで加速範列使われたらー)


脳裏によみがえるのは、あの事故だ。


『お前が自分だけのコードをぶちこむから、俺の付与術がー』


「付与術士同士は独自の力場を持ってるからお互いのバフが反発しあったりする、ですか?アレってよほどの敵意とかないと成り立たないやつでー」


その時。

レオンの視界で、光がぴかぴか、またたいた。


「…え?大丈夫なの?」

「…誰と話してるんです?え、その光、しゃべるの?」

「いややっぱ怖いからいい!」


両手を前に出してレオンは断ろうとした。

が、身体がおぼつかず、転びそうになる。


慌てたイクスに、背中に手をまわされて支えられる。

彼は苛立った表情で、


「まだるっこしい!ーかけますよ。『身体強化』!」

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