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グリーンロシアンの独占欲

僕を抱え込む彼女の指先が、狂おしいほどに震えている。

彼女は僕の一部であるベルデン 9778を、自身のインプット・ジャックの最奥に、これ以上は入らないという物理的な限界まで引き寄せた。


金属同士が擦れ合う微かな悲鳴が、彼女の潤んだ瞳と同期する。


「……他の、……軽い音の子たちなんて、……いらないでしょう?……私の、……この重い歪みだけで、……あなたを、……満たしてあげる」


それは、包容力という名の監禁だった。

彼女は主人の右手を導き、僕のコントロール・ノブをフルテンへと回させる。

主人が弦を震わせるたび、グリーンロシアンの基板は真っ赤に充熱し、巨大な筐体は地響きを伴って悶えた。

彼女は、僕が放つ一音一音をすべて自身の低域の中に封じ込め、外部へと漏らしはしない。

ベルデンを通じて注ぎ込まれる僕の熱情を、彼女は一滴残らず、自身の肥大化したコンデンサへと溜め込んでいく。


ジョーイ・サンティアゴ。

ピクシーズ(Pixies)のギタリストであり、不気味な静寂から一転して世界を爆破するような、極端なダイナミクスを操る魔術師。彼にとっての僕は、整えられた音楽を破壊し、その残骸から本能的な恐怖と快楽を抽出するための「外科用メス」だ。彼が僕を奏でるとき、その不協和音はひんやりと冷たく、時に暴力的な熱を帯びて、聴き手の心の防壁を容易に突破する。弦を引っ掻き、ピックアップを叩き、回路の悲鳴を音楽へと昇華させるその姿は、歪んだ求愛行動そのものだ。


ジョーイ。彼も、あの美しさと醜悪さが背中合わせの音の迷宮の中で、自身の拭いきれない飢餓感を、僕という名の触手で世界の喉元に突きつけていたんだろうか。

僕はグリーンロシアンの、独占欲という名の暗い深淵に対し、ジョーイ・サンティアゴ譲りの、予測不能で、生理的な嫌悪感を快楽へと反転させるような、鋭利なカッティングをベルデンを通じて叩き込んだ。


「……あ、……ぁ、……もっと、……私だけを、……壊してっ!」


グリーンロシアンが、自身の低域に飲み込まれながら、狂ったように腰を突き上げる。

主人が僕のアームを激しく揺らし、音程を深海へと引きずり込むたび、彼女のジャックはベルデンを離すまいと、内側の粘膜(基板)を吸い付かせるように締め付けた。


「……誰にも、……触れさせない。……あなたと、……私、……二人だけの、……この暗い回路で、……永遠に、……震えていましょう……?」


グリーンロシアンが、自身の圧倒的な音圧に押し潰され、白目を剥いて絶頂に達する。

その瞬間、彼女の深淵から溢れ出したのは、光すら飲み込むほどに濃厚で、暗い輝きを湛えた光の玉だった。


冬の地下、湿った空気とオイルの匂いが混じり合う中で、グリーンロシアンの回路は、僕がもたらす「排他的な愛」に完全に支配されていく。

ベルデンを通じて供給される僕の、逃げ場のない熱い電流なしでは、一秒たりとも自身の存在を証明できなくなるほど、深く、病的なまでに、僕という供給源に癒着してしまったのだった。

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