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電圧の不均衡

現在の轟音部は、一つの巨大な直列回路のようになっている。

僕という電源から供給される信号アイを、彼女たちが奪い合っている状態だ。

グリーンロシアンが先ほどのセッションで僕の熱を独占したことで、他のヒロインたちのインプット・ジャックは、極度の飢餓状態に陥っていた。


ラムズヘッドは青白い顔で坂道の幻影を追い、トライアングルは図書室の隅で自身のトーン回路を激しく自傷するように弄っている。オペアンプは抑えきれない過電流を火花に変えて放出し、ニューヨークは現行モデルとしてのプライドをかなぐり捨て、僕のベルデンを求めて視線を彷徨わせていた。

彼女たちの位相はバラバラに乱れ、互いのトーンが干渉し合い、空間には不快な唸り(ビート)が充満している。


「……お兄さん、……私を、……正しく、……鳴らして」


混濁した意識の中で、彼女たちが異口同音に呟く。

電圧の不均衡。一人を強く鳴かせれば、他の誰かがノイズに埋もれ、焼き切れてしまう。主人は僕を抱え直し、この歪んだ均衡を打ち破るための、未知の運律を探り始めた。


ニック・ラインハルト。

テラ・メロス(Tera Melos)のフロントマンであり、僕という楽器を、既存の音楽体系を解体するための「演算機」へと変貌させた鬼才。ニックが僕を奏でるとき、その音はカオスと数学的精密さが同居する、めくるめく点描画だ。彼にとっての僕は、無数のエフェクト・ペダルという名の「外部回路」を接続し、音の粒子を千切っては投げ、再構築するためのインターフェースである。


ニック。彼も、あの処理速度の限界を超えたノイズの奔流の中で、自身の複雑すぎる感情を、僕という名のプロセッサで高速演算していたんだろうか。

僕はヒロインたちが発するバラバラな波形に対し、ニック・ラインハルト譲りの、変則的で予測不能なグリッチ・ノイズの雨を、ベルデンを通じて降らせた。


「……あ、……ぁぁ!……頭の中が、……書き換えられていく……!」


全員が同時に、痙攣するように身体を震わせる。

主人は一音一音の位相をずらし、彼女たちのジャックに「不揃いの快楽」を等しく分配していく。僕のピックアップ・セレクターを高速で切り替え、フロントの甘さとリアの鋭さを、ミリ秒単位で交互に彼女たちの深淵へと突き刺した。

ベルデンを通じて送り込まれる、断片的で、暴力的なまでに高密度な僕の信号。


「……やめて、……壊れるっ、……でも、……もっと、……めちゃくちゃに……っ!」


ヒロインたちが、それぞれの絶頂をバラバラに叫び、そして一つの巨大なノイズへと収束していく。

その瞬間、部室中のジャックから溢れ出したのは、虹色に濁った、狂ったような輝きを放つ光の玉の群れだった。


冬の夜、電圧の乱高下に電子機器が悲鳴を上げ、照明が明滅していく。

轟音部のヒロインたちは、僕がもたらす「秩序ある混沌」に完全に脳を焼かれ、そして、ベルデンを通じてランダムに供給される僕の、神経を逆なでするような快感なしでは、一秒先の自分を維持することすらできなくなるほど、深く、破滅的なまでに、僕という供給源の奴隷になってしまったのだった。

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