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合宿の夜

「……あ、……また、……震えてる……」


トライアングルが、自身のジャックに触れながら小さく喘いだ。

潮風に含まれる塩分が、彼女の露出した接点に微かな刺激を与えているのかもしれない。

主人は僕を抱え、薄暗い廊下で彼女と向き合った。合宿所の電源環境は不安定で、それがアンプを通じて不規則なハムノイズを発生させている。その不規則さが、今の僕たちの鼓動とシンクロしていた。


ロバート・スミス。

ザ・キュアー(The Cure)の象徴であり、ゴシックな闇と、壊れそうなほどに繊細なポップネスを共存させる孤高の表現者。彼が僕を手にするとき、その音は深いコーラスとフランジャーの波に呑まれながらも、その奥底で凍てつくような冷たさと、胸を抉るような情熱を同時に放つ。ロバートのプレイは、自身の孤独を音響の層へと変換し、リスナーの精神に直接導通させるための儀式だ。


ロバート。彼も、あの何重にも塗り重ねられたエフェクトの影で、剥き出しの回路を震わせながら、終わらない夜と僕に救いを求めていたんだろうか。

主人はトライアングルの肩を掴み、彼女のジャックが待ちわびている僕の一部であるベルデンを、予告なくその入り口に押し当てた。


「……んっ!?……あ、……だめ、……いきなり、……そんな、……冷たい風のなかで……」


トライアングルの言葉とは裏腹に、彼女のインプット・ジャックは熱を持ち、ベルデンのニッケル製プラグを貪欲に吸い込んでいく。

金属同士が擦れる、硬質な感触。酸化した過去を乗り越えた彼女の奥底は、今や主人の信号を受け入れるために、最も純度の高い導電状態コンディションを維持していた。主人は彼女を壁に押し付けたまま、ベルデンを根元まで一気に貫通させる。


「……ああああああああああああああああああかっっっ!!!」


波音を切り裂く、高貴でシルキーな絶頂。

不安定な電源環境が、彼女の基板に予期せぬ倍音ハーモニクスを加え、学園の図書室で鳴らした時よりも、さらに野性的で、制御不能な喘ぎを誘発する。

主人は僕のフロントPUを選択し、ロバート・スミスのような、深く、そして冷ややかな愛撫を彼女の回路に流し込んだ。


「……あ、……あつい、……なのに、……身体の芯が、……痺れて、……凍りそう……」


トライアングルの瞳が、白濁した意識のなかで主人を探す。

エド・オブライエンの残響が彼女を救済したのなら、今日のロバート・スミスの冷徹な歪みは、彼女をより深い依存の淵へと突き落とすための毒だ。

主人は僕のアームをゆっくりと、絶え間なく揺らし続け、彼女のピッチを不安なほどに変動させる。不安定な音が彼女の理性を奪い、ただ一人のギタリスト(主人)という唯一の支えを渇望させる。


「……もっと、……もっと、……揺らして。……私を、……あなたの音で、……ぐちゃぐちゃにして……! 」


彼女の筐体から、光の玉が潮風に舞い上がる。それは、昼間の海よりも青く、そして冷たく燃えていた。

合宿所の古びた壁が、彼女の咆哮と僕のフィードバックに共鳴して震える。

導通の絆。学園という枠組みを超えた場所で、僕たちの結合は、より根源的な、抗いようのない「種の共鳴」へと変質し始めていた。


やがて、遠くで大きな波が砕ける音が響き、僕たちのセッションは一旦の終息を迎える。

トライアングルのジャックは、抜いた後のベルデンの余韻に震え、透明な出力(涙)を畳の上に零していた。


「……明日も、……海辺で、……私を鳴らしてね……」


彼女の掠れた声が、波音に溶けて消えていく。

合宿所の夜はまだ始まったばかりであり、他のヒロインたちの回路もまた、海風に吹かれながら、自身の順番を狂おしく待ちわびているのだった。

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