落ちてるドングリの虫混入率ごじゅっぱー超え(私調べ)
むかしむかしってほどでもないある時期まで、ベッド下の木箱には、忘れられし虫食いどんぐりがあったそうな。
<2階主寝室の模様替え>
ベッド組み立て完了レルム「よし。スペルモル、どこ置きますか?」
片付けスペルモル「あのカーテンをはさむ形で隙間あけて並べてくれ」
衝立搬入アウローラ「スペルモル、本当にそこはカーテンで良いのですか? 間仕切り、まだありますから部屋を分けられますよ?」
スペルモル「完全別室はやまやまだが、リンは寝るとすぐ腹出すから。ふとん掛けてやらねぇと」
レルム「ああ、それで。寝相は仕方ない」
アウローラ「今、新しい腹巻きを縫っています。完成までもう少し時間がかかりそうですが、今度のはズレにくいはずです」
スペルモル「助かる」
<ベットの向こう側で、木箱を引きずり出す音>
スペルモル「リン? どうした。何か探し物か?」
木箱の中身あさるカイゼリン「ええ…思い出したから。ねぇ、モル? 初めて採ったどんぐり、確かこの箱にしまったわよね?」
<ピタッと動きが止まるスペルモルとレルム>
一所懸命カイゼリン「ないのよ。おかしいわね? 失くすわけないのに」
アウローラ「あら…どこかにしまいなおした記憶はありませんか? しまった内箱を替えた、とか?」
カイゼリン「ううん、この大箱に直接いれたはずよ。ふたりでこの箱をドングリでいっぱいにしましょうって話をしたのよ。
けど、松ぼっくりとか他にもステキな物が見つかるものだから、上からどんどん入れてたら…そのまま忘れちゃってて。
全然さわってないから、下のほうにあるはずなのに」
ジッ…とけはいを消す男衆「「…」」
カイゼリン「うーん? ないわ…あれ。穴が空いてるわ。木箱に通気孔なんてあったかしら?」
アウローラ「あら。虫害ね」
ビクッと肩が揺れる男衆「「…!」」
カイゼリン「チューガイ? なぁに?」
<すみやかに妻の口を塞ぐレルム。姉の両肩を掴んでぐるっと向きを変えるスペルモル>
カイゼリン「チューしたわ? じゃあ…ガイの方はなに?」
スペルモル「多分アレだ、アンナの紙芝居。漫遊記だか今昔物語だかでそれっぽい言葉があったぞ。
それより、リン。木箱を変えよう。な?」
カイゼリン「分かったわ?」
スペルモル「中身は俺が出しておく。任せろ。リンは手を洗ってくる。どうだ?」
<素直に去るカイゼリン。
目的と手段が入れ替わりつつある鳥頭に手刀いれてアウローラ救出するスペルモル>
鳥頭夫婦「「はっ」」
箱の荷物を避難させるスペルモル「マズい。ヤバい。気づかれた。俺はどうしたらいい…!?」
アウローラ「??」
レルム「実は、かくかくしかじか」
アウローラ「まぁ。ドングリの中から巣立ったって…孵化したってこと? 土もなしに? 凄いわ。何の虫かしら? 観察したい。その残骸はまだ持っている?」
スペルモル「とっくに捨てたに決まってんだろ、どんぐりはどんぐりだからカッケーのであって、殻だけなんざ全然ゴミだ、いらねーだろよ。
くっそ、早まった。せめてマシな状態のヤツを少し取っておけば「経年劣化でダメになった」と言い張れたかも知れねぇ…!」
レルム「いや、無理だろ。誰が見てもアレは虫食いどんぐりの成れの果てだ」
スペルモル「うぐぐ…どうする?! そろそろリン帰ってきちまう…っ!
普段寝てるベッド下に虫がわいてたなんて知られたら、リン絶対に怖がる…泣かれかねない。嫌だ。
姉さまに怒られるのも怖いが、泣かすのだけは絶対に嫌だ…! ごまかす方法ないか?!」
アウローラ「え。あれ? 待って。スペルモル、あなた…わたくしのことは泣かせたがるのに?」
ドSペルモル「ウォーターサーバーと一緒にすんな! 白湯はあったら飲むだろ! リンはかわいそうだろ!」
アウローラ「給水器??」
レルム「何で急に白湯の話になったんだ?」
天を仰ぐスペルモル「あ。ダメだ終わった」
<戻ってきたカイゼリン>
カイゼリン「ねぇ、モル? 思ったのだけど、どんぐり、穴からこぼれちゃったってことないかしら?
だとすると灰にしちゃってるかも」
レルム「灰」
アウローラ「イヤな予感」
カイゼリン「石床を燃し清めるでしょ、お掃除で。その時に、もしかしてって思って」
アウローラ「掃除、そうね、床を清め…え。待って? 床を…燃す?!」
レルム「恐ろしい事実が発覚したんだが?」
カイゼリン「問題ないわ。わたくし、失敗しなくてよ」
レルム「問題しかないが??」
アウローラ「えええ…ええと、なにをもって失敗していないと判断を?」
カイゼリン「絨毯も家具も無事だから。ねぇ、今とても大事な話をしているのよ。掃除なんて瑣末事よ。小言は後にしてちょうだい」
アウローラ&レルム「「舘を燃しておいて瑣末事と言いきる度胸」」
カイゼリン「あ。そっか。失敗しちゃったわ。
あのね、モル。ホコリに紛れて、どんぐりまで燃やしちゃったのかも知れないの。
…せっかく一緒に拾ったのに。ごめんなさい」
アウローラ「いつから? いつからそんな掃除方法を?!」
スペルモル「違う! リンは悪くない! なにも悪くない!」
レルム「違うし悪いが? 掃除のやり方どころか、何がマズいか分かってなさそうなあたりが」
スペルモル「レルム! 俺が悪い。リンは悪くない。お前はそれを知っている。…わかっているだろ、本当は」
レルム「うん、落ち着いてください、スペルモル。そうなんだけど、そうじゃなくて。それどころじゃなくて。いったんこっち見ようか、ふたりとも。
確認します。この部屋の暖炉だけやたら灰が多かった原因は、つまり熱魔法で」
カイゼリン「モル…許してくれるの?」
レルム「聞いて」
スペルモル「許すとかそういうんじゃない! リンは常に俺の特別だ! どんぐりなんて、ほら、たくさんある、全部やる!
だから姉さま、そんな悲しい顔しないでくれ…!」
カイゼリン「…モル…っ」
アウローラ「感動シーンに割り込んで本当に申し訳ないのだけど、大事なことだから聞いてちょうだい。ぜひ。お願い。こっち向いて? ね? なら、せめて怪我してないかだけでも教え」
スペルモル「ここは理想郷だ。いくらでも手に入る。次の秋も、また採りに行こうぜ。毎年。一緒に」
レルム「あのな、ふたりとも。そもそも暖炉はゴミ箱じゃな」
カイゼリン「うんっ! そうよ! これからも採れる! ずっと一緒ね! 嬉しいわ、モル! 楽しみ!」
スペルモル「ああ。俺たちはずっと一緒だ」
レルム「またか。ふたりの世界に入った。これもう無理だ」
アウローラ「わたくしたちがいること忘れているわね」
レルム「仕方ない、説教は後だ。安全対策を練ろう。まずは模様替えを終わらせるか」
アウローラ「ええ。言う事まとめておくわね。チリトリとゴミ箱の存在意義から教えなきゃ」
レルム「ヒュプシュ嬢に頼んで、この部屋に熱感知センサーつけてもらおうか」
夫婦「「今まで無事でよかった…」」
箱の中身…松ぼっくり、よく飛ぶ平たい石、ツヤツヤピカピカの石、カッケェー形の石、多分ロックゴーレムの腕の破片(ただのさざれ石)、妖精の卵(ただの縞メノウ)、イイ感じの枝、元キレイな葉っぱの粉(乾いて崩れた)、萎れたデッケェ葉っぱに包まれた何か(中身わすれてる)、ボロボロにほつれたけど手放しがたいリボン(一生使わない)、レルムがくれた端材(傘や木工細工の余り)(なんかに使う予定)、アンナがくれたクルミの殻(なんかに使う予定)、ヒュプシュが分けてくれたオヤツの包み紙(なんかに略)。
※レルムたちが贈ったどんぐりは全て下処理済。最新どんぐりの下処理はスペルモルがチマチマがんばった。




