魔王のオーバーキル②
※札束風呂で遊んだときの話。
ひとしきりキャッキャした後、アンナが「そうだ!」と言い出した。
「ね。物欲王だれだと思う? 大金あったら何を買う?」
魔法が使える女神であっても、もしも話は大好きである。「物品限定ね!」を条件に若人たちの物欲発表会は白熱した。
ああだこうだと出てきたのは、憧れのちょっと良い感じお高め日用品各種。
アウローラ「今のところコタツが最高額ね」
ドヤァアンナ「やはりあたしこそ物欲王」
レルム「順当だな」
皆でアッハッハと盛り上がっていると、ずっと黙って見守っていたおせっかい魔王が「でそろったようだな?」と美声を発した。
(((でそろった…?)))
全員が嫌な予感に襲われるなか、カイザルはパッチンパッチン指を鳴らし始めた。
巧みな物質化魔法で、皆の物欲をマジで叶えはじめたのだ。
全員がうろたえた。
((((冗談が通じない…だと…?!)))
ざわつく若人らの手もとに次々と現れる物欲の塊。
採果ハサミ。
ペティナイフ。
筆や色つきインク。
ガラスビーズや服飾小物。
本。
全てが精巧。どれも美しい彫金が施された特注品仕立て。
びっくり眼のままそれらを受け取った面々は「「…きれー…」」とつい声をあげた。
「そうか」
ドヤァな紫をただよわせつつ、カイザルはまたパチンとやった。
コタツ布団が現れた。
厚めの毛布と汚れよけ帆布の2枚。どちらも上品かつ愛らしい色合い。
(((やっぱりカイザルさんって可愛いデザイン大好きなんだな)))
などと感想を抱かれているとはつゆ知らず、魔王さまはさらに魔法発動。
談話スペースに鎮座するガラスのローテーブルがなんやかんやされ、布団が足され、あっという間にコタツと化した。
天板はガラスでなく温かみのある木製へ変更。縁に優美かつ繊細な彫刻が飾られ、「ちょっとオシャレ」どころか「とっても美麗」。
ロマンティック魔王のリメイクは、鉄格子に引き続きシンプルなローテーブルをも美術品のように生まれ変わらせた。
全員が「「「はわわ…」」」となるなか、優雅な平安貴族風衣装でソファにふんぞり返るロマンティック魔王は、艶めく重低音で例の決めゼリフを発した。
「どうした。好きに遊べ」
(((ヤバい。カイザルさんに物欲を見せたらダメ人間にされる)))




