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44.ナーシャの危険なお弁当、と再会

こんばんは~。

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よろしければ、ぜひ。

m(_ _)m

西区の入り口付近で魔法使いと思われる謎の女性に出会ってから、オレはサラマンダーの破片を探しながら西区の奥へと向かっていた。

熱中症には十分すぎる程に注意している。今の所気分が悪くなったりはしていない。

クレーターから三十分程歩いた場所にはオレが最初にミミズのような姿をした炎龍に襲われた噴水がある。

サラマンダーの影響が無くなった事で水の色は普通に戻っていた。そこで水を木製の水筒に汲んで、更に奥を目指している。


「破片って、結構拾えるもんだな……皆、流石にここまでは飛び散って無いだろう、とか考えてんのか?」


まぁ、オレも十一日前のあの戦いを見て無きゃ、ここまでは来なかったろうさ。

オレはサラマンダーの力も大きさも、どれだけその甲殻が固いのかも、そしてそれらが戦いでどれだけの恐怖をもたらすのか身を以て知っている。


「ガドルがどんな技を使ったのかは見て無いから分からない……けど、城の様な巨体を瓦礫の山に変えたんだ。当然相当遠くまで破片は飛散しているに決まってる」


そしてその見立ては正しかった。脇道を覗いたり、入ってみたりしながらジグザグにゆっくりと進んでいるのだが……恐らくバケツ一杯分程の白い石ころのような甲殻が集まっている。

今着ているアルトから貰った服には試料採集用に沢山のポケットが付いているのだが……その中だけでは追いつかず、腰に付けたポーチもそろそろ満杯に近い。

実に順調だ。これで結構な金額が貰えるに違いない。ナーシャやアルトも喜んでくれるだろう。


「さぁて、そろそろ弁当にしてもいいかな?」


探索を始めてそろそろ三時間程だろうか? もう午後一時くらいだと思われる。

一応、この世界にも時計があるものの、日本でいう日時計みたいな代物であり、夜間は役に立たない上にアバウトな時間しか分からない。

……というか、オレはまだ影の方向から時間を知る方法が分からない。

まぁ、中央区セントラルの王城には滴刻アユワなんて名前の水時計も設置されていて一年を通して正確な時間を教えてくれるのだが……恐らくは十五,六キロも離れた西区からは流石に見えない。


つまり、今頼るべきは自分の腹時計という訳だ。

ということで、オレは腰に付けたポーチから小箱を取り出した。中身は勿論弁当である。


「今日はナーシャの手作りなんだよなぁ……心配だ」


いや、ま、心配って程は心配してないんだけど……ナーシャは料理が上手くない。アルトは料理の達人と言っても良い程なのに、そのスキルを受け継いでいないらしい。それも当然で、ナーシャは幼い頃からユニオンの仕事を手伝ってきた為に家にいつかず、対して、アルトは錬金術師アルケミストという名の無所属フリーの科学者である為、殆どの時間を家で過ごして家事全般をこなしている。この頃は朝御飯やなんやらを作ってくれているが……以前は全く料理をしなかったらしい。


「見た目はいいんだけどさ……油断出来ないのがナーシャの弁当なんだよ……」


人気の無い家の階段に座り込み、ポーチから弁当箱を取り出した。紐を解き、パカリ、と蓋を開ける。

超美味しそうだな! 半分には色取り取りの鮮やかな野菜サラダに囲まれてステーキが、仕切りを隔てて半分には小さなサンドウィッチが詰まっている。

どういう訳か肉はまだ温かく、香草ハーブの芳ばしい香りが周囲に充満した。


「ナーシャ、随分と腕を上げたな……見た目は百点以上だ!」


ホント、自分は何様だよ、とも思うけど……本当に油断は出来ないのだ。

例えば昨日、アルトが朝早くから出掛けた為に、オレはナーシャが作ってくれた弁当を食べた。

――その結果、オレは口の中を怪我した。肉の香りづけのために使われていた香草に鋭い棘が生えていた事にオレは気付かなかったのだ。勿論オレも悪かったんだが……普通、そんな薬草使うか? 香りを浸透させる為に棘を肉に刺してあったんだぜ? 気付かないよ。 


「だから、肉には注意だな」


最後に残す事に決め、サンドウィッチを先に食べる事にした。

あ……普通に美味しい。

茹で卵と燻製肉ベーコンを食べ応えのあるしっかりしたパンに挟み、ソースとして肉汁をロモ芋のペーストに染み込ませた物を使ってる。少しショッパイが、ご飯が欲しくなる味だ。


「すぐに食べ切れてしまう量なのが惜しいくらいだ……」


これなら自分でも作れそうだし、大皿一杯に作って夕飯でも良いかもしれない。サンドウィッチだけというのはどうかとも思うが……


「んじゃ、次はこのサラダだ」


ピンクや紫、黄色といった鮮やかな色の葉っぱを何枚かつまみ、口に入れる。


「むぐっ!!?」


衝撃が走った。味覚の地平線を切り拓くような味だった。端的に言えば、とても食べられるモノでは無かった。


「何かの薬……か、なにか、か? 薬……草?」


特にこのオレンジ色の葉っぱ。これは前人未踏の味わいだな。酸っぱくて舌が痺れるっつうか、しょっぱくて喉が渇くというか、渋くて鳥肌が立つというか、涙が出る程にかおり高いというか……もうほんと勘弁してくれ。


「じゃあ、最後に肉……うん、昨日のトゲの生えた薬草は使っていないな……?」


なぜこんなにホカホカなのかは気になる所ではあるが、きっとこの弁当箱に仕組みがあるのだろう。オレはさして疑問に思うこと無く肉を一切れ分、口へと運んだ。


「むっ……水分が飛んじゃってるな。スッゴイぱさぱさ感……って、あれ、なんか口が熱い? いや……痛い? なぜ…………ぅわちぃ!?」


辛いとかそういう事では無く、明確に舌を火傷した感覚があった。堪らずに肉を吐き出す。


「水! みずぅ!!」


水筒から水をがぶ飲みするとやっと落ち着いた。吐き出した肉からは湯気が上がっている。明らかに変だ。


「ナーシャ……お前、いったいどんな化学反応を!?」


コレは一体どうしたというんだ……? 噛み締めた肉の中から炎が噴き出したんじゃないかと思う程熱かった。


『その肉、特殊な仕込みがされている為に、汝では食す事は叶わぬ。食べてもいいか?』


水蒸気では無く白煙を上げ始めた肉片をつつくオレに、誰かが話し掛けた。

どこかで聞いた声だ。金属の軋る音が混じったような女性の声。まるで頭の内側から響いて来るこの感覚。確かに覚えがある……いや、忘れる筈も無い。


「お前、サラマンダー!? どこにいるっ!?」


オレは戦慄した。

その声からは距離を掴めないが、すぐ近くにいる筈なのだ。オレの所にやって来たという事は殺された復讐か……。オレの背中を冷や汗がじっとりと濡らした。


『いや、そうではないぞ? 我は不死故に汝やガドル・ルスオールを恨む道理は無い。我はこうして生きておるし、汝もあの激戦を生き抜いた。見事なものじゃったぞ?』


上着の裏ポケットの中で何かが蠢いたかと思うと、白い毛玉が飛び出した。オレの太ももを駆け降りて目の前の地面に立ったのは白い小動物だ。四つ足で、大きさはリスほど。サラマンダーの特徴であった筈の甲殻では無く哺乳類の様な毛に覆われている。金色の瞳は相変わらず神々しいが、小さくなった分、威圧感は無い。

オレが吐き出した肉片(今や焦げ臭い匂いを漂わせいる……)を興味深げに前足で転がしているさまといい完全に小動物である……。


「え……と? もしかしてお前、そんなに小さくなれるのか……?」


オレは呆気にとられて、サラマンダーに尋ねた。

いや、しっかしなぁ? 同じ生物とは思えない程可愛いんだが。全然竜っぽくないし。威圧感もちっとも無いしな。触りたい。掌にのっけて眺めたい……。


『……我の姿への汝の不躾な感想はしばし置くとして、その問に対する答えは『いな』だ。この姿は仮初め、汝が集めた我の破片から再生した姿。……汝からは変革の匂いがしたのでな、それを見届けんと思うたのだ、我はな』


オレはポケットに詰めたサラマンダーの破片が幾つか無くなっているのに気付いた。『変革の匂い』とか『見届ける』というのはよく分からないが、とにかく。


「それって――」


『我は汝の仲間になる。そうだ。その認識で間違ってはおらんな。汝の起こす『波』。それが英雄足り得るか、見極めさせてもらうぞ、向井ケント。……だが、その前に……』


コイツはなんだか随分とけったいで、勿体ぶった言い方をする。意味は不明だが、オレはその言葉の圧力に威押されてしまった。

その上、『その前に』と前置きをされ、一体に次にどんな事が起きるのかとオレは生唾を飲んだ。大抵ゲームとかだと『試練を与える』とかそう感じの言葉が続いたりするものだが……。


白い獣はその深く澄み切った金色の目をオレの……弁当箱に向けた。深い知性を感じる瞳は肉をじっと見つめた。


『その前にその残りの肉をくれぬか……? この姿は如何せんエリクシルを蓄え置く事が出来ぬのだ。我は死ぬ程に腹が減った。』


昔読んだ図鑑で野ネズミは食べ続けなくては死んでしまうという話を読んだ。


「……じゃあ、どうぞ。でも大丈夫なのか? 野生動物って人間の調理した食べ物食うと腹壊すんだろ? あと、是非ともこの野菜も一緒に食べてくれ。」


オレが弁当箱ごと差し出すと、サラマンダーは顔を背けた。


『葉はいらん。汝が考えている事は筒抜けなのだ。食べる筈が無かろうよ。それに、我を野鼠と一緒にするな。我はその魔物の肉を食べたいだけなのだ!』


マジかよ。これ、魔物の肉か……この世界には魔物を食べる習慣があるのかもしれないが……どう考えても、この肉は食べ物では無かった。今なんて燃えてるし。

さっき吐き出して正解だった。今や地面に落ちた肉からは白煙どころか小さな火の手が上がっている。あのまま呑み込んでいたらと思うとゾッとする。


『それにしても、この肉。詰められた葉と反応して毒に変わっていたが……汝、平気か?』


旨かった、と弁当箱を押して返すサラマンダーはそんな物騒な事を口にした。う、嘘だろ!? ナーシャ、アイツ、一体何を考えてるんだ!?

急いで腹具合を確かめるものの、特に異常は無い。直ぐに吐き出したから特に何とも無かったようだ。


「不幸中の幸い、ちょっと嚙んだだけだっただし、全然問題無いとおも、う……?」


視界が揺れた。まるで両目が別の方向を向いているような……前後左右が同時に見えている様な錯覚。頭が混乱し、手足がすぅっと冷たくなるのが分かった。呼吸が出来なくなって行く……。


「(え? 嘘だろ……? 今、オレは食当たりで死に掛けてる気がする!?)」


体の側面に衝撃が走り、オレは自分が階段をズルズルと滑り落ちるのを感じた。


『情けない奴め。汝は此処で死んでしまうのか? 我がせっかく危険を省みずにこの姿に転生したと言うのに……仕方の無い奴め。助けるのは今回だけだぞ?』


辛うじて見えていた視界が一気に暗くなる。やけに地面が冷たく感じる。


「(……なんか、オレ、結構な頻度で死に掛けてる……というか、コレ、間違い無くヤバいぞ……)」


首筋に何か小さく鋭いモノが刺さる……というか間違いなくサラマンダーに噛まれた感覚を最後にオレの意識は途絶えた。



今回もまた死にかけた主人公!

……本人は都合よく忘れてますけど、サラマンダー討伐戦の時の不遇を考えたら全然順風満帆なんかじゃ無いんですよね、彼の異世界生活。


次回! 物語は魔剣製作に本格突入!


5月30日(火曜日)の午後8時です。(再び時間変更ですいません( ̄▽ ̄;))

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