30.灼熱地獄にて光を見るのか……
すっかり遅くなっちゃいました~。
今日は30話目っすね!
瞼を透かして入って来るオレンジ色の光に意識が覚醒させられる。オレは大気が焼ける臭いと、耳元で風の唸りが聞こえるのに気付いた。一体オレはどこにいるのだろう?
「(オレはいったい……?)って、なあぁぁぁぁ!?」
目を開けた途端、素っ頓狂な声を出してしまう。
「おお。起きたか? 暫く動くなよ? 俺がミスったら火傷じゃ済まねぇぜ?」
オレは必死で頷く。
誰でも分かる危機的状況。そんな状況でも不覚にもガドルの声に安心してしまう。状況は全く大丈夫では無いというのに……。
燃え盛る大地をガドルは風の如く駆け抜けていた。
辺りの街並みは完全に崩壊し、マグマに呑まれている。 ……そのマグマの上をガドルは駆けているのだ。飛び石のように辛うじて固まっている部分を渡っているようだった。
これは不可能なことだ。
水の上を走るトカゲがいるという番組をテレビでみたりもしたが、それは水かきのある足に空気を溜めて浮力を得るからであり、人間の足の構造では十分な浮力を得られない。そもそも水の上ではなく溶岩の上である場合……足が燃える。
やっぱり不可能だ、と思ったものの……実際やっているオッサンがいるのだから認めざるを得ない。
「(……なんでやねん)」
もう驚きを飛び越えて、ツッコミしか湧いてこねぇ。
ほとほとこの男は化け物じみている。
仮説だが、マグマに足を着けた時の衝撃と爆風によって推進力を得ているのではないだろうか。高さ三十メートルから水に落ちると水面はコンクリートと同じくらいの硬さになる、らしい。
確かにプールなんかで下手な飛び込みをすると悶絶する程痛い。だから粘度が高いマグマならの水に対する速度よりは遅い速度でも、蹴り込めば足場にはなる。ただし、その足場が千五百度を超えているのはご愛敬だ。
もはや人間の所業では無い。
しかも、オレがこうしてここにいるという事は、ガドルに助けられたという事だ。
まさかあの炎弾を避けたのか? 落下中のオレを掴まえて? ウソだろ?
「っと、目ぇ閉じて息止めろ!! 早く!!」
ガドルの声に上を見上げると……
「サラマンダー!!? 何故こんなに近く!!!?」
遥か真上から凍てつくような金色の双眸が此方を見下ろしている。
二つの星の様に輝く眼球には明確な怒りと殺意が宿っている。
オレが覚えているサラマンダーの目はもっと……余裕と知性が感じられるモノだった気がするのだが……。
「だぁから、早く息を止めろ!!」
ゴツリと脳天を軽く殴られる。
取り敢えず息を止める、が目は閉じなかった。
「むぐっ!?」
その事が災いした。
まるで山の様なサラマンダーに向かって更にスピードを上げて突進するガドルを見てしまったからだ。確かに、白く輝く甲殻には斧での近接攻撃しか効かなさそうだが……真正面から突撃するのはあまりに無謀だ。
サラマンダーが幸いとばかりにその巨大な足を持ち上げ、オレ達に向かって振り降ろした。
「(あ、なんか。猫がおもちゃのネズミにパンチするのに似てる……?)」
言うまでも無く、ネズミのおもちゃはオレ達。ノミの様に潰される運命にある哀れなオレ達……っていうのは、まぁ、冗談だ。本心では微塵もそうは思わない。
ガドルの強さは最早、ゲームでいうチートってレベルであり、オレはこの男が膝を着く所を微塵も想像できない。
「よっしゃぃ! やっちまえ!! そのまま足をぶった切るんだ!!」
オレはまるでスポーツの中継かゲーム実況を見ているかのように、ガドルを応援し始めた。
「じっとしてろ!」
「あ、ごめん……ッて!!」
振ってくる足へ向かい一段とスピードを上げるガドル。ごぅごぅと熱風が掻き乱れ、熱波に耐え切れなくなったオレはガドルの背中に顔をうずめた。ガドルは恐ろしい程の冷静さと集中を保ったまま、そのまま振って来る足に突進していく。乾いた熱気が押し寄せ、涙が出てくる。
ドッオォォォン!!
凄まじい音と衝撃と共にサラマンダーの足がマグマの海に着地する。高温のマグマの大波が四方に広がってゆく。しかしそこにオレ達はいない。
腕自体から放たれる光熱に怯むことなく、一瞬早く、完璧なタイミングとスピードで、振り下ろされる前足に向かって飛んだのだ。
黒い斧を持ったガドルの剛腕が唸りを上げてサラマンダーの前足の甲殻の継ぎ目に打ち下ろされる。
オレはサラマンダーの前足をガドルが切り裂く幻を見て、勝ったと錯覚した。
だが現実は違った。
「くっ……」
周囲にまき散らされた衝撃波とキーンという耳をつく音にガドルとオレは顔をしかめた。
破片は飛んだ。しかし竜の王たる白い甲殻は澄んだ高い音を響かせて、ガドルの刃を弾き返したのだ。
「{マジか!?)」
頼みの綱の近接攻撃が無効!!?
見上げると、黒煙で覆われた赤黒い空の下で、サラマンダーの金色の目が嗤うかのように細められているのが見えた。
「一旦下がるぞ!!」
ガドルが焦ったように言い、甲殻を蹴って瞬時に距離を取る。サラマンダーの全身が赤く輝き、溶鉱炉のような熱が放たれた。
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