27.最強の討伐者。その極意。
おはようございます。
筆者は今日も元気です。
「……じゃあ、どうやって倒すんだよ……?」
オレの言葉にガドルは鷹揚に頷いた。まるでその質問を待っていたと言わんばかりである。その自信たっぷりな態度に何か嫌な予感を覚えたオレは、なんとか剛腕の中から抜け出そうともがくが、ガドルは気付きもしない。
「ならば、討伐者が何たるかを教えてやろう。 いいか、良く聞けよ? 騎士団長に教わることなんてそうそう無いだろうからな」
ああ、まぁ、確かに。
オレは抵抗の手を止める。
「まず第一は相手の出方を見ることだ。逃げようとしているか、威嚇か、それとも怒っているか……それらを冷静に観察しながら距離を詰める。 次に大事なのは相手の武器を見極めることだ。鋭い牙なのか、爪なのか、毒なのか……そういった具合にな。他は……何かあったか……。あぁ、あと、地形を把握する事だな。こいつが最も大事かもしれん。多種多様な魔物の大きさや生態に合わせて足止めし、相手の攻撃を防ぎながら攻撃し、弱らせる。獣のような力で勝る相手に対して正面からぶつかるのは愚策でしかねぇ。それに、事前に罠を仕掛けた場所を忘れちまえば危険だしな」
あれ? わりと当たり前の事だな?
てっきり猪猛突進を旨とせよとかそんな感じかと思ってたんだが……。
「だが!! それは極意ではない!」
え? あれ? 脳筋・ガドルにしては珍しく、せっかく良い事を言ったのに否定しちゃうんすか?
再び嫌な予感が……?
「今言った三つの事……それら全て忘れて良い!! 何故なら、俺は騎士団長であってバスターでは無いからだ。何より、俺の場合は正面から行っても何とかなるしな。そんな俺の極意。それはっ……誰も倒した事の無い奴ほど倒しがいがある、ってのと……近接攻撃が基本にして全てって事だ!!!」
悪い予感は見事的中!
誰もそんな事聞きたくねーーーー!! なんて思う間も無く、ガドルは屋根瓦どころか建物の一画を丸ごと崩壊させる程の踏み込みでもって、空高く跳躍した。
「さぁ、実戦で教えよう! 近くでよく見えるように連れて行ってやるからな!」
それは、もちろん……オレを片手に抱えたまま。
「…………………………!!!?」
一生忘れないだろう。
オレは空を翔んだ。
それは、声が出ない程の、五臓六腑が握られるような感覚を覚える程の……形容しがたい恐怖体験だった。
オレは一生忘れないだろう。
鼻の奥が熱気で痛みを感じ、潤いを奪われた肌がヒビ割れてゆくかの様な錯覚を。
一瞬で流れて行く景色に思考が追いつかぬまま、溶岩の海が一瞬で目の前に迫り、そして……
「つぁ!?」
何か固い場所に着地した。
正確には着地した衝撃が伝わってきた。ガドルはかなりの衝撃を緩和していたようだ。そうでなかったら着地した瞬間にオレの首はちぎれている。
辺りは隕石が落ちたようなクレーターで、丸く溶岩が無くなっている。
「てめっ!?」
『てめぇ、何しやがる!?』と言おうとしたのだが、自分でも意味の分からない言葉を発してしまう。
それもこれも、再びガドルが跳躍したからだ。
身体に莫大な加速が掛かり、一瞬、意識が揺るぎそうになった。
それでも何とか意識を保てたのだが……。
しかし今度は、ジェットコースターなど目じゃない程の胃の底が浮き上がる不快感がオレを襲う。
幸か不幸か、それでもオレの意識は途切れなかった。
恐らくガドルは、スーパーマンのように数百メートルを一瞬でジャンプしたのだ。十回建てのビル以上の尋常でない高さ……急激な気圧の変化と、吹き付ける暴風に耳が千切れそうな程痛くなるほどだ。
巨大なサラマンダーは数十メートル斜め下にあり、その足元に向かって猛スピードで自由落下して行く……。
否応なしに近付いてくるサラマンダー。
全身がオレンジ色に照らし出される中、まるで顔の中で星が燃えているかのように、
竜の顔だけが白く輝いている。
そして恐ろしい事に……その金色の瞳はピタリと向かって来る俺達の動きを追っているのだ。
冷静に、冷徹に。
明確に知性が感じられる瞳でもって、縄張りを侵した存在が何なのかを見極めようとしている。
「参ったな……奴さん、どうやら頭が良いらしい……俺の着地の瞬間を狙っているのか……こりゃあ。逃げられねぇな」
!?
確かに、竜の口からは白い炎が漏れ出ている。数瞬前までは無かった現象だ。
「なぁに、心配すんな。なんとかして見せるさ……民を護る剣・騎士団長の強さ、舐めるんじゃねぇぞ?」
ガドルはこんな状況でも笑っている。
いやいやいや……冗談じゃない!! ばかじゃねぇの!?
どうにかする!?
そんなの、どうにかなるわきゃねぇだろ!!!
くっそ~~! こんなバカなオッサンに着いてかなけりゃ……いや、そもそもこんな世界に来なきゃオレは死ななかったのに!
こんな所で化け物に殺されるなんてあんまりだ!!
日本にいればこんな事にはならなかった!
あの夜、二日前の夜。あの時塾をサボった事が酷く……物っ凄く悔やまれる!!
「(ああ! あともうもうすぐでオレは……)」
サラマンダーの側面に残っている建物、その赤茶けた屋根が猛スピードで迫ってくる。抱えられたオレには何も出来ない……うん、まぁ、抱えられてなくても何も出来やしないが。
続きは……明後日の11時頃に出す予定です。
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