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15.不安と恋心と幸運

皆さん、こんばんは!!

投稿時間が定まらなくてごめんなさい(;^ω^)

第15話です! どうぞっ!



色とりどりのパラソルやテントが並び、両脇には物がぎっしりと置かれている。

山積みに並べられた野菜や果物、トランクに詰められた古本。さっきは異世界感が溢れる武器屋を通り過ぎた。


ナーシャは人が少ない場所を通ると言っていたが、それでも狭い通路は人で賑わっている。職業も、老若男女も問わず、生活雑貨を求めて集まって来ているという感じだ。


それなりに人混みを掻き分けて進まなければいけないが、テントの間は爽やかな風が吹いているし、頭を焦がすがごとく強烈な陽光も日陰ここには届かない。

割と快適だ。


オレとナーシャは今、市場の中を移動していた。


職業ジョブの登録は通例、討伐者連合ユニオンの施設では無く、そのジョブに関係する場所で行われるらしい。

例えば討伐者バスターは早朝(臭くなる前)のユニオンのロビーで手続きをするし、シェトのジョブである盗賊シーフならば西区にあるらしい隠れ家で誓約せいやくを立てる……。

そして、これから魔剣鍛冶師(見習い)となるオレは魔剣の制作に使う炉の前で登録の儀礼を行うらしい。


つまり、今はナーシャのお父さんの工房に向かっている訳だ。

実の所かなり不安だ。

なぜなら……。


「(つちを握った事が無いって言うのはまだ秘密にしておこう……)」


都会生まれの都会育ちであるオレは鍛冶どころか、釘を使った工作すらした事が無いのだ。


あ、そういえば、中学生の頃は『技術家庭科』という実技科目があった……ような気がするが、残念ながら授業で金槌を使った記憶が無い。それどころか何かを作った記憶が無いってのはどういう事だよ……。


それもこれもクラスメイトの過保護な親が『危ないから』なんて言ったからだ。

その事を聞いた時は何とも思わなかったが、まさかこんな場所で使う事になるとは……。

工具一式の使い方を『知って』はいるのだが……。

持つのは初めてだ。


そんなオレが今日から鍛冶師になる。

全くもって未知の世界に飛び込む。

不安だ。


しかし!


流石さすがに知識として使い方は知っているし、昔、刀鍛冶に憧れて動画を見た事もある。

大丈夫だ。

こんなオレでも成功する素質があるらしいし、異世界あるあるで、『割となんとかなったよ!』っていう展開は多い……よな? たぶん。


それに、せっかく『魔剣』なんてファンタジー世界の物を作れるんだ。

学ぶ意欲なら人一倍ある上に、いきなり剣を打て、と言われる事は無いだろう……まずは見習い、雑用からだな。

もちろん、魔剣や武具を打ちたいと焦る気持ちはあるが、我慢だ。

ずは腰をえて、じっくり色々な事を学ぼう……ヘタレなオレだってそれくらいの覚悟はできている、と思う。


「そういや、オレの素質っていうのは何なんだ? この世界の文字が読めない事と関係があるのか?」


そう言えば、まだ聞いていなかった。

オレは鮮やかな朱色の葉野菜に目を奪われながらも、ナーシャに尋ねた。


まぁ。


関係があるのか? というか……関係があるとしか思えないけどな。

だって他に何があるって言うんだ?

鍛冶師の素質ってなんだよ?


中肉中背。金なし。

勉強は苦手じゃないが、平凡そのもの。


その上、運動は学校の底辺。


今も腕に力を入れても力瘤チカラこぶなんて出来ない。

先週の体育の長距離走では危うく吐きかけて、保健室送りになった。


思えば、オレは小学校の頃から運動が苦手で、体育の成績はずっと3(平凡)だった。それも実技教科で落第しない為のお情けで、その成績だ。


そもそも、オレが人生で持った一番重い物といえば……昨日まで背負っていた教科書と参考書が満載まんさいされたバッグ(5,6キロ)くらいのものだ。


ほらな? こんな奴のドコに素質があるっていうんだ。


動画で見た鍛冶師は、肩幅のガッシリとした骨太の、まるでドワーフのようなじいさんだったのを憶えてる。

少なくともオレみたいにヒョロヒョロでは無かった。

だから、オレの素質って言うのは体力とか知力とかそういうのじゃないと思うんだが……。


「………。」


って、あれ? ナーシャの返事が無いぞ?


後ろの通路を振り返ると、すぐ後ろにいたはずのナーシャがいない!

まさか、この人混みに紛れてオレを見失った!?

いや、この場合、迷子になったのはオレだ。

オレはこれから行く場所が分からない。

実際に迷子になったのはナーシャでも、実質、道に迷う事になるのはオレだ。


「お、お~い! ナーシャ!? あっ、すいません! 通ります!」


これまで来た通路を戻る為に、後ろに立ちふさがるオバサン達を掻き分けて進む。

八百屋……反対側の魚屋……そしてまた八百屋に戻る為に通路を横断……。

人混みのせいで、いっぺんに通路の両側を見る事は出来ない。オレは両側の店を交互に覗き込みながら進んだ。

相当に迷惑なヤツだろうな、と自分でも思う。


だが……幸運なことに、オレが元いた八百屋の前からジグザグに進んで五軒目、干し肉や大きな肉の塊が吊るされた肉屋でオレはナーシャを見つけた。


なにやら肉屋のオバサンと親し気に話をしている。

何故まだこんな場所にいるのか分からないが、とにかくナーシャだ。見つかって良かった。オレは無事、迷子イベントを回避できたようだ……。

同盟ユニオンの青い制服と風に揺れるポニーテールは目立つ。

なにせ、人混みの中の後ろ姿だけでもハッキリ分かるのだから。

本当に幸運だった。


オレが肩を軽く叩くと、ビックリした顔をこちらに向けた。

何かを言いたそうにしているが……


「あ! そうです! この方が新しく入った方です!」


再びオバサンの方に向き直ってしまう。

しかも、何故か紹介された。

仕方なく、オレは恰幅のいいオバサンに会釈した。


「そうかいそうかい。あたしゃあ、一時どうなることか心配したけども……、鍛冶ギルドもこれからは忙しくなるねぇ。……しっかし、『真眼』を持ってるなんて珍しいね、アンタ。こっちに来てからどれくらいだい?」


アンタ、と指をさされ、オレは周囲を見回した。


「アンタだよ! そこのボケっと突っ立てる少年。アンタの事だよ!」


オバサンはオレをした指をグルグルと動かした。

しっかし、失礼な。

異世界だから指を人に向けないっていう習慣は無いのかもしれないが……。『ボケっと』というのは確実にバカにされているだろう。


「オレ? オレは昨日の朝に来たばっかだけど……オバサン、誰だ? ナーシャの友達か?」


オレはムっとして答えた。

だが、オレの質問にオバサンは愉快そうに笑った。


「??」


何で笑われたんだ??

隣のナーシャを見ても楽しそうにしているし……何だかオレだけ置き去りにされている感がある。


やっぱり指をされるのは気分が良いモノじゃないし、何度も『アンタ』呼ばわりされて、オレの中では失礼なオバサンで評価が固まりつつあるんだが。


「あたしゃあ、ナーシャの叔母さね。見ての通り肉屋をしてるオバサンだよ。気分を害したなら悪かったね。こういうオバサンなんだと割り切っておくれ。あたしゃあ、もう変わんないよ。こう見えて齢だからね」


オバサンはワハハと再び笑った。

は、はあ……そうなんですか。


「ルーラ叔母さんはウチのすぐそばでお店をやってるの。さっきのお弁当のお肉も叔母さんの店のなのよ! 色々と凄い人なの!」


へぇ……、それは凄い。ぜひこれからもナーシャとは仲良くして欲しい。そして美味しいお肉を分けて欲しい。

オレはやっぱりこのオバサンが苦手だ。

近所付き合いは遠慮したい。


「今からお父さんのトコに帰るんです。叔母さんも今日は来れますか?」


「ああ、勿論さね。なにせ久々の新入りだからね! 盛大に祝わなきゃあね……コラ、少年。嫌そうな顔をするんじゃないよ!! 今日は特上の肉を持ってくからね! 」


別に嫌な顔をした覚えは無いんだけどなぁ……。

でも、何でこんなに好待遇なんだ? 盛大に祝う? 何の間違いだ? オレはタダの元受験生だぜ?

……となると、オレのその『素質』ってのを是非とも知りたい。

それが全ての鍵だ、とオレは確信している。


「なぁ、オバサン! オレの……」


素質って何?

そう聞こうとしたのだが、ナーシャによってさえぎられてしまった。


「じゃあまたね! 楽しみにしてますっ!!」


ナーシャはオレの手を握り、強引にオレを店から引き剝がした。

店を振り返ると何人か客が肉を注文しているのが見えた。

だが、既に、オレの関心は別の事に移っていた。


「(手がぬくい……)」


誰かと手を繋ぐなんて何時ぶりか分からない……。

それに、女子と手を繋ぐのは間違いなく初めてだ。


手の平が柔らかいし……あったかい……。

頬が火照る……。


オレは半ば夢見心地で引っ張られるままに人混みを掻き分け、市場を進んで行く。

引っ張られる事数分……一瞬に感じられる時間の後、少女はオレの手を放した。


動悸が収まらないし、頬が熱い。

握られた感触がリアルに手に残っている……。


「着きました! ココが私の家、と、父の工房です!」


ナーシャは嬉しそうに振り向いた。


「へ、へえ。そ、そうなんだ……」


「? どうしたんですか? 家はこっちですけど……?」


オレは少女の笑顔を見た瞬間、顔を逸らした。

その奇行にナーシャは首をかしげるが……。

ダメだ。

もう、暫くはナーシャの顔を真っ直ぐ見れる気がしない。


だが……一瞬窺い見た景色に、オレの中の何かが引っ掛かった。


なんと無くこの場所にとっても見覚えがあるのは何故だ?


この石段の雰囲気とか、この万年日陰になってる感じとか……。この薄汚れた建物とか……。

何だかとっても懐かしいんだけどなぁ……?


「そう、腰を下ろして通り過ぎる人達を一日中、静かに見る時とかに打ってつけの場所……」


オレはそう考えて……。



あ。

分かった。

分かってしまった。


「そんなトコで座ってないで、早く入りましょ! お父さんもきっと驚くわ!」


見るとナーシャの後ろ姿はもう既に石段の上、扉の前にある。


そしてやはり、その扉にも見覚えがあった。


まぁ、それもそのはずだ。

ずっと居たんだ、間違えようはずも無い。


日が差し込む、活気に満ちた通り……その中で一つだけ異彩を放っている建物……。

扉も立派なのだが……全体的に黒ずんで、赤く錆びた金具が寂れた雰囲気をかもしている。

そんな雰囲気が今朝のオレにはピッタリだったのだろう……。


そう、この場所はオレが今朝、魂が抜けたまま座り込んでた場所だった。


「(本気ガチで心配になってきたな……)」


失礼な話だけど……。

こんな落ちぶれた雰囲気の場所で学んだところで、オレは成功なんて出来るのだろうか……。

皆さん!

いつも読んで頂きありがとうございます!

おかげさまでアクセス1000件、そしてユニークアクセス500件を突破しました!!


ほんっっとうに嬉しいです!

いやぁ、学生である自分の書いた物語が沢山の方々に触れるのは初めての経験で、驚き、感動しました!

本当に毎回元気を頂いています。ありがとう!


さて、これからは物語も本格始動(?)。

更に精進を続けて行く次第でございます。


これからもどうぞ、よろしくお願いします!!!


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