ゆっくり
7/19 07:26
ご指摘により、文章が抜けていたことに気が付きました。
修正いたします。
「なるほど、戦力の拡大ですね」
「ああ。さすがに三人では双角王の迷宮ではやっていけないだろう」
今回はガイウスさん達が戦っている間に後ろから奇襲できた。
6人対6人で戦っている間は、ガイウスさん達を圧倒していた相手だ。
もし、俺たちが正面からぶつかっていたら、勝ち目は薄かったろう。
今回の勝因は、実質9人対6人で戦えたこと、最初に敵の要である魔法使いを倒せたことの2点に集約できると思う。
つまり、人数差と相手の連携の破壊だ。
決して俺たちが強かったから勝てたわけではない。
どんなに強い戦士でも、回復も支援も無い状況で、PTを組んだ複数の敵を相手にすれば、手も足も出ずにやられるだろう。
3人で6人を相手取る、というのは危険すぎる考えだ。
「そういう訳で、当面の目標としてフルPTを組めるようにする、というのはどうだ?」
シルヴァーナが尻尾をフルフルさせている。
「より大きな獲物を倒すために、群れを大きくする……。ご主人様! 私、なんだかワクワクしてきました!」
そう言うと、ムフーと鼻息を荒くした。
「あ、あのぅ……」
「ん、どうした?」
「フルPTを組むことには賛成です! でも、普通の迷宮でも、十分稼げるのではないでしょうか!」
珍しくカリンが反対意見を述べる。
「むっ! カリン、いいですか。ご主人様は私達の長として、王者の道を歩み始めたのです。我々はその道を阻むものを排除すれば良いのです」
そういうと、シルヴァーナがペシペシと尻尾でカリンを叩き始めた。
「ふあああ。でも普通の迷宮のほうが安全ですよう」
カリンが恍惚とした表情で更に反論する。
いいな。後で俺も尻尾で叩いてもらおう。
「まぁ待て、シルヴァーナ。カリンの言うことは尤もだ」
そう言ってカリンを尻尾から救出してやる。
「だがな……、遅かれ早かれ、双角王の迷宮に潜る必要が出てくるぞ」
カリン、意外と慎重派なんだな。
「俺達は迷宮で魔石を得て生活している訳だ。だが、双角王の迷宮が出現してから、大勢の探索者がそちらに入っている」
「はい、双角王の迷宮の魔石は高く買い取ってもらえますから!」
「そうだな。早晩、良質の魔石が大量に産出されることになるな。仮にだが、将来、その良質の魔石が一般に流通するようになったら、従来の魔石はどうなるだろう」
「……欲しがる人が減っちゃいます」
今は国がすべて買い取っているが、いつまでもその制度が続くとは思えない。
いくらオウガスタ帝国とはいえ、国費は無限ではないからだ。
研究や軍備に必要な量を確保したら、民間にも良質な魔石が流通するようになるだろう。
「そうなると従来の魔石の買い取り価格は?」
「……下がります!」
「そうだ。今のうちに準備しておかないと、将来、俺達は経済的に死ぬことになるかもしれない」
カリンは成程と、納得してくれた。
実際のところ、将来の魔石の値段など予測がつかない。
双角王の迷宮の危険性や、政治的な要因が不透明すぎるからだ。
ただ、大雑把にいって、双角王の迷宮の魔石と旧迷宮の魔石は、石油と石炭のような関係になるのではないかと予測している。
そうなると、従来の迷宮にしか潜れない、というのは危険すぎる。
どちらにも潜れるようにしておけば、生活が安定するだろう。
尤も、俺が双角王の迷宮を必要とする訳は他にもある。
「すまんなぁ……。二人には人と戦ってもらうことになりそうだ」
そう言って、まずは二人に頭を下げた。
「何を仰いますか、ご主人様。群れの為に他人と争うのは必然です!」
「そうです! それにスキルポイントも沢山貰えます!」
「そうか……」
ありがたい話だ。
思えば随分と二人には助けられている。
「実はな、二人には更に先のことで相談があるんだ」
そう言って話を続けた。
「フルPTを組むことが当面の目標ではあるんだが、その後も、可能な限り奴隷を購入して行こうと思っているんだ」
「!!」
二人が同時に反応した。
語らずとも意図を察してくれたようだ。
先ほど、シルヴァーナが“王者の道”と言ったが、それは半分当たっている。
少々立派すぎる形容詞だけれど。
一応釘を刺しておかねば。
「二人が想像するほど立派な考えではないぞ。ちょっと商売の手を広げて、できるだけ沢山の奴隷を使い、その暮らしが立つようにしたいだけだ」
その為にはどうしても交易で利益を上げる必要がある。
これが双角王の迷宮に潜る真の理由だ。
我ながら、中途半端な考えだと思う。
中途半端なうえに矛盾している。
本当に奴隷制が気に食わないなら、政治家になって改革するなり、打倒帝国を誓うなりすればいい。
奴隷にいい暮らしをさせたいという理由で、命の危険がある迷宮に挑ませようというのも矛盾した考えだ。
大体、俺だってシルヴァーナとカリンを奴隷としている訳だ。
それに、イズマイールの奴隷制は俺が想像していた程、酷い制度ではない。
家庭用の奴隷はそれなりの生活をしているし、奴隷解放制度だって存在する。
そもそも、現代の地球でも、奴隷に類する扱いは存在していたはずだ。
しかし……
「ご主人様! すごくいい考えだと思います!」
「ええ、とても立派なお考えです。私達はどこまでもご主人様に付いていきますよ」
二人は喜んでくれているようだが、どうにもこそばゆい。
「まぁ、その、そう言って貰えると……まぁ、ちょっと嬉しいな」
恥ずかしい。
俺はお調子者だから、二人に好かれると、好意に値する人物になろうとしてしまうようだ。




