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成果


「一体何があったんです?」


 迷宮を抜けて帝都に戻ると、俺は早速ガイウスさんに聞いてみた。

 迷宮の入り口はいつも以上に騒がしい。


 近くの軍の詰め所に入ると、ガイウスさんが早速説明してくれた。


「実はな、アキト達が出発してすぐに、迷宮に入って帰ってこないPTが増えだしたのだ。最初はモンスターにやられたのかと思ったが、そのうち血まみれで帰って来た者が“他国人らしきパーティに襲われた”と報告してきてな」


 するとさっきの敵も……。


「ああ。確認したが、あいつらは東の国、パルティアの探索者だ。俺は迷宮の調査をしていたわけさ」

「そうはいっても、あいつらは何処から迷宮に入って来たんです?」

「それは今から捕らえた奴に聞く」


 もっとも、とガイウスさんは前置きして、


「恐らく、他国にも双角王の迷宮の入り口があるのだろう」


 と言った。


「それは……大変なことになりましたね」

「全くだ。急にきな臭くなってきやがった」


 魔石は元々、国外持ち出し厳禁の戦略物資だ。

 もし双角王の迷宮が他国とつながっていたら、産出された魔石を巡って揉め事があるに決まっている。

 国境線上に油田が湧くよりたちが悪い。


「更に悪い話だが……」


 まだあるのか。


「双角王の迷宮の魔石な、ちょっと変わっていると言ったろう? 先日分かったことなんだがな、魔石を握って魔力を込めると爆発する性質があるらしい」


 実験した奴は災難だったな、とガイウスさんが言う。

 最悪だ。

 火薬じゃねぇか。


「そういう訳で、悪いが魔石を出してくれ。双角王の迷宮の魔石は、国が全て強制的に買い取ることになった」


 おとなしく持っている魔石を全て渡した。


「軍のほうでなんとかしてくれないんですか?」

「難しいな……。迷宮には6人ずつしか入れない。迷宮内のワープも6人ずつだ。バラバラになってしまって軍を整えられん。それに、迷宮内は複雑で狭い。とても軍事行動は取れん」


 たしかに、迷宮はパーティで動くには十分な広さがあるが、軍隊で動くには狭すぎる。

 特殊部隊なんて無いだろうしな……。


「軍でもパーティで動ける人材を育成するとか」

「ああ、探索者のパーティを参考にすぐにでも訓練を始めるつもりだ」


 双角王の迷宮には複数の側面がある。

 

 離れた土地を結ぶ交易路、魔石、火薬、アイテム……。

 どれを取っても莫大な利益が期待できる。


「他国との交渉は?」

「出来るだけ早く始める予定だ……が、期待できんな」


 ですよね。


「これだけの迷宮があるとなると、本当に双角王って居たのかもしれませんね」

「そうだな。だとすると、世界中にあの迷宮の入り口があることになる。交渉しようにも相手がどれだけいるか分からん。そうならないことを願うよ」


 そう言うと、しばらく双角王の迷宮には入らないほうがいいぞ、と忠告してガイウスさんは帝宮に向かった。






 今、俺の手元には金貨が87枚ある。


 内訳は、手元に残しておいた金貨が1枚。

 乳香を売った分が60枚。

 魔石の買い取りで1枚。

 報奨金が25枚だ。


 乳香の交易は大成功だった。

 途中で金貨にせず、直接、乳香商人と物々交換したのが効いたらしい。

 

 ルキウスさんの家に乳香を売りに行くと、他国の者が迷宮に入っていることを既に知っていた。

 ルキウスさんに乳香を見せると、


「この季節にこれほどの乳香を得られる者は居ないぞ!」


 と言って、金貨60枚を押し付けてきた。


 金貨20枚の元手が1週間弱で60枚になる。

 どれほど危険があろうと、身一つで出来る商売としてはこれ以上のものはないだろう。

 尤も、鑑定スキルと優良な買い手が必須ではあるが。

  

 オウガスタ帝国は双角の迷宮産のあらゆるアイテムを高額で買い取ることにしたようだ。

 魔石は1つ銀貨2枚で売れた。

 

 更に、他国の人間を殺してクリスタルを取ってくると、1人につき金貨5枚が払われるようになったらしい。

 俺たちは5人殺したので、25枚だ。


 どうやら、同様の制度を他国も採用しているらしく、双角王の迷宮はちょっとした戦場のようになっているらしい。


 お蔭で、命知らずの探索者たちが列をなして迷宮に入っていく。


 帝国と他国の交渉については、とりあえず迷宮の入り口が確認された隣国のパルティアとアカエア・テッサリア・トラキア連合王国に使者が出たそうだ。

 交渉がいつ始まるかすら、定かではない。


 まぁ、なんにせよ、この金の使い道を考えなければ。


「なぁ、このお金どうしようか……」

「どうしましょう……」

「ふぁぁ、見たこともない大金です……」


 三人で山分けという提案は即刻却下された。

 それならば、と皆で贅沢をしようにも、二人が一番喜んだのは、俺が作ったお菓子だった。

 小麦粉に牛乳、卵、バター、砂糖代わりにサッカラムを加えて発酵させ、ワインで戻した干し葡萄、オレンジ、イチジク、アーモンドを入れて焼き上げた。

 要はシュトーレンもどきだ。

 現在は寝かせてあるが、一切れずつ味見したら、二人に大好評だった。


「ふぁぁぁ、ふぁぁぁぁ」

「こんな贅沢なパン初めてです!」


 ……これ、売れるな。

 シルヴァーナは言葉を喋ってないぞ。

 味が馴染んだらもっと驚くだろう。

 

「なぁ、二人とも。奴隷増やそうか」 


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