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恋愛経験ゼロの私、愛の女神様に同情されて異世界転生! ~《不落の運命守護》で運命の伯爵様を守ります~  作者: 月城宮 雅仁


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第8話 王都出張へ行くことになりました!

「ユイさん! ちょっと相談があるんですけど!」


ベルマン商会で商品の確認をしていた私に、ミアさんが声をかけてきた。


「どうしたの?」


「これ、見てください!」


差し出されたのは、何枚かの注文書だった。


私はさっそく目を通す。


野菜スライサー。


伸縮式お掃除棒。


それから、最近販売を始めた小物類。


どれも注文が入っているようだけれど……。


「……あれ?」


あることに気付いた。


「同じお店から、何度も注文が来てるんだね」


「そうなんです! それで、まとめて注文できないかって相談されているんですよ」


「まとめて?」


「はい! 今は商品ごとに注文してもらってますけど、まとめて仕入れられたほうが便利だそうです」


なるほど。


確かに、そのほうが注文する側も楽だよね。


私は少し考えてから、ミアさんに尋ねた。


「ねえ、商品をまとめた一覧表ってある?」


「一覧表ですか?」


「うん! 商品の名前と値段、それから簡単な説明が書いてあるもの!」


ミアさんは首を傾げた。


「店頭には商品を紹介する札がありますけど、全部を一枚にまとめたものはありませんね」


「それなら、作ってみない?」


「……えっ?」


「お店の人が注文するときに、一覧を見ながら選べたら便利だと思うんだ!」


私は紙を取り出し、簡単な見本を描いてみせた。


商品名。


価格。


使い方。


それから、注文する数を書き込む欄。


前世で見た、商品カタログと注文票を組み合わせたようなものだ。


「わあ……!」


ミアさんの目が輝いた。


「これなら、お客様も注文しやすそうですね!」


「でしょう?」


「しかも、私たちも注文内容を確認しやすくなります!」


「そうそう!」


二人で顔を見合わせて笑った。


こういう小さな工夫も、商売には大切なんだろうなぁ。


「さっそく会長に相談してみましょう!」


「うん!」


◇


「……なるほど。これは便利だね」


私たちが作った一覧表を見て、オスカーさんは満足そうに頷いた。


「商品を売るだけじゃなく、注文する側の手間まで考えるとは。なかなかいい着眼点だよ」


「ありがとうございます!」


「ただ、価格や在庫の状況が変わることもあるからね。そこは定期的に更新する必要があるだろう」


「あっ、そうですね!」


「それでも、十分に使える。さっそく取引先へ配ってみようじゃないか」


こうして、ベルマン商会では商品一覧表を使った注文の受付が始まった。


すると、これが思っていた以上に好評だった。


注文する側は欲しい商品を選びやすくなり、商会側も注文をまとめて確認できる。


特に、ほかの街にある取引先からは喜ばれたらしい。


「ユイさん、これ本当に助かります!」


ミアさんが嬉しそうに言った。


「前は注文書を見比べるのが大変だったんですけど、今はずいぶん整理しやすくなりました!」


「よかった!」


「ユイさんって、商品だけじゃなくて、仕事のやり方も変えちゃうんですね!」


「そ、そんな大げさな……!」


前世では、こういう書類を使うことも珍しくなかった。


でも、こちらではまだ一般的ではないらしい。


……こういうことなら私にもいろいろできそう!


◇


それからの日々は、あっという間に過ぎていった。


商品の種類も少しずつ増えていった。


折り畳める収納箱。


片手でも開けやすい保存容器。


持ち運びやすい小物入れ。


もちろん、すべてがすんなり商品になったわけではない。


折り畳み式の収納箱は、最初の試作品では留め具が弱く、少し重いものを入れると形が崩れてしまった。


そこでガルドさんが角の補強を加え、何度も開閉しても緩まないように改良してくれた。


保存容器も、最初は蓋が固すぎて開けにくかったけれど、留め具の形を変えることで扱いやすくなった。


「……まったく、お前さんの考えるものは面倒なものばかりだな」


ガルドさんはそう言いながらも、どこか楽しそうだった。


「す、すみません……」


「謝るくらいなら、次も面白ぇものを持ってこい」


「……えっ?」


「同じものばかり作ってたんじゃ、腕が鈍っちまうからな!」


そう言って豪快に笑うガルドさんを見て、私も思わず笑ってしまった。


……本当に、いい人たちに出会えたなぁ。


商品を考える私。


それを形にしてくれるガルドさん。


販売してくれるオスカーさんと、ミアさんたち。


誰か一人が欠けても、きっと今の商売は成り立たない。


だからこそ、これからもみんなと一緒に頑張りたい。


そんなふうに思えるようになっていた。


◇


ある日の夕方。


仕事を終えた私は、ミアさんと一緒に街の喫茶店に立ち寄っていた。


窓際の席に座り、温かいお茶を飲みながらのんびりと過ごす。


最近では、こうして仕事帰りにおしゃべりするのが、ちょっとした楽しみになっていた。


「それにしても、ユイさんって不思議ですよね」


ミアさんが、突然そんなことを言った。


「……不思議?」


「はい。商売のことになるとすごく積極的なのに……」


「うん?」


「恋愛の話になると、急におとなしくなるんですもん!」


「ぶっ!?」


危うくお茶を吹き出すところだった。


「な、何で急に恋愛の話!?」


「だって、気になるじゃないですか!」


ミアさんは楽しそうに笑っている。


「ユイさん、今まで恋人がいたことってあるんですか?」


「…………」


私はそっと目を逸らした。


「……ないです」


「えっ!?」


「……一度も」


「本当ですか!?」


もう! 


そんなに驚かなくてもいいじゃない!


確かに、二十五歳で恋愛経験ゼロは珍しいと思うけど!


「じゃあ、好きな人は?」


「……今はいないかな」


「ええっ! もったいない!」


「も、もったいない?」


「ユイさん、優しいし、可愛いし、仕事もできるし、一緒にいて楽しいのに!」


……あれ?


なんだろう。


ものすごく褒められている気がする。


「そ、そうかな……?」


「そうですよ! 絶対に素敵な人が見つかりますって!」


ミアさんは自信満々に頷いた。


「……ありがとう」


なんだか、少し照れくさい。


でも、嬉しかった。


前世では友達の恋愛相談を聞くことはあっても、自分の話をする機会はほとんどなかった。


それなのに、今はこうして恋愛の話までできる友達がいる。


……うん。


異世界に来て、本当によかったかもしれない。


「ちなみに、ユイさんはどんな男性が好みなんですか?」


「えっ!?」


「優しい人? 格好いい人? それとも、お金持ち?」


「え、えっと……」


私は少し考えた。


理想の男性。


前世では何度も想像したことがあるけれど、実際に聞かれると難しい。


「……私のことを、大切にしてくれる人かな」


「……!」


ミアさんが目を丸くした。


「それから、一緒に笑ってくれる人がいいなって」


「……素敵!」


ミアさんは両手を胸の前で合わせた。


「いいですねぇ! そういう恋愛、私も憧れます!」


「えへへ……」


「でも、それだけじゃ駄目ですよ!」


「……えっ?」


「ちゃんと、ユイさんも相手のことを好きにならないと!」


「……!」


その言葉に、私は少し驚いた。


……そっか。


そうだよね。


誰かに好きになってもらうだけじゃなくて、私自身も、その人を好きになる。


女神様も、運命の人に出会えるとは言ってくれたけれど。


その人を好きになるかどうかは、きっと私自身が決めることなんだ。


「……うん!」


私は小さく頷いた。


いつか、そんな人に出会えたらいいな。


◇


そして、異世界に転生してから半年ほどが経った。


ベルマン商会で扱う便利グッズは、すっかり人気商品になっていた。


販売先も増え、リーベルクだけでなく、王都アルヴェリアを含むいくつもの街で取り扱われるようになっている。


私の収入も安定し、宿代や食費に困ることはなくなった。


貯金だって少しずつ増えている。


あの無一文だった頃が嘘みたいだ。


そんなある日。


「ユイさん、少し時間をもらえるかな?」


オスカーさんが声をかけてきた。


「はい! 何でしょう?」


「実は、王都の取引先から正式な商談の申し込みがあってね」


「……王都から?」


「ああ。今後、取り扱う商品の種類を増やしたいそうだ。それに、君が考えた新商品についても、直接話を聞いてみたいらしい」


「……わ、私に!?」


思わず聞き返してしまった。


「もちろんだとも。商品を考えた本人の話を聞きたいというのは、珍しいことじゃないよ」


「そ、そうなんですね……!」


「そこで、来週あたりに王都へ出向こうと思っているんだが……ユイさんも一緒に来てくれないかな?」


「……えっ!?」


王都アルヴェリア。


以前から名前だけは聞いていた大きな街。


そこへ、私も行くことになるなんて。


「も、もちろんです!」


私は勢いよく頷いた。


「ぜひ行きたいです!」


「はははっ! そう言ってもらえると助かるよ」


オスカーさんは嬉しそうに笑った。


「王都の取引先は、今後の大切な商売相手になるかもしれない。しっかり準備をしておこう」


「はい!」


……よし!


初めての王都出張!


なんだか、すごく楽しみ!


◇


その日の夜。


私は宿の部屋で、王都へ持っていく荷物を考えていた。


仕事用の服。


筆記具。


商品の説明に使う資料。


それから、必要な生活用品。


「……うーん」


旅行の準備って、意外と楽しい。


前世でも旅行は好きだったけれど、なかなか行く機会がなかった。


今度は、異世界の王都だ。


どんな建物があるんだろう。


どんなお店が並んでいるんだろう。


もしかしたら、すごい魔道具なんかも見られるかもしれない。


「……ふふっ」


自然と笑みがこぼれた。


そういえば、王都には貴族の人たちもたくさんいるんだよね。


……もしかして。


「……素敵な人、いたりして!?」


思わずつぶやいてしまった。


いやいや!


何を考えてるの、私!


仕事で行くんだから!


でも……。


もし、そこで運命の人に出会えたら。


なんて…ちょっとだけ期待してしまう。


私はバッグの中に荷物をしまいながら、窓の外を見上げた。


夜空には、無数の星が輝いていた。


「……アモリア様」


小さくつぶやく。


女神様。


私、異世界に来てから半年が経ちました。


最初は何も持っていなかったけれど、今では仕事もあるし、友達もできました。


毎日が楽しくて、少しずつ自分の居場所もできてきた気がします。


だから。


もし、本当に運命の人に出会えるのなら。


その人とも、こんなふうに笑い合える関係になれたらいいな。


私はそっと微笑んだ。


来週は初めての王都出張。


どんな出会いが待っているのか、とても楽しみだった。

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