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歌舞伎揚を齧っているだけだったはずの異世界生活の話  作者: 宮清水 和


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レティーシャは語る 宝玉と魔石

「私の、能力でですか?」


「そうだよ。大丈夫、ちゃんと指示するし簡単なはずだよ」


 簡単なはずだとレティさんは言い切るが、そこには認識にズレがあると思う。

 ただ、そこを指摘した所でこの人は決断した後の行動力は凄いからなぁ。

 成り行きを見守るしか今はないか。


「この杖に付いている石、この宝玉だけど特性は物によって多少の違いがあるけど本質はどれも一緒なんだ」


「さっき外で教えて頂いた魔力の増幅、と、えーっと扱い方が上手くなるんですよね?」


 指向性がどうのという話を簡単な言い方にしているが、リルさんの言った事は大体は当たっていると俺は思う。


「うん、その通りだよ。そしてその知識を持った上で今から説明するのは魔石の話」


 なんだ?宝玉と魔石って違う物が存在しているのか?

 宝玉が水晶で魔石は魔力を帯びた鉱物っていう印象が俺には強いんだが。


「横からすみません。宝玉と魔石は別な物質なんですか?」


 思わず話している二人の会話にしゃしゃり出てしまった。


「いや?同じ物だよ。でも在り方と特性が違うんだ」


 なるほど、よく分からないな。

 やっぱり黙ってしばらくは話を聞くしかない。


「う〜ん……難しそうなので大人しく説明を聞きます。すみませんでした、続けてください」


「難しくなんてないよ?宝玉の素材の密度が高い物が魔石って呼ばれているだけ」


 炭素が地圧で圧縮されてダイアモンドになる位の感覚で考えていいのだろうか?

 レティさんの説明は続く。


「この杖の宝玉はもっと大きな塊から切り出したか、削り出した物を研磨してこの球状にしたものなんだ」


 杖の宝玉を撫でてみたりペチペチと叩いてる。

 貴方の所有物だから別に構いませんがね、それ、お高いんじゃないんですか?

 そんな雑に扱わなくてもいいんじゃないですか?


「それでね。宝玉の元の塊が深い深ーい地中の奥の力でギュッと長ーーい年月凝縮されて出来上がった物が魔石と呼ばれるんだよ」


「そんなに強い力でこんな硬い物をギュッとしたら割れちゃいませんか?」


 至極当たり前な質問をリルさんがする。


「割れて少し欠片とかが取り残されるけど、基本的に逃げ場がないから一点に集中していって密度が上がるの」


 おぉ!凄い!!

 レティさんって最初アラダリさんにこの辺の地質に興味があるって嘘をついてこの宿場に来たって言っていたが。

 多分本当に地質学とかの知識があるぞ。

 道中こんな話でもアラダリさんに語ってたら普通に信用するぞこれは。


「だから宝玉より地中の深い所に魔石は眠っている。地殻変動で大地が隆起……」


 なんだ?どうして説明を止めたんだ?


「……とんでもなく大きな地震で山が出来るみたいな事でもない限り掘り出されないんだ、地上に出てこれないから」


 言葉が難しいというか、理解されないと思って噛み砕いた言い方に変えたのか。

 これもムラタさんの知識が影響しているんだろう。

 だが、俺はともかくリルさんが地殻変動とか隆起なんて言葉を知っているかは確かに怪しい。

 それを理解しやすい言葉に変えた、気遣いが出来る人だな。


「さて、リル。刃こぼれのナイフを圧縮したのと同じだよ。この宝玉を君の力で圧縮するんだ。不純物も分離させてね?」


 「今日の晩ごはんのおかずはサバの煮付けが良い。骨も取ってね?」みたいに軽くいう事じゃないでしょ、これって。

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