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歌舞伎揚を齧っているだけだったはずの異世界生活の話  作者: 宮清水 和


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王都に向けて 三

「(なんでリルが大きな声出してたの?親子喧嘩?理由はどうあれ最初から、というか始まる前からこれじゃ困るよ)」


「(赤髪のエルフ、貴方がレティーシャ様ですか?)」


「(そうだよ。えーっと君は、まぁリルの母親だね?何があったか説明出来る?)」


 レティさんはリルさんでもルゼルさんでもなく、母親のリネットさんに話し掛けている。

 先ほどまでのやり取りを聞き出しているのか?


「リル、私達の会話を可能な限り簡単でいいからモビーに伝えて」


 リネットさんとの会話の途中でこちらを見てリルさんに通訳の指示を出したレティさん。

 正直、個人的には話が落ち着いてから内容を説明されても良いんだけどさ。

 おそらくこれはあれだな。話の途中でリルさんに会話に入ってこないように役を与えたんだろう。今は感情的になっているし。


「分かりました」


 リルさんの淡々としている返事だが、どこか不服というかそういう感じが口調から感じられる。

 そんなリルさんの事はさておきレティさんはリネットさんと会話を続けていく。


「…………私が家族を紹介した際に父さんがモビーさんに対して、失礼な事を言って私が怒鳴ったという説明をしています」


「簡単に説明すればそうなんですね」


 簡単に言えば、そうでしょうね。実際はどこまでの内容の会話をしていて、どこまで説明していたかはリルさんというフィルターを通してしか俺には伝わらない。


「(なるほど。大体は理解したよ、ありがとう。さて)」


 レティさんは引き続き何か頷いていたりしてリネットさんと会話していたが終わったのか、今度はルゼルさんの方へ歩み寄っていった。


「(奥さんから聞いた内容で間違いないかな?えーっと君の名前は?)」


「(ルゼルと申します、閣下)」


「(君もそう呼ぶのかい?せめてご主人様程度にしてほしいけど、まぁ好きに呼びなよ。で、間違いない?)」


「(はい。失礼ですが、私達家族は何か特別に秀でたものもない一般的な家族です)」


「(だから娘や妻を性欲の相手に宛行うなんて色々勘ぐったって?)」


「(はい)」


「(あのさぁ。私達が何をして、事を大きくして面倒な事になっているかしらないの?その辺の事情くらい察してもらえれば君の想像するような事が起きる可能性はかなり低いって思わなかった?)」


 ………………。

 ふむ、なるほどねぇ。少女、でいいんだよね?20歳位らしいけど見た目少女だったし。

 あの子を助ける為にこの町で一番権限が大きい団体の代表を力技と権力で押し切って制圧したんだ。

 原動力は女の子が可哀想だから、位で。

 そうだなぁ、それに同行している俺をもっと信じて欲しいって気持ちにはなるか。


「(ですが、あぁ、いえ。閣下の言う通りではあります)」


「(それでも不安だっていうのは分からなくはないよ。ふむ、何ならこの町に残るかい?)」


「(よろしいのですか!?閣下!)」


「(別に構わないよ?ただ、リルだけは連れて行く。彼女には連れの為に通訳をしてもらわないといけないから)」


「(いけません!ルゼルダメよ!私達はレティーシャ様の使用人としてお供するべきだわ!)」


 ん?リネットさんがなんか大きな声を出した?

 ………………。

 え、ここに残るかどうかの話?残れるなら残った方が良いんじゃないの?


「(リネットは賢いね。でもあえて問うよ、私と一緒に行動する理由は?)」


「(……私達の奴隷としての権利をレティーシャ様が買い上げて下さり、それに対して、何事もなくこの町で再び暮らしていけば他の人達に何をされるか)」


「(そういう事だよね。ルゼル、君はそこまでは考えていなかったのかい?)」


 …………。

 ルゼルさんが押し黙ってしまった。

 なんか世知辛いっていうか、余裕がないんだなぁやっぱり。

 制限もなく奴隷の身分から解放されて自由になっても周囲にはいつでもどこかに連れて行かれる人達しかいない。

 嫉妬か何かで理不尽に酷い目に遭わせる他者がいない訳はないか。


「(さぁ、分かったかい?私に買われた時点で、私かモビーの傍にいないと、君達家族だけではこの町にはもういられないんだ)」


 ……。

 レティさんの言葉に未だに俯いて押し黙っている。


「(まぁ心配しないで良いよ。モビーの貞操観念はなかなか厳しいよ?私の色仕掛けや誘いに乗ってくれないからね。欲望の捌け口で拒む相手を襲ったりなんかしないよ)」


「(信じて、よろしいのですか?)」


「(大丈夫大丈夫。それに、彼は初めて私の足を洗ってくれた男性なんだ。私は信頼しているよ?)」


「(!それは、なんと。……分かりました、閣下とあの男性を信じてみます)」


 ………。

 信頼してくれているか。

 素直に評価を喜んで、信頼を裏切らないように努めないとな。

 なんか、話していた長さの割には内容は少ないな。リルさんが要約してくれているのかな?

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