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歌舞伎揚を齧っているだけだったはずの異世界生活の話  作者: 宮清水 和


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ギルドにて やはり言葉の壁は厳しい 五 終

「好奇心は猫を殺すか、ですかね」


 他に何と言ったら良いのだろうか?

 人とは愚かな生き物だ、結構この台詞を聞く機会は多い。

 歴史学者、政治家、経済学者、各宗教での説法、色々な立場の人間がこれを口にする。

 倫理が狂ってしまうと特にこれは起きやすい。今回はどうだろうか?

 今現在、俺達の前で回転してこちらの返答を待っている魔法陣。こんな物は誰も見た事もないはずだ。更にこの魔法陣は今までのこの世界の魔法の在り方とは別の物を提示してきている。

 だからこそレティさんは知的好奇心をどうたら言っているんだろう。

 これは新時代の幕開けとなるか、世界を終わらせる切っ掛けになるバタフライ・エフェクトか誰にも分からない。


「正直な話、俺は無理に魔法を使えるようになりたい訳じゃないんですけど……何て言うんでしょうね?この手の事は…………?」


 いや、待てよ?何故俺達が責任をどうこうという話になる前提で物を考えている?

 俺がこの世界で何かを作り出した結果で今後、世界がどうにかなるっていうなら責任がある。しかし、今はどうだ?

 そもそもあった物が使われていなかった別の仕様を提示してきたんじゃないのか?

 最初からあったが使われてはいなかった物だ。使われてはいないが使ってはいけない訳じゃないのでは?

 無責任でも良いんじゃないのか?別に表立って何かしようってんじゃないし。

 うん。


「イエス プリーズ ラン…………?」


 言ってしまった。これで認識されるか分からないけど。


 Confirmed Mode change activated


 コンなんたらが聞き取れなかったが、モードチェンジアクティベート?べーテッド?は分かった。

 多分変わったじゃないのか?

 魔法陣も消えてしまったし。

 でも何で今の対応だけ音声で返してきたんだ?


「あの、すみません。今のでおそらく切り替わったと思います」


「え?」


 良かったのかなぁ……?どうかなぁ……?


「本当に?良いの?」


 良いのも何もねぇ。

 レティさんは目を潤ませて俺をジッと、俺の目をジッと見てくる。

 何だこの圧は?止めてくれないかなぁ。


「モビー、そこまで……してくれるんだね」


 何が?俺は無責任に魔法の魔力供給を個人の魔力から周囲にある熱量と交換するモードを切り替えただけのはずなんだけど?

 レティさんが何を考えているか分からないが、魔法の実行を試してみたい。いや、直ぐに試した方が良い気がする。


「とにかく、試してみます。一度離れてもらっていいですか?」


「え……何で?」


 何でそんな不安気な、乙女みたいな声と雰囲気を出すんだ!


「周囲、環境の熱を奪うらしいんです。それが物なのか大気、部屋の中の空気なのか、接触している生物とか……とにかく分からないんですよ」


 万が一こんな密着していて発動してレティさんの体温、熱を奪ってしまったら、それはとても恐ろしい。


「あぁ……そういう……うん、分かったよ」


 素直に退いてくれた。

 俺自身もソファーから立ち上がって、床に足を接地させているだけの極力物体に身体が接していない状態を作った。


「それじゃ、やってみますね?」


 人さし指、指先に意識を集中させる。魔法陣が出た。

 そして今度は最初にレティさんの補助を受けた状態同様に火が指先に出現した。

 どうしよう、本当に出た!モードチェンジが成功している!!

 レティさんの方を見ると、両手を口に当てて覆うようにして驚いている。そういう漫画的な反応を本当に人間はするんだ。

 ていうか、さっきから潤んではいたけど完全に涙目だ。感涙なの?そこまでの事なの?

 ヤバい事しちゃったんじゃないの、俺?

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