砂漠で歌舞伎揚を齧る 六
「呪いの検証結果がこの国の王侯貴族やちょっと遅れて商人に知られた後は凄かったらしいね。何せまだ樹の離れた所にオアシスがある程度でなーんにも無かった樹の周りにそういった偉い人達が使用人とか大勢引き連れて押し寄せてきたんだって」
「どこかから情報が漏れたって事で?」
「いいや、即死魔法の実験の時に国お抱えの祈祷師だったか魔術師にも助力を求めたからそこから普通に国に結果の情報が伝わっただけ。普通ならそんな事には国のそういった人材は派遣しないけど、事が事だからね?」
「嘘でも基本的には失う物が少ない、逆に得るものが大きかったと」
「失う物は少なくもないんだよ。移動する際の物資とか人員とかね?でもそれに目を瞑れる程の魅力は有ったね、確かに」
「あの、こんな聞き方して良いものか分かりませんが。そんなに恨まれていたんですか?王族とか貴族って」
「当時はそんなに悪くなかったはずだよ?民衆に無理な税を課していたってこともないし。まぁ不満を言う位はあっても恨んだり呪いに至るような事は無い位だったんじゃないかな。でも民衆はそんな感じでも今度は身内で争うからね。」
「権力闘争とかで身内に呪殺されちゃうと?」
「よくある話だね。自分の親や子、兄弟姉妹だってそうなると安心して接する事なんて出来なくなっちゃう。そんな心理状態の人間はいつもゆっくりなんて眠れないだろうね」
歌舞伎揚を手に取って半分に割ってから食べ始めた。確かにそに方が食べやすくなって良いんだと思うけど、このタイミングで時間を掛けて食べなくてもと思わなくもない。
しかし、なんだろう。この食べている間に色々と俺に考えさせてくれる時間を与えてくれているんだろうか?
等と考えていると割った残りの片方も食べ始めた。なんか、話の内容を考えるよりレティさんが食べるのが遅い子供みたいに見えてきた。
食べて水を飲み口の中の物を流し込むレティさん。話の続きが気になる。
「ふぅ、ちょっと疲れたかな。オネーサンお昼寝したいんだけど良い?」
ここに来てそんな話の切り方があるか!ここからどうなるんだよ、続きは!?
「なんで!?ここからその都市が発展したからどうとか人がいない状態になるまでが面白いんじゃないんですか!?」
「興味をそんなに持ってくれたのはうれしいけど、ごめんね?君の事を昨日から待っていたって言ったよね?本当に君が現れるかちょっと命掛けだったんで会えて安心で来たのかな、興奮が落ち着いたら眠くなってきたんだよ」
「あ、そう、なんですね?まぁ、それは仕方がない、ですね。実際俺はレティさんに会えてなかったらずっと訳も分からず不安だったでしょうから。すみません、ありがとうございました」
そうだ。この人とここで出会えていなければ俺はどうなっていた事か。
ここへは辿り着けただろうが、その後はどうだ?気を紛れさせてくれただけでも十分にありがたいじゃないか。昼寝をする位どうって事も無いだろう。
俺にはそもそも何をするでもない、出来るでもない時間しかないんだから。
「いえいえ、どういたしまして。こっちこそ、ありがとうね。本当に来てくれて」
俺の右手を取るとレティさんは自分の胸の高さまで持ち上げ、両手で包み込んで握ってきた。
じっと、真っ直ぐ俺の目を見てくる。なんだろう、気恥ずかしくて堪らない感覚だ。
「じゃ、ちょっとこっちにおいでよ」
さり気なく手を下げそのまま右手だけで握り直して俺は手を引かれて彼女の後を着いていく。
さっきまで座っていた正面のホールっぽい場所の奥に簡素だがベッドが2つ設置してある個室があった。窓はなく感覚6畳程だろうか?
ベッド自体は古そうだし簡素だが敷いてある布団?なんだろうか、とにかくそういった物は新しそうで木の板や石の上で寝るより格段に良い寝床だ。
「このベッドは昔からあるものだけど、まぁまぁ使える物だったよ。敷いてる寝具は私が持ち込んだ新しい物だから虫とかの心配もいらない、しばらくはここで私と寝泊まりして色々学んでもらうつもりだよ」
そう言うと、ゴソゴソと上着を脱ぎ薄い肌着だけになって靴を脱いで2つあるベッドの1つにモゾモゾと入って寝る準備に入った。
「さ、君もとにかく寝たほうがいい。夜になったら気温が急激に下がるけどこの部屋は私が魔力で室温適度に保っているから。後は起きたら考えよう、時間はまだ2日はあるから」
言い終わると彼女は直ぐに寝息を立てて眠り始めた。そんなに疲れていたのだろうか?だとしたら悪い事をしてしまったかな。
まぁ、実際室温はさっきまでの部屋より心地いいし、俺も寝ておく事にした。
あれ、なんで最初からここで話をしなかったんだ?
疑問を残しつつ俺も仮眠することにした。




