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歌舞伎揚を齧っているだけだったはずの異世界生活の話  作者: 宮清水 和


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砂漠で歌舞伎揚を齧る 五

「その樹は大樹っていうかもう巨樹って感じの大きさでね。実際君の想像したようにその樹の周りにはオアシスもあったし樹の下は大きな木陰で涼しい、それで人が立ち寄る事が偶にはあったけどそれでもあくまで休憩とか一時的に何泊かする程度でその場に住み続けるような場所じゃなかったんだ」


「でも、それ以上のその場に留まる理由があったんだ。偶然だけどそれに気付いた者が現れたんだ」


 興が乗ってきたのか、水を飲んでも歌舞伎揚には手を出さないな。それになんかこの雰囲気話が面白くなっていきそうな気がする。


「本当に偶然でね。樹の周囲にいると呪詛、呪いの類が効力を失う事に気付いた旅の者がいたんだ。それに気付いた人には皮膚が蛇とかトカゲの皮みたいになっていく呪いが掛けられていたらしい、その人の左手から腕に掛けて徐々に変わり続けていて肘まで変化していたって話だよ。人伝で見た訳じゃないけど……とにかく、その呪いを受けた人が樹の近くで一晩過ごしたら目に見えて呪いで変わってしまった腕が元の状態に戻っていたそうでね。多分この時は理由は分からないけど呪いが解けたと思ったんだろうね、実際そういうの無くもないし」


 ここで小休止とばかりに歌舞伎揚を1枚食べるレティさん。また食べ終えるのを見守り、水を飲み終えるのも待つ。


「それでね、その呪いが解けたと思った人は喜んでその場から帰っていったんだ。でも残念ながら樹の側を離れてからしばらくするとまた左手の指先から皮膚が変化するのが始まった、その人は絶望したはずだよ、解けたと思ったから尚更に」


「上げて下げられたらそりゃ辛かったでしょうね」


「ん?なに?上がるとか下がるとかどうしたの急に」


「あぁ、そういう言い回しがあるんですけど気にしないで続けてください」


「そう?うん、えっとね。その呪いがまた発動した人が今度は内容は違うけど同じく呪いが進行している人を2人程連れて樹の下に戻って1泊してみたんだって。結果は想像通りで3人全員が呪いが解けた、いや、これは正確には正しくないね。呪いが効かなくなった?の方が正しいんだね、離れたらまた効力を発揮し始めるんだもの」


 それは確かにすごい。現代では科学的にあり得ない、オカルト知識だったり古い呪い(まじない)程度でもここにはちゃんと存在して行使される力。それをキャンセル出来るなんて。


「そうなったらもう、人類っていうのは検証だとか実験なんてのをしてどこまでも調べるのさ。分かった事は先ず、呪いが効力を失う範囲と距離だね」


 どこの世界、どの分野でもそういった知りたがりがいるんだな。この場合命とかに関わるんだから必死さが違うか。


「これは廃棄された都市の初期そのものがその範囲だね。結構大きいんだ。効果の範囲がここまでって分かったからそこを出ないように内側から大きくなっていったんだ。でも、効果がない外側にも都市はある程度発展、拡がっていった。呪いは関係ないけどそこに集まる人に商売する人とかいるからね」


 商売する人は逞しい。


「そして次に分かったのが呪いにどう影響しているかだよ」


 水を飲むレティさん。


「こういう時に実験する人間ってやっぱりどこか頭がぶっ飛んでるんだよ。その実験した人達がやったのは呪われる人に複数人で連携して多重の呪詛によって即死させるものだったんだってさ」


 本当に頭がぶっ飛んでいる。知識や結果の検証の為に文字通りに命を掛けるのか?クレイジーだ。


「結果、呪いは発動しなかった。手応えもなかったって聞いたよ。次に試したのが徐々に皮膚が変わる最初に気付いた人と同じ物。これは即死が発動しなかったのは言ってしまえば一瞬で発動するもの。最初さえ乗り切れば発動しないのか、永続的な変化を与えるものなら樹から離れれば発動するのか、という点が気になったんだね」


「本当に色んな事気になるんですね」


「敵を知るのは大事だよ。知っていればそこを意識していればより安全だもの。で、結果は樹を離れても呪いがいつまでも発動しなかったんだって。これは最初の即死の時に気付くべきだったんだけどね。手応えがなかったんだもの」


「でもこの意見は後世の私達は知った上でだから出来る見解で分かっていなかった当時の人達は真剣に調べたんだからそこは配慮しないといけないよ」


「そうですね」


 後からだったら誰でも何とでも言えるもんな。


「さてさて、以上の事を踏まえてだよ?こういった場所、物件はどういう人に魅力的かな?」


「ここにきてなぞなぞですか?」


「私が話してばっかりだとつまらないでしょ?聞き手にも参加してもらって話に興味を持ち続けてもらう、語り手として用いる手段だね」


「今の時点でも十分興味持続してますし、レティさんの話は聞いていて面白いですよ」


 それに、こういう流れで質問されるとか俺は嫌いなんだよね。


「え、ちょっと、やだ、なに?オネーサン煽てたって魔法くらいしか出せないよ?」


 見た目少女でニヤけながら顔を赤くして照れている姿はとっても可愛いのに、手を顔の近くでパタパタとさせているその照れ方がなんかおばさんっぽい。てかチョロいのかな?

 魔法が使えるって、それは十分すごいんじゃないのか?


「まぁまぁまぁまぁ良いじゃないか、オネーサンに付き合ってよ」


「はぁ……そうですねぇ。呪いだから悪徳商人とか悪政を行う為政者じゃないんですか?恨み買ってるって人達ですよね?」


 おぉ……なんかすっごくニヤけてる。正解なのか?


「いいねぇ分かってるじゃない。そうその通りだよ」


「想像しやすいのはその辺ですからね」


「そういった人間達がどんどん樹の周りに集まってきたんだよー。集まってくるのが金持ちやこの国のお貴族様や王族だよ?どんどん発展していったんだよ、金に物を言わせて」


 神の如き力の樹の周りが俗物で固まっていく、なんて話だ。めっちゃ人間っぽい。

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