ギルドまでの帰り道 一
あの後、ご両親への説明はリルさんに任せて俺達はギルドに戻る事にした。
レティさんが自費でこの町の負債を実質買い取る形で解放するに辺り、リルさん一家が最初に選ばれた事。その決め手がリルさんが日本語を理解出来ていた事が理由。
同行者の俺が日本語しか理解していない、これからそれでは困るから。
そんな事でだけとも思われるかもしれないが、一家まとめて、それも購入相手は町の解放者になる予定の人物の意向。
何よりもどうせその内に何処かへ家族をバラバラにされて売られる未来しかない、ならこの機会に乗ったが良い。
そう説得、説明してもらう予定らしい。
「色々言ってはいるけど結局は売られる側、断る事なんて出来ないから茶番ではあるね」
元も子もない事を言ってしまう、もしかして人を助けるという事に対して照れ隠し何だろうか?
「そうは言っても救いも希望もない見限り掛けている人生だ、降りてきた蜘蛛の糸には手を伸ばしてしまうんだろうね」
自身の行いへの卑下のつもりか何なのか、あまり良い言い回しをしないな。
ていうか、蜘蛛の糸知ってるのか?こっちの文学作品なんだけど?
「レティさん、蜘蛛の糸って話を知っているんですか?」
「うん?あぁ、知っているよ?盗賊が気まぐれに助けた蜘蛛の縁で、地獄に落ちてから神にその助けた蜘蛛の糸で地獄から引っ張り上げてもらう際に暴れて結局落ちて助からない話でしょ?」
「内容はそのままの話ですが、どこで知ったんですか?俺の居た世界のお話ですよ。ムラタさんに教えてもらったんですか?」
俺の問いにしばし考え込んだ後レティさんは自分でも不思議そうに答えた。
「そう言えば何で知っているんだろうね?ムラタからは教わっていない、でも知ってはいる」
「教わっていない?忘れてしまったという事ではなくですか?」
またしても考え込むレティさん。
困惑するといった感じよりも逡巡しているような雰囲気がする。
「いや、教わっていないねでも知っているよ……もしかしたらこの知識もムラタの能力に由来しているのかもしれないね」
他にも意識していなかったが慣用句も思考に出てくるらしい。
「まぁ、それは何でも良いかな?私も溺れる者だ、藁でも掴むし目の前の蜘蛛の糸にも飛び尽くさ」
こんな風にね。そういって俺の左手を握ってきた。
何か色々台無しだな、こういう事を突然やってくるからなこの人は。
レティさんが握ってきたのでとりあえず町を一緒歩いていたが帰路でもまた井戸端会議に遭遇、またレティさんを背負ってしばらく歩く事になった。




