レティーシャに進行を委ねない 三 終
リルさんの家族が今どうしているかも少し気になる。しかし、これは俺も悪い所だ。この話が終わってから尋ねてみよう。
「家族全員を宿場に留まらせてそこに一緒にいるのはダメなんですか?最初は、あーいや、俺じゃなくて、あっち?そっち?とにかく俺じゃない俺はそうしたんでしょ?」
俺の方は見もせず、目を瞑ったまま天を仰いでレティさんが応える。
「状況が違うんだよ。その最初は、この町に人の流れが発生していないから出来たんだ」
「でも時間差があるじゃないですか?行きの期間と王都に滞在する数日で情報が拡散するまでは大丈夫なんじゃないですか?」
「それはそうなんだけどねぇ……ここの人間もどう動くかわからないのがねぇ……?」
そうか、ここの人間にも色々いるのか。
昨日の事、ギルドの中枢に急襲を受けて今は全面的に従っていても落ち着いてきたら考えも変わる。
腹いせにレティさんの関係者の俺やその購入した奴隷に危害を加える程度の発想を持つ奴も出てくるかもしれない。
「なるほど。確かにどうなるか何て分からないですね」
少し怯えすぎているかもしれないが、俺が変な能力持っているばっかりに面倒なんだよな、これ。
「いっその事、リルさんと自分が1日だけ別行動して岩を加工して居住空間を作ってそれを発見した事にするのはどうですか?」
「それでそこに全員で移住して私が戻ってくるまでやり過ごすか……まぁ、悪くはないか」
「水や食べ物はモビーさんがいらっしゃれば困らないですからね」
「あまり長期間は推奨出来ないですけどね、食が偏るのはちょっと」
「それでぇ……それで行くしかない、かなぁ」
何故今までそんな人工物に空間が見つからなかったかとかは、もうこの際どうとでもなるだろう。
俺のいた世界だって歴史的な見解がひっくり返るような遺跡が発見される事は近年でもあるし。
「なるようにしかなりませんよ」
少し投げやりな言い方になってしまうが、実際もう悩んでいても時間ばかり浪費して先に進めない。
多少無計画でも進んでみたって良いだろう。
「そうしよっか。ん、じゃあ後はリルの家族に説明というか根回ししないといけないね。そう言えば、予想外の事ばっかりで後回しになっていたけど、ご両親と妹さんは?」
「両親は普段でしたら、工房で他の人達と一緒に持ち込まれた剣や槍なんかの補修をしていて夜まで戻らないんです」
水がなくてもそう言った事は出来るんだ。
あぁ、でも確かに鎌やナイフを研いでいる動画でも水ってそんなに使ってなかったな。
それ基準で考えてしまうけど生活用水程度でもメンテナンス位は出来るな、うん。
「でも、昨日のギルドでの事が影響しているらしくて。もしかしたら工房で作業をしないで話し合いをしているかもしれません」
そうなるか、結構な大事だったし。
この鬱屈というか皆が明日に希望を持てない環境で、昨日みたいな事が起きればな。
今日位なら仕事をしている場合じゃないとなっても仕方ないか。
「そうか、それは迷惑を掛けてしまったね。それで妹さんは?」
「ロニィも両親と一緒です、鍛冶ではなく母の雑務の手伝いです」
「あれ?では今日はリルさんだけが留守番って形でここに居たんですか?」
「はい。昨日の夜遅くに今日ここに私達の売買先になるかもしれない客人が来るとギルドから人が伝えにきて」
結局昨日は今から買いに行くかとか言って話だけして止めたけど、あの小柄な男直ぐに根回しはさせていたのか。
通りで朝からここを目指す訳だ。
「私が家に残っていたのは偶然だったんですけど、結果良かったと思います。お二人の事を信用できますから」
「そうだね、実際こっちも助かったよ。他の問題も出てきたけどそれはお互い様だ、これから私達はまた長い付き合いになる。よろしく頼むよ」
また、と言うのは女性陣の事だけか俺も含まれているのか。
しかし、話に違いがあるのを見る限りこの二人は違い未来からここに逆行してきたようだぞ?
まさかこれから先、もっと増えたりしないよな、俺じゃない俺の関係者。




