レティーシャに話の進行を委ねない 二
「また突飛な事を言いますね。でも、聞きましょう」
頭ごなしに否定してはいけない、かえって話がややこしくなるに違いない。
「おそらく、リルの力で巨大な岩の塊そのものに出入り口を作る事が出来るはずだ。道具も時間も必要なく」
「確証は?さっきのナイフは小さかったですよね?それも小さく圧縮したり、大きく広げてみたり。細工が出来ると思いますか?」
「細工は出来る、と思う。ナイフの刃こぼれを直したって言うなら掛けた部分を補ったんだよ、そこにある素材で」
なるほど。確かにそう言われてみればそうなのかもしれない。
「あの、多分出来る、と思います」
リルさんが意見を出す。何だ?何か彼女自身に確証があるのか
?
「えっと、少し見ていてくださいね?」
そう言うとリルさんは着ているチュニックの裾を右手で摘む、光ったりする訳でもなく、一瞬でただの裾がレース状の意匠を施したデザインに変化した。
「うわ!?何ですかそれ!?形状が変わりましたけど!?」
「思った通りの見た目とはちょっと違うんですけど、大体の思い描いた見た目に服も変化させられるんです」
少し照れたようにリルさんが服を見せてくれる、そんな彼女を満足気にニヤニヤと見ているレティさん。
「ほらほら、思った通りだよ?こんな細かい作業ですら思っただけで再現できるんだ。岩に出入り口を作って中に部屋のような空間も作るのなんて簡単なはずだよ」
何か本当にゲームみたいだぞ?もしかしてここはゲームの世界なのか?
まぁ、ゲームの世界かどうかはこの際小さな問題なのか?そもそも魔法がある時点で俺の住んでいた世界基準で考えればゲームみたいな物だし。
「うーん………………では出来た、として。俺とリルさんが岩の中に隠れている間、食料とかはやっぱり俺が出すんでしょ?」
「そうだね。歌舞伎揚と干し肉でも持ちこんでもらってそれで10日間位過ごして」
岩をくり抜いたような閉鎖空間に若い女性、というか少女と二人きりで10日間?
あまり嬉しくない環境だな、今日出会ったばかりの相手なのに。
このままの流れだと、一緒に過ごす事になるリルさんはどうだろうかと視線を向ければ俯いている。
それはそうだ、俺が同じ立場だって嫌だ。
「俺は、最悪どうだって良いです。でもリルさんが嫌だと言うのであればこの案は却下ですよ?」
「うん?リルは嫌なのかい?」
「少なくとも良い気はしていないと思いますよ?さっきから俯いているじゃないですか」
不思議なものだ。まだ1週間一緒にいたかどうかなのに、レティさんに対しては最低限の女性に配慮する感覚以外が麻痺してしまっている気がする。
それに対して今日初めてあったこのリルさんはどうだ?
見た目は幼さが印象深いがあまりレティさんと変わらないのに、色々とレティさん相手より考えさせられてしまう。
「私は、私は……構いません。いえ、お供します!」
何をそんなに力強く答えているんだ、この娘は。断ってくれても良いんですよ?
寧ろ断って欲しいまであるんだが。
「リルは良いって、じゃあ決まりだね」
「まだ決まってません」
勝手に話を終わらせてもらったら困るんだ、まだ考えなければいけない事があるだろう。
「リルさんが、その、良いって言うならここまでは良いですよ」
「だったら他に何があるの?」
「どこの世界にこんな年頃の少女と俺みたいな訳の分からない男を10日間も、下手したらもっと長くなるかもしれない期間一緒に行動させる両親が居るんですか?」
「ん?……あぁ、そうか。そういうものか。」
そういうものか、じゃないでしょうに。どういうものを考えているんだ、全く。
「リル、君はその力を家族に話してしまっているのかな?」
「いえ。お二人の他には誰にも話していません」
「それは良かった。その力はモビーと一緒で他人に知られてはいけない類の物だ、これからも秘密にしていこう」
「レティさん、何でそんな事を今訊くんですか?」
「もう知っていたなら、家族とモビーで行動してもらうのも有りだったんだけどね。知らないならそれも出来ない」
さて、どうしようかな?とか言いながら腕を組んで考え出したレティさん。
しかし、家族といえばご両親と妹さんはどうしたんだろう?今はこの家にはいないようだが。




