今度こそこれからの事を考える
「え?あれ?刃の部分が落ちちゃった……失敗、ですか?」
リルさんはこの結果に困惑というか、困っている。
いやぁ、多分バッチリ成功してると思いますよ、それ。
「なるほど」
言って、落ちてしまった小さくなった刃を拾い上げるレティさんだったが、持とうとして指で摘んだ時に一瞬驚いた。
しかし、その後にはあんまり良くない笑顔で口元を歪めて刃を持ち上げた。
レティさん、それは多分悪者がするような笑顔ですよ?
「いや?成功だよ。持ってみて」
小さくなり、果物ナイフ程度になったその刃をテーブルに置いてリルさんに手に持つように促す。
「これで成功なんですか?小さくなりましたけど、これはどうなって、え、アレ?」
「どう?見た目より重いから頭が困ったでしょ?圧縮したから見た目は小さくなったけど元の量は変わっていないからね」
得意気に話をしている、貴女がやった訳じゃないでしょうに。
「今度はこれを元に戻せる?抜けてしまった柄に合う大きさに戻す感じ、だよ」
「……やってみます」
心なしかリルさんに力が入っている気がする。これは自身を持ったというか、これも、あんまりよろしくないなぁ。
刃の抜け落ちた柄を垂直に持ち、空洞になった部分に刃を入れる。隙間が大き過ぎて緩いなんてもんじゃない。
「さっきはギュッと、一気に押し込むような感覚だったはずだから今度はゆっくりと広げていく感じで」
「はい」
「焦らなくて良い、これは多分魔法の感覚、思考に近い。ゆっくりゆっくりで良いんだよ」
物事を教えるのが様になっている気がする。これも年の功という物なのか?
穏やかに静かに暮らしている世界もあった場合、教師が向いているのかもしれない。が、今は何と言うか不純を感じてしまう。
「このままだと刃が不安定だね、右手で刃先を摘んで柄の中にに軽く押し当てて固定しながらやってみようか」
「はい……では、やってみます」
ここからではナイフがどんな事になっていてどう変化するかが見えない。
でもまぁ、見えていても分かるもんでもないんだろうし良いか。
「……成功したね、凄いじゃないか」
「はい!出来ましたね!」
どうやら成功したらしい。
つまり、圧縮と展開も可能って事なのかな。
「これは凄いね、本当に凄い」
「私、自分ではこんな事が出来るなんて想像も出来ませんでした」
少女二人がはしゃいでいる。凄く物騒な事に発展しそうな話題に気付いていないな、これは。
いや?レティさんの場合気付いている可能性があるか?
「あの、盛り上がっている所申し訳ないですが……これからどうするかの話はどうなりますかね?」
流石に話が脱線しすぎだ、軌道修整をしないといけない。
「あぁ、そうだね。放っておいてすまないねモビー」
「申し訳ありません旦那様。私も夢中になり過ぎました」
「リルさん、その旦那様っていうのは止めましょう?俺は貴女に対して何もしていないんですから」
出会って素性がバレてから一貫して俺を旦那様呼びするが正直違和感が気持ち悪い。
「そんな!?何故ですか?」
「何故も何も。俺は、あぁ、いや、貴女の知っている俺は実質身請けもしたから旦那様で良いんでしょう。でも、俺は貴女を知らないし、身請けする代金を支払うのはレティさんになります。そういった意味でも旦那様、ではありませんよ」
「私は気にしないよ?本人がそう呼びたいなら呼ばせてあげればいいよ」
また余計な事を言ってくるなぁこの人は。
「そういう訳にもいかないです、何よりも俺が嫌なんです」
「……分かりました。では、モビー様とお呼びしてよろしいですか?」
「様かぁ、俺偉い人間じゃないんで、さん付けでお願いします」
「…………、モビーさんですね?承知いたしました」
「ありがとうございます。では、ちょっと話を戻しましょうか?」




